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彩眼の次男〜感情が色で見える次男副団長が、恋も政変も全部見えてしまって巻き込まれる〜  作者: まるちーるだ
番外編 娘の春と父の地獄 ~娘の春より先に父の胃が死ぬ~

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二節 父の憂鬱


三日後だった。

いつものように出納管理室に向かっている最中。

何処に行っても、何故か周りの視線が温かい。


――いや、正確には生暖かい。


「おお、瞬木管理官!おめでとうございます!」


「……はい?」


急に話しかけられた高官に、私は首を傾げるしかない。


「ご息女のこと、まことにおめでとうございます!」


「……何の話でしょう?」


「またまたご謙遜を」


彼はそう言うと、スキップしそうな勢いで去っていった。


「おめでとう?」


本気で分からない。


さらに廊下を進めば、今度は文官までにこにこしている。


「いやあ、良縁でございますな」

「お嬢様もとうとう、ですか」

「いや、実にめでたい」


解せぬ。


何が起きている。

なぜ、私だけ何も知らない。


胃の奥が、じわじわと嫌な痛みを訴え始めた、その時だった。


「やぁやぁ、時壱くーん!」


聞き覚えしかない、最悪の声が響いた。


振り向く。

そこにいた男を見た瞬間、私は反射的に顔をしかめていた。


朝比奈 青澄。


かつての第二騎士団団長。

私にとっては先輩であり、上司であり、そして何より、若い頃に散々振り回された厄災そのものである。

この男の副団長として、どれほど尻拭いをしたか……泣いていいか?


明るい。

うるさい。

面倒ごとを連れてくる。

笑顔で厄介事を持ち込む。

そして本人に悪気が薄い。


最悪だ。


「……厄災ですか? 何の御用ですか?」


警戒心を隠しもせずそう言うと、青澄は心外だとでも言いたげに目を丸くした。


「やだなぁー。もうすぐ家族になるんじゃないか!」


その瞬間、私の思考が一拍止まった。


「……はっ?」


「いやぁー、昌澄はファインプレーだねー! 千歳ちゃんを射止めるとは!」


にこにこと、青澄は実に楽しそうだった。


「僕の血かな? いや、そうだろうなぁ。だって僕、なんだかんだ時壱くんのこと好きだし?」


意味が分からん。


いや、意味は分かる。

分かるが、分かりたくない。


昌澄。

朝比奈 昌澄。

つまり、あの第二騎士団副団長。

白い軍服が似合う、妙に器用で、礼儀正しく、実力もあって、周囲の覚えもいい。

その男が、うちの娘を――


そこまで思考が滑ったところで、ようやくあの相談が脳内で一本に繋がった。


一年前に告白された。

友達からと言った。

そこから進まない。

どうしたらいいか。


その相手が――朝比奈 昌澄?


よりによって、朝比奈 青澄の、次男。


胃が、きり、と痛む。


しかも目の前のこの男は、まだ楽しそうに続けていた。


「いやぁー、嬉しいねぇ! まさか時壱くんの娘とうちの次男がこうなるなんて! これ縁だよねぇ、縁!」


「待て」


やっとのことで、それだけ言った。


青澄はきょとんとする。


「何を待つの?」


「千歳が、お前の息子と?」


「え、そこ?」


「悪夢だ」


真顔で返したところで、胃痛が限界を迎えた。


「いや、現実か……最悪だ」


次の瞬間、視界がぐらりと揺れる。


廊下の天井が遠のき、

青澄の「えっ、ちょっと時壱くん!?」という場違いに明るい声が響き、私はそのまま、見事に意識を手放した。





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