第33話 データの相違
「んー?」
「どうしたんですか?」
「いや、どうも記憶にある最低賃金と今の状況が一致しなくてな」
「現実逃避ですか?」
「まあ、そう言わずこれ見てくれよ」
「2015年当時の求人広告の写真?スーパーで900円から1100円で働けますって書いてありますね」
「だろ?2015年当時は平均798円。相場より100円以上も高いわけだ。上限なんか、ほぼ現在の最低賃金に近い」
「んー、当時はこのスーパーでは相場より高く雇ってただけでは?」
「まあ、そうだろうな。ただこういうのを見てるとなんだか10年前の時給にタイムスリップでもしている気分になってな。ま、働いてるのは6年くらい前からで、急に最低賃金上がり出したのはここ2年ほどのこと、というのが俺の記憶の中の最低賃金上昇状況だ。そんなこといったことでネットには現在の金額は表示され、店の看板のパートアルバイト募集!の看板にもバッチリ書かれてるから記憶ではなんの証明にもならないがな」
「まあ、誰しも時給高かったらいいなって思っちゃいますもんね」
「こんな世界だからな。確かな情報が何かわからんところもあるが、提示された情報を信じて生きるしかない」
フェイクニュースやらなんやら溢れる世の中。
信用できる情報源というのもまた変わりつつある。
AIに聞けばなんでもわかるとか、正確性が担保できないとか色々言われるが、裏どりは自分でやることが必要であろう。
「と、こんなあやふやな記憶でも小説のネタになるわけだが、本当に早く最低賃金上がってくれないかな…」




