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第77話 新しい 夢

第76話に続いて、本日2回目の更新となります。

「これは綺麗だ。素晴らしい出来栄えですね」

 鮮やかな濃紺色の葡萄ジャムを眺めるアーノルドの反応は上々だ。

 完成したガラスの瓶詰め葡萄ジャム100個

 その内、50個はターミガン商会に売ることした。

 数は少ないが、市場(しじょう)がどのような反応を示すか見てみたい。

 マーケティングリサーチというやつだ。

「それではこちらをお納めください」

 アーノルドはそう言って、俺にジャムの代金を支払う。

 金貨2枚。

 金貨1枚が日本円で10万円に相当するので、20万円の収入になる。

 納めたジャムは50個なので1個当たり4千円になる。

 アーノルドは言い値で払ってくれたが、俺はこの金額に不満がある。

 俺が目指しているジャムは、特別な時にデパ地下でプチ贅沢(ぜいたく)をするような感覚の価格帯だ。

 アーノルドは日本円換算4千円相当で購入したが、ここから先、輸送費や人件費等が掛かるので、王都での販売価格は2倍~3倍程度するはずだ。

 それでも、王都で売られているジャムと比べて5割~6割程度安いのだが、プチ贅沢(ぜいたく)ではなく、贈答品(ぞうとうひん)の価格になってしまった。

 ガラス瓶が想像以上に高価であった事やジャムを作る手間が想像以上に掛かった事が原因である。

 改善できる事は有るはずなので、今後の課題になっていくだろう。


 さて、残りの50個の行き先であるが、その内20個は親戚、友人、知人に贈る事にした。

 例えば、オリーヴ義姉さんの実家のマイエット子爵、俺に友好的なメタボマン伯爵夫人マーガレットさんとかだ。

 これはプレゼントだが、宣伝の意味合いもある。

 瓶詰めジャムの素晴らしさを周囲に広めて貰えれば幸いである。

 そして、残る30個は、ポール兄さんや領民用だ。

 今回のジャムはウォーカー男爵家の屋敷の使用人達で作った。

 おかげで瓶詰めジャム作りのノウハウという貴重な知的財産を得る事が出来た。

 ただ、本来の目的はウォーカー男爵領で新産業を作る事だ。

 産業の主役は男爵家ではなく、領民達。

 領民達が中心となって瓶詰めジャムを作ってもらう為には、どのような品物であるか分かってもらう必要がある。

 また、今回のように50個を売るだけでは産業として成り立たない。

 ジャム産業へ発展させるには、ジャムを継続して大量に生産しなくてはいけない。

 その為には現状の戦力では足りない。

 ジャムを作れる工場が必要になる。

 働いてもらう人が大勢必要になる。

 それは多額の投資が必要である事を意味する。

 俺はポール兄さんから新産業を作る件に関して、権限を委ねられている。

 ジャム産業実現に向けて、このまま計画を進めていく事も可能である。

 だが、兄さんはジャム産業について全く関わっていない。

「ひっひっひ。気負うなよ」

 ピーター父さんが死ぬ間際に伝えてくれた言葉を思い出す。

 このまま、俺の独断で突っ走るよりも、一旦立ち止まって兄さんからも分かってもらう方が良い。

 ウォーカー男爵家当主は俺リックではない。ポール・ウォーカーだ。

 こういった事は、トップが決断を下し、全員の意思を統一して動いた方が万事上手くいく。

 俺はそう考えている。


 現在、兄さんは王都にいる。

 ピーター父さんから男爵に爵位を継承する襲爵(しゅうしゃく)の儀式を受ける為、王都にいる有力貴族達へ挨拶回りする為だ。

 当初の予定では間もなく、ウォーカー男爵領に帰還する。

 その時、兄さんにも瓶詰めジャムの素晴らしさ、秘めている可能性を理解して欲しい。

 

 立ち並ぶ工場。

 生き生きと働く人々。

 あたり一面に広がる果物畑。

 ここは世界有数のジャム生産地ウォーカー男爵領。

 兄さんへプレゼンする為の資料を作りながら、俺はそんな未来を夢想したのであった。。

 


 しかし

 

 この時の俺は知る由も無かった。

 ウォーカー男爵家を激震させる出来事が迫ってきている事を。


読んで頂いてありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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