【第1篇】第5話 『クソみたいなシナリオ(2)』
午前8時47分――カーテン紀元1878年12月2日
肌を刺すような寒さの朝、ヴァレンは窓の外をじっと見つめていた。降り積もる雪が住宅街の風景を真っ白に覆い尽くし、人々はその中を苦労しながら行き交い、日々の営みを続けている。小さな庭を埋め尽くした雪の層から、馬車を押し出そうと悪戦苦闘している者たちの姿もあった。
ガラス窓の向こうで舞い落ちる白い粒に見入っていたその時、背後から静かな声が静寂を破った。
「何を眺めているの、ヴァレン?」
小さく肩を揺らしたヴァレンが慌てて振り返ると、ふきんで両手を拭きながら近づいてくる母の姿があった。
「雪を見ていたんだ、お母さん!」
ヴァレンは目を輝かせながら、無邪気に答えた。
アンナ・エインハイルは少しだけ眉をひそめると、幼い息子の隣に立ち、おかしそうに微笑みを浮かべた。
「ふふ……ただ降ってくる雪を眺めているだけで、そんなに楽しいの?」
「うん、楽しいよ……」
ヴァレンは小さく頷き、再び窓の外へ視線を吸い寄せられた。小さな指先が、冷たくなったガラスの表面にぽつんと押し当てられる。
「でも……なんだか、かわいそうでもあるんだ」
「かわいそう? どうしてだい?」
アンナは目を細め、ヴァレンと視線を合わせるように少し腰を落とした。
「雪が降ること自体は、すごく嬉しいんだけど……」
ヴァレンが静かに息を吐き出すと、目の前のガラスにうっすらと白い吐息の雲が広がった。冷たいガラスを小さな指で撫でながら、外を歩く人の足跡を目で追う。
「……あんなに深い雪の中を、みんなが大変そうに歩いているのを見ると、少し気の毒になっちゃって」
その言葉を聞いたアンナは、一瞬だけ呆然と固まった。やがて、その顔に優しさに満ちた温かな笑みがじわじわと広がっていく。彼女は一歩歩み寄ると、外の雪景色に視線を向けながら、ヴァレンの髪を優しく撫でた。
「お前は……まだそんなに小さいのに、そんなことまで考えているのね」
落ち着いた声音で、アンナは愛おしそうにつぶやいた。
部屋を包む冷気の中に、温かな息をそっと吐き出す。彼女はかがみ込み、柔らかい指先で息子の髪を撫でた後、後ろからその小さな肩を優しく抱きしめた。
「この世界はね、そういうものなのよ、ヴァレン。誰かにとって美しい雪も、他の誰かにとっては重い負担になることがあるの」
外の雪道をヴァレンと共にまっすぐ見つめながら、アンナは穏やかに言葉を紡いだ。
「けれど、その心の中にある小さな優しさだけは……絶対に消さないでね。いつかその思いやりが、お前を必要としている誰かを暖めるかもしれない……あるいは、将来お前の人生を補い合える大切な誰かをね」
ヴァレンは首を上げて母を見上げると、口元に小さな笑みを浮かべながら、静かに頷いた。
「うん、お母さん!」
素直に頷く息子の姿に、アンナはくすくすと声を漏らした。ヴァレンの頭を優しく撫で、その小さな肩をそっと抱きしめる。
「ところで……外で雪遊びをしてきてもいいのよ、ヴァレン」
その言葉を聞いた瞬間、先ほどまでのしんみりとした様子が嘘だったかのように、ヴァレンの目がぱっと輝いた。
「えっ!? 本当に、お母さん!?」
「ええ、本当よ」
アンナは穏やかに応えながら、息子の腰に巻きついていた小さなエプロンの紐を解いた。脇に置いてあった暖かなマントを取り出すと、ヴァレンの体に羽織らせ、その上から再び小さなエプロンをきれいに結び直して整えてあげる。
「でも、冷えないように、こうしてちゃんとマントを着てからエプロンをつけ直すこと。約束よ?」
「わーい! ありがとう、お母さん!」
ヴァレンは歓声を上げると、母が愛おしそうに服を整えてくれている間、その場でぴょんぴょんと嬉しそうに跳ね回った。
一刻も惜しむように、ヴァレンは窓の下に置いていた踏み台用の木箱から軽やかに飛び降りた。幼い足取りで玄関へ駆け寄ると、ドアを押して大きく開く。それと同時に、ドアベルが澄んだ音色を高く響かせた。
一歩敷居を踏み出すと、冷たい空気がヴァレンの額をすっと撫でた。少年は目を輝かせながら顔を上げ、無限に舞い落ちる白い結晶を降らせる灰色の空を、感嘆の目で見上げた。
(これが……雪っていうものなんだ……)
落ちてくる雪のひとひらを捕まえようと、ヴァレンはゆっくりと手を伸ばした。
背後から息子の愛くるしい仕草を見守りながら、アンナは温かな笑みを浮かべた。
「遊ぶのは遠くまで行っちゃダメよ。それから、もしお客様が来たら、お店の前でお手伝いしてあげてね」
「うん、分かった!」
ヴァレンは輝くような満面の笑みを浮かべ、振り返って元気に返事をした。
焦る息子の様子におかしくなりながら、アンナはくすくすと笑った。
「それじゃあ、お母さんは奥に入っているわね。外で一人でお店番、本当に大丈夫?」
「へっちゃらだよ! 僕、もう大きいもん!」
ヴァレンは胸を張って頼もしく答えて見せた。もっとも、分厚い着込みとマントのせいで、その姿はまるで愛くるしい毛布の玉のようにしか見えなかったが。
「頼もしいことね」
アンナはクスクスと笑いながら、ヴァレンの頭をなでなでした。
「でも、何かあったら——すぐ中にいるお母さんかお父さんを呼ぶのよ?」
「了解っ!」
小さな兵隊さんのように、ヴァレンはびしっと敬礼してみせた。
アンナはほっとしたように微笑むと、ゆっくりと後退りし、店舗の木製ドアを静かに閉めた。奥の厨房へ向かう前に、彼女はもう一度だけ振り返る。
木製ドアの透明なガラス窓越しに、ヴァレンの姿が視界に映る。店の前の敷地に一人佇む小さな少年は、静かに空を見上げ、一ひら、また一ひらと舞い落ちては表面を真っ白に覆っていく雪を、じっと見つめていた。
(この前まではあんなに小さかったのに、あっという間に大きくなっちゃって……)
小さく頼もしい息子の背中を見つめながら、アンナは心の中で愛おしそうにつぶやいた。
(六歳にもなれば、そろそろ雪を楽しんでもいい頃かしら。今までは雪が降るたびに外へ出るのを止めていたけれど、流石に可哀想だったわね。あまり家の中に閉じ込めすぎるのも良くないわ)
間もなくして、アンナは視界の端で、二つの人影が息子へ近づいていくのに気づいた。目を凝らすと、幼いアルヴィナの傍らに寄り添い、ゆっくりと歩いてくるケインの姿があった。
左手から近づく足音に気づいたヴァレンは、ハッと振り返り、驚きに目を見開いた。突如として現れた二人の見知らぬ客に、ヴァレンは慌てて姿勢を正した。痒くもない首筋を気まずそうに掻き、急に強張った指先で店のエプロンの裾をぎゅっと捏ねくり回す。
「あ、あの……こんにちは、お客様……?」
少し言葉を詰まらせながら、ヴァレンは控えめに声をかけた。腰を低くして気まずそうにお辞儀をしながら体を向き直す。品のある老婦人と、その隣にいる少女を前にして、どう振る舞えばいいのか分からず混乱していた。
アルヴィナの隣に立つケインは、少しだけ首を傾げた。一方のアルヴィナ自身も、ヴァレンの挨拶を聞いた瞬間、小さく肩を跳ねさせた。上質な手袋に包まれた小さな指先が、反射的にドレスの裾を強く握りしめる。同じくらい大きな困惑と照れくささが、その全身から溢れ出ていた。
少女はキュッと唇を結び、助けを求めるようにほんの一瞬だけケインへ視線を投げた。そして再び、どこか気まずそうに目を丸くしながらヴァレンを見つめ返す。
「あ! あの……っ!」
アルヴィナはしどろもどろに声を漏らした。反射的に空中へ差し出しかけた手は固まり、目の前の少年に対してどんな言葉を選べばいいのか完全に迷子になっていた。
パッと視線を脇へ逸らし、頬を薄っすらと赤らめながらドレスの生地をさらに強く握りしめる。
(あぁぁ……どうしてこんなに緊張してるの、私!? いつもなら普通に喋れるのに……っ)
目の前の少年を前にして急に言葉を失ってしまった自分に、アルヴィナは心の中で頭を抱えた。
フリーズして狼狽えるお嬢様の様子を見かねて、ケインがゆっくりと歩み寄った。白い手袋に包まれた両手で、アルヴィナの腰を優しく抱え込む。
(えっ……?)
アルヴィナが心の中で驚きの声を上げた瞬間——
何の予告もなく、ケインはアルヴィナの華奢な体を軽々と持ち上げると、まるでぬいぐるみでも抱えるかのように、そのまま脇へ抱き上げた。
「ごめんなさいね、ボク。このお店で売っているお菓子を買いたいのだけれど」
ケインはヴァレンに向かって、落ち着いた穏やかな微笑みを向けた。
「お店から漂ってくる香りが、あまりにも魅惑的だったものでね」
救いの船となる言葉を言い終えると、ケインは腕の中でまだ目を丸くしているアルヴィナへ視線を送り、ヴァレンに気づかれないよう悪戯っぽくウィンクしてみせた。
(ありがとう、ケイン~!)
込み上げていた恥ずかしさから救出され、アルヴィナは心の中で深い安堵の息を漏らした。
ヴァレンは、ちらりとアルヴィナの方へ視線を盗み見た。目を少し細めながら、その少女の瞳と愛くるしい顔立ちをじっと観察する。どこか見覚えがあるような、妙な懐かしさを感じながら。
(んー……どこかで見覚えがある顔だなぁ。でも、どこで見たんだっけ?)
顎に指を当ててポンポンと叩きながら、ヴァレンは不思議そうに心の中で首を傾げた。
記憶の糸をたぐり寄せるように、地域の掲示板や街の人々が話していた噂話を頭の中で引っ張り出す。すると次の瞬間、電撃が走ったかのように記憶の霧がすっと晴れた。
(あ、そうだ! この街……ラインベルク領主様のお嬢様だ! アルヴィナ・ラインベルク! なんで忘れてたんだろう!?)
ハッとしたヴァレンは、心の中で目を丸くした。
(だったら、お母さんに教えてもらったマナーを見せなきゃ!)
母に教えてもらった礼儀作法を思い出したヴァレンは、慌てて姿勢を正すと、エプロンをきれいに整えた。そして貴族の立ち振る舞いを真似て、可能な限り深く、優雅にお辞儀をしてみせた。
「こちらへどうぞ、奥様、それと——」
しかし、ヴァレンが畏まった挨拶を最後まで言い切る前に、ケインが困ったような笑みを浮かべながら、慌ててパタパタと手を振った。
「ああ、ごめんなさいね、ボク。そんなに畏まらなくて大丈夫ですよ。私たちも他のお客様と同じように扱ってくださいな」
ケインは優しく言葉を遮ると、周囲の通りに声が漏れないよう、少しトーンを落として続けた。
「貴族が庶民のお店でお買い物をしているなんて知られたら、この区画全体が大騒ぎになってしまいますからね。私たちはただ、目立たずにおいしいお菓子を楽しみたいだけなのです」
「あぁ……そういうことですか」
ヴァレンは痒くもない首筋をポリポリと掻き、その懸念に納得したように頷いた。サッと手をかざし、二人を店内へ促す。
「それなら、どうぞ中へお入りください! お好きなのを選んでくださいね、奥様と……」
そこでヴァレンの言葉がピタリと止まった。視線が上に向かい、ケインに抱えられている小さな少女とぶつかる。領主の令嬢を、どう呼べば普通のお客様っぽく聞こえるのか分からず、ヴァレンは一瞬だけ目を細めて頭を悩ませた。
「あの……このお方のことは、なんてお呼びすればいいでしょうか、奥様?」
気まずそうにチラリと視線を盗み見ながら、ヴァレンは無邪気に小声で尋ねた。
その幼子らしい純粋さに、ケインはクスクスと声を漏らすと、アルヴィナの肩をぽんぽんと優しく叩いた。
「『お嬢ちゃん』と呼んであげてくださいな」
「わかりました、お嬢ちゃん!」
ヴァレンはハッキリと頷くと、今度は看板息子らしい親しみやすい笑顔をパッと咲かせた。
ケインの腕の中で、少女の丸い瞳はずっとまばたきもせずにヴァレンを見つめ続けていた。しばらくして、彼女は顔を背けると、じっとケインを見上げた。
その瞳に宿る躊躇いに気づいたケインは、顔を近づけて、ごくごく小さな声で耳打ちした。
「やってごらんなさい」
アルヴィナは黙って少しの間考え込み、勇気を振り絞るように、やがて小さくコクリと頷いた。その合図を受け取ったケインは、アルヴィナの体をゆっくりと下ろし、小さな靴を店舗の敷地に敷き詰められた雪の小道の上に着地させた。
足が地面に着いた瞬間、アルヴィナは深呼吸をひとつ突いた。
「あ、あの……っ!」
少し高めの位置にあるドアノブに手を届かせようと、ぴょんっと跳ねて扉を開けようとしていたヴァレンの手がピタリと止まった。地面にトッと着地したばかりの体で、木製ドアの取っ手に手をかけたまま、彼は振り返った。
「はい?」と、ヴァレンは不思議そうに首を傾げた。
「わ、私とお友達になってくれませんか……!?」
唐突に発せられたアルヴィナの言葉は、緊張のあまり少し細く裏返っていた。
「えっ? 急になんで——」
ヴァレンが疑問を口にし終わるより早く、アルヴィナは一歩踏み出すと、そのままヴァレンの指先をギュッと握りしめた!
「えっ……?」
小さな手から伝わる温かく柔らかい感触に、ヴァレンはその場に凍りついた。熱が勢いよく顔へ駆け上がり、両頬が真っ赤に染まっていく。
アルヴィナは顔を上げ、残された勇気を振り絞るようにヴァレンの目をまっすぐ見つめた。
「私、アルヴィナっていいます。アルヴィナ・ラインベルク。あなたの名前は……?」
ヴァレンは驚きに目をパチくりさせ、急上昇した照れくささを必死に抑え込もうとした。そして、ぎこちなくその手を握り返す。
「僕、僕は……ヴァレン。ヴァレン・エインハイル」
少し言葉を詰まらせながらも、彼は気まずそうに小さな笑みを浮かべた。
「よ、よろしくね」
◇
極寒の季節に交わした、幼い手と手の温もり——その愛おしい感触は、エバーガーデン学園の中庭を優しく吹き抜ける夕暮れの風に洗われ、ゆっくりと消え去っていく。
ヴァレンは何度かまばたきをし、隣に座る少女の唇から紡がれていた過去の記憶から意識を引き戻した。
隣では、成長したアルヴィナがベンチの背もたれにゆったりと体を預け、懐かしさと温もりに満ちた瞳で目の前に広がる花畑を眺めていた。
「あなたのお店の前を通るたびに、いつもあなたを眺めていたの、ヴァレン。ほんの一瞬の時もあれば、少しお話ができる時もあって……それが、すごく楽しかったの」
アルヴィナは静かにそう呟くと、どこか懐かしさを帯びた小さな笑みを浮かべた。
「でも……あの出会いの後」
アルヴィナは静寂を破り、視線をヴァレンへと戻した。
「二度と、あなたに会えなくなってしまったけれど」
ヴァレンは眉をひそめ、胸に引っかかる疑問を投げかけた。
「どうして? 一体何があったの?」
アルヴィナは静かに息を吐き出し、少しだけ光を曇らせた瞳で、まっすぐ前方の花畑を見つめた。
「父様に命じられて、専属の指導員と訓練を始めることになったの」
アルヴィナの言葉遣いはどこか重々しく、静かだった。
「父様が望むような存在になるためにね」
「でもね……正直、父様がしたことを悪いことだとは思っていないの」
アルヴィナは穏やかに続け、その唇に小さくも誠実な笑みを浮かべた。
「全部、私の将来のためだって分かっているから。後で後悔しないようにって」
「そうだったんだ……」
ヴァレンは静かに呟いた。
束の間の静寂が二人の間に落ちる。平静を装った表情の裏で、ヴァレンの視線はまっすぐ前方に向けられたまま、その頭の中では思考が激しく渦巻いていた。
(この原作小説の中に、こんなエピソードなんてあったっけ? もしかして改変されたストーリーなのか? アルヴィナがさっき話していたことなんて、俺は何も知らないぞ。原作でサイラスがアルヴィナと出会った時とはまったく展開が違うじゃないか! 一体何が起きているんだ? このヴァレン・エインハイルって何者なんだよ……貴族の間ですっかり有名人みたいになってるし。この身体の持ち主の記憶なんて、この世界で生き抜くための最低限の知識しかないっていうのにさ)
思考の深みへと沈み込んでいくヴァレンの意識に、ふわりと柔らかい声音が割り込んできた。
「ヴァレン〜」
「ねえ、ヴァレン、聞いてるの?」
アルヴィナが、ヴァレンの目の前で小さく手をひらひらと振った。ぼんやりとしていたところを呼び覚まされ、ヴァレンはハッと現実へと引き戻される。
「あ、ああ! ごめん!」
動揺した表情を慌てて取り繕いながら、ヴァレンは急いで返事をした。
「そろそろ帰るね。馬車の迎えの時間が少し過ぎちゃったみたいだから」
アルヴィナは学園の正門の方をチラリと一瞥しながらそう告げた。
「そっか。じゃあ、気をつけて帰ってね、アルヴィナ」
立ち上がったアルヴィナは、まだベンチに座ったままのヴァレンを振り返った。
「ヴァレンは帰らないの?」
「もう少し、ここに座っていくよ」
ヴァレンは穏やかな笑みを浮かべながらそう答えた。
「そっか。じゃあ、また明日ね、ヴァレン」
「ああ、また明日。アルヴィナ」
アルヴィナは制服のスカートを軽く払い、くるりと身を翻すと、中庭の小道を進んでいった。マニフェスト学部棟へと続く木々の生い茂る影に、その雪のような髪の少女の背中がゆっくりと溶け込んでいくのを見送る。
ヴァレンは両足を大きく投げ出し、ベンチの背もたれに頭を預けると、右手の手の甲で自分の目を覆い隠した。そして、大きく深い溜息をひとつ零す。
「はぁ……厄介なフラグが立ちまくりだぜ、まったく……」
静まり返った中庭の片隅で、ヴァレンは小さく愚痴をこぼした。
だが、荒ぶる思考を鎮める間もなく——
チンッ!
澄んだ鈴のような電子音が、目の前の空間に響き渡った。
ヴァレンは右手の指の隙間から、そっと目を覗かせる。 その瞳に飛び込んできたのは、目の前を優しく漂う、半透明の小さなウィンドウだった。
◆ ◇ ◆
【 キャラクターシナリオ:『アルヴィナとヴァレン』の小さな断片が解放されました! 】
【 記憶の断片:1 / ?? を正常に受信しました!】
【 ――どうか、『???』の加護があらんことを。 】
◆ ◇ ◆
「は……?」
【第1篇】第5話 『クソみたいなシナリオ(2)』 - 完 -
次回:第1篇 第6話 『刻の叫び(1)』




