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フェイカー  作者: 那上畑 潤
Because, you don’t understand yourself
44/117

理由

「『奇跡』を扱える、とは言わない。でも、近い位置にいる可能性は?」

「それこそおかしい。あんな目立つ格好なんてしていたら、逆に良い標的に」

「近い位置にいる人物の、影武者だったら? ああいうふうに、悪目立ちをすることこそが、奇跡に近い『本物の酒井玲於奈』や、『奇跡』を利用しようとしている松平の上層部の目的だとしたら? ああやって『餌』をぶら下げておけば、誰が松平に敵対しようとしているのか、あるいは『奇跡』を手に入れようとしているのか、すぐにわかるでしょうし」


 ……


「アンタも、アイツがマスケラつけているのは、誰かの影武者役をしていると思ったから、踏み込まなかったんじゃないの? だからアンタの記憶を改変した直接的な黒幕ではないと判断したんじゃない?」


 …………誤魔化しても、無駄だな。


「そこまでわかっているなら、話は早い。そういう理由で、俺は酒井さんは」

「アンタねぇ……マスケラ本人に、マスケラをつけている理由は聞いた訳?」


 呆れたように肩を竦め、発言を遮った加藤由利の発言内容に、俺は口を噤んでしまった。


「その顔だと、聞いていないみたいね。聞いてもいないのに、勝手に判断するのは危険よ。中身が、『私達と会っていたマスケラ本人』なのかもわからないし、アタシ達の予想と違うケースだってあり得る。

 アタシは自身のACTには自信を持っているから、変装とかしていても見破れる……と思いたいけど、さすがに三氏族の上層部が絡んでいるかもしれないマスケラの関係者が相手なら、絶対大丈夫、とは断言出来ない。

 でも、環境が整っている、今、この場でなら正確に見分けられる。

 マスケラを、ここに連れてきて。そして発言させて。アタシが、判断するから」


 加藤由利は左目だけを見開き、感情の伺えない光をその眼から放っていた。


「おい、それって、俺が信用出来ないって言っているのと同じじゃないか」

「ええ。実際アンタ、今までマスケラにマスケラつけている理由、聞いていないんでしょ? 加えて言うなら、バスで津田さんが隣の席に座っていた時、アイツ、今まで見たこともないくらい狼狽していたのに、アンタ、何一つ追求していなかったじゃない。自分の命がかかっているかもしれない状況下なのに、そんな人間を信用できると思う?」


 俺は何も反論出来ずに、呻くだけ。

 しかし、加藤由利から見ると、バスでの酒井さんはそんなに焦っていたのか? 一体何に?


「しかもアンタ、アタシがアンタのことを諜報員だと疑っているの、知っていたでしょ。なのに、アタシが実力行使に出る訳が無いって判断していたでしょ」


 ……加藤由利は、大きく息をつき、首を横に振った。


「アンタ、基本的に甘いのよ。今だってアタシのこと、疑わなきゃいけないって、わざわざ意識しているように見える」


 だから、アンタだけに任せておけない、と左手に持ったノートで自分の顔を隠すよう、顔の手前にわざわざ持ってくる。


「アンタの正体を知ってしまった以上、アタシは、アタシ自身とアンタだけじゃなくて、この場に同席させてしまった白鷺さんの命についても責任を持つ必要が、ある。アタシの想像通りなら、津田さんと、槇原君も巻き込んでしまった……手段を、選んでいられる余裕なんて、もう無いのよ。

 話しておかないといけないことは、他に無い? 無ければ一度、ACTを解除するけど」


 話しておきたい事は無数にあるが、目にクマがハッキリ出ている状態の彼女を、これ以上酷使させるのもマズイ。


 俺は白鷺さんに目配せし―首を横に振ったのを確認してから、大丈夫だ、と加藤由利に告げた。


 この状況下で、守る、か……やっぱり、元々の性格が、陰謀に向いていないのだろう、目の前の彼女は。


「さて……そういう訳だから早く来なさいよ、このマスケラ! どうせアンタのことだから、今把握していた情報、ACTで流したフェイクニュースだってことくらいはわかっているでしょ?! 場所は駅前のグランドホテル、705号室! フロントには連れが遅れてくるって言ってあるから、アンタが潔白だって言うならここまで来なさい!」


 殊更大きな声で、ここにはいない酒井さんに向けて叫ぶ加藤由利。


「おい、お前、酒井さんのこと信用していないんじゃなかったのかよ?」

「信用してないわよ。だから、白黒ハッキリさせようとしてんじゃない。来て、話して、シロだったらよし。クロだったら―腹、括るしかないでしょうね」


 命がかかっているかもしれないこの状況下で、信用していないという相手に対して、話してシロクロつけるとかって、どっちだよ、甘いのは。


 フンッ、と荒く鼻息をついた加藤さんは、照れを隠すように俺から視線を切って背を向けた。

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