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日常再開2

 レアさんが炎を宿すというハプニングに対し教官たちは、多分俺らが死ぬなと判断して一旦棚上げ! 手配した六徳の上位が来てから色々試すんだろう。

 そんで我ら男爵子爵連合はいつも通りの訓練をして……今は料理中である。


「パパパッと手早く!」


 包丁を手に取ると野菜の皮を剝き、その次は肉の方も小分けにしていく。

 割とマジな行軍練習の前に、簡単な料理程度は出来るようになっておけというありがたい教育方針のお陰で、鍋に具材をぶち込んでシチューを作ってる真っ最中だ。


 甘く見て貰っちゃあ困りますよ教官殿。

 実家じゃ台所のおじちゃんおばちゃんを手伝うのは日常茶飯事。猟師が仕留めた鹿や猪の解体もしたことがあるケイ君なら、この程度は簡単簡単。

 一家に一台ケイ君をいかがですか? ずーっとお喋りしてて楽しいですよ。


「お前、本当に何でもできるな……」

「ありがとうございます教官殿!」


 教官が呆れと称賛の混じった言葉を漏らした。

 男爵子爵連合は基本的に、どうせ学院でやるんだから今のうちにやっとけ。というスタンスで料理を既に学んでいる。

 大苦戦しているのはダリルの養子先のように、結構金持ちリッチな家で育った者達。それと伯爵家から上は例外なく、どうすりゃいいんだと途方に暮れている。


 彼らの実家的にはこういう行事があろうとも、家で使用人と同じ仕事を息子にさせる訳にはいかないため、それなら大抵のことは笑って許される学院の中で勉強しろという感じなのだろう。


「むむむむ」

「こ、これでいいのでしょうか?」

「……」


 この苦戦は三大美女も例外ではなく、レアさんは唸り、リズベットさんは戸惑っている。

 ルシールさんは、見る者を魅了する笑顔をしたまま固まっているんだが……し、死んでないよな? 昇天しかねない程の雰囲気を醸し出しているぞ。


 しかし、これは個人個人の学びのため俺が助力をする訳にはいかぬ……!

 代わりに教官と駄弁ろう。


「確か現地に到着したら、兵士さんを指揮する練習もあるんですよね?」

「ああ。馬に乗れるようになってよかったな」

「本当ですよ……ギリギリですけどね」


 俺が話しかけると、馴染みの教官が一安心したような表情を浮かべる。


 今回のガチ行軍は目的地に到着すると、その領地を統治している大貴族が兵を貸してくれるらしい。そんで費用は王国と光の灯が折半。

 俺らは大人達の配慮で感涙の涙を流しながら、自分の大声が兵士の方々に通るのか。きちんと状況を判断して指揮できるのか。などなどを試すことになる。


 指揮官が馬に乗れないのは洒落にならんから、出来るようになってよかったよかった。


「ちなみにルシールさんとリズベットさんはどんな感じなんです?」

「死ぬほど揉めてる」

「あちゃぁ」


 訓練仲間であるリズベットさん、ルシールさんの状況が気になって尋ねると、教官が天を仰いだ。

 彼女たちは最悪の場合に投入される切り札なのだから、前線での環境に慣れる必要がある。という理屈で俺らと混ざって訓練している。

 それは現実にあり得る想定なのだが、光の灯教に言わせたら、頼むから看板兼象徴が前線に行かないでくれ……! となる。


 多分光の灯教的には、学院内での前線訓練はお遊びの一環だから、そこまで目くじらを立てる必要はないと思っていたんだろう。

 だがリズベットさんとルシールさんが、本格的な行軍練習でも前線を意識していることに気が付き、慌てているらしい。


 難しい話だ。

 聖女、女神を絶対に失いたくない教会の考えは分かるが、かといってリズベットさん達からすると、なんの準備もなく切り札として投入されるのは命にかかわる。


「行軍中にも男らしいところを見せたら、どこかの婿養子先が見つかるかもな」

「ははははは。僕は常時男らしいですよ」


 まだ俺の婚姻の件は秘密のため、教官には笑ってごまかす。

 揉めてるまではいってないけど、俺の方にもちょっとした問題がある。

 レアさんとお兄さんのネイハムさん的には、俺が前線指揮で死ぬと洒落にならないことになるため、本音を言えば後方の指揮所にいて欲しいっぽい。


 だが将来的に俺へ与えられるポストがどんなものかは分からんけど、今現在の俺の立場からすると、不確かな物で後方に移るのは不名誉になる。

 幸いフォスター公爵家の皆様方はそれを分かってくれているため、妙な出来事にはなってないが……死戦場だろうが戦況次第で留まるのが現場の仕事だ。これに関しちゃなるようにしかならん。


 そういや俺の肉体が死んだら精神世界の俺はどうなるんだ?

 ふむ。自分で言うのもあれだがクソほどしぶといから、ピンピンしてる気がする。


「それじゃあ準備を怠るなよ」

「はい!」


 教官殿に我ながら見事な敬礼を披露する。

 ただでさえ世には陰謀が溢れているのだ。警戒して撃退するのは我が使命!

 わはははははは!


 はっ! 狭間の向こうの同胞から情報が送られてきた!

 ふーむ……なにも分からないそうですね。

 はーつっかえ。またかよー。どうしていっつも大事な情報が抜けてるんですか。

 え? エロゲーなる概念は過程が吹っ飛び、結果だけしか残らない?


 な、なんだそれは……エロゲーなる概念はそうやって成り立っているのか!

 しゃあない。じゃあ頑張って本番の軍事行動、頑張るぞー!


 ◆


『まさかあのバケモン、操作してる端末が男爵家出身なんだから前線勤務も楽しもうかなーとか思ってないよな⁉ 名簿! なんとか名簿を手に入れねえと!いやいやあり得ないあり得ない! も、もしそんなことがあったら……本当に物質界をぶっ壊すつもりか⁉』


 九罪の揺蕩う霧に存在しない筈の胃が爆散するまであと数日。

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