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フェイカー  作者: 那上畑 潤
If you can not stand, I……
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予期せぬ対応

「あのよ啓一。ホームルームやるなんて、2学期に入ってから初めてだけど、お前何か知ってる?」


 眼前の少年と同じような話題を、1年12組の生徒のほぼ全てが周囲の人間に尋ねているようだが、納得いく回答は得られていないようで、喧騒は収まらない。


 大滝浩二と言う名の、実技試験後にはよく秦啓一に話しかけてくるようになった少年に、オレは椅子に座ったまま、無言で首を横に振った。


「えー、本当かよ? お前、三氏族の上層部と繋がりがある連中と仲良いじゃん。津田さんに加藤さんに、仮面女に鉄面皮に」


 最後に呼ばれた綽名に対してのみ、微かに殺気を乗せて見返す。

 秦啓一ならば、間違いなく怒りを感じる呼び名だろうからな。


「そ、そんな怖ぇえ顔すんなよ、えーと、名前のわからない二年生に、白鷺さんだろ。それだけ繋がりがあれば、何かしらわかるんじゃないのか?」

「わかれば良かったんだけど、残念ながら。そもそも、2学期に入ってから初めてなら、1学期でホームルームやった時はどんな状況だったんだよ?」

「全員の自己紹介を、教頭立ち合いの元でやっただけさ。後は、ACTの実技については教師不足のため、11組、12組には配属されないっていう、最初から知らされていたことを繰り返されただけだよ。7組から10組までも、1人の教師が2クラス掛け持ちしなけりゃいけないくらい人手が足りてないからとか言ってたけど……ま、その後は、俺達のような劣等生は放置さ」


 ため息をついて肩を竦め、何もかも諦めているようなジェスチャー。


 ……このクラスの中では大滝が、自分の命をかけてでも『何か』を諦めきれなかった秦啓一と、最も話をしていた相手だというのは何かの間違いなのではないかと思うのだが。


 何だ、隣の11組から、歓声? まだこの高校に秦啓一として登校しはじめて間もないが、こんな気合の入った雄叫びと言うか、活気に満ちた声というのは聞いた事がない。


「ん? 11組で何があったんだ? こりゃまた随分と元気な声だが」


 大滝の独り言を黙殺していると、教室前方の引き戸がガラガラと音をたてて引かれた。


「はい、皆さん席について下さい」


 あれは、教頭か。わざわざ劣等生のクラスである12組にまで出張ってくるとは珍しい。


 そして……その後ろに控えている人物を見て、反射的に目を細めてしまった。


 隣にいた大滝はヒューと口笛を吹き、男子は歓声を、女子は黄色い声をあげている。


 まぁ、あの銀髪だけで、特徴的な容姿だからな。


「皆さんには、これまでACTの授業を受けて頂く際、講師不足という理由から、遺憾ではありますが自学自習という形を取っていましたが、本日からこちらの仰木さんが臨時講師という形で11組と12組の生徒のACT指導を受け持って頂くことになりました。

 では、仰木さん自己紹介をお願いします」


「仰木縁と申します。こちらの東京国立第2ACT高等学校には、臨時講師という形で派遣されることになりました。こちらに赴任する前は、警視庁のACT特殊犯罪捜査課で、ACTを用いた仕事をしていました。

 どちらかと言うと研究的・実務的なACTよりは、戦闘に用いるタイプのACTを使う仕事でしたので皆さんの指導を満遍なくこなせるかと言うと、正直怪しいかとは思いますが、研究的・実務的なACTも精一杯指導させて頂きますので、よろしくお願い致します」


「ハイハイハイ! 仰木センセ、質問っす! 年はいくつですか!」


 大滝のテンションの高い叫びに、ドッと教室内が沸き上がり、教頭は仰木縁に申し訳なさそうな顔を向け、仰木縁は形容し難い笑みを浮かべ「いくつに見えます?」等と上手い具合にあしらっている。


 まさか、昨日の今日で、しかもこんな形で乗り込んでくるとは。


 泰啓一の友人である大滝の、マシンガンのような質問を聞いて恥ずかしがっている、と見えるように右手で自分の顔を覆う。


 己の隠した顔が苦い面持ちになっているのは、鏡を見なくても自覚出来た。

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