クレーターズ戦 その12 試合終了
第4クォーター、一度は6点差まで詰めたが今は8点差。なかなか差が縮まらない。それに点差が1桁になってからどっちのチームもプレイが荒れてきた。
相手のチームファウルは4つになったが、直後にホイッスルが鳴り、永江がこの試合4つ目のファウルを取られた。こっちもこのクォーターのチームファウルは4つ目だ。永江はいったんベンチに下がる。
ゲーム再開直後、柚子山が相手のパスをインターセプト、スリーポイントラインの外で高くジャンプしたクレイグにボールが渡る。狙いを定め放たれたシュートはゴールリングに吸い込まれる。5点差。
相手の攻撃。これを防ぎたいが、あっさりと2点返され7点差。すぐに攻撃に移り柚子山がボールを運びセンターラインを越えたあたりで高くジャンプ、長い滞空時間の間にパスする相手を探している。浅井はボールもらおうとゴールに向かって走り込もうとしたが、ディフェンダーに妨害される。チームファウルが5つになることが頭をよぎり、中途半端な位置で低いジャンプをしてしまう。
ボールは黒田に向かうが奪われてしまう。スリーポイントラインのあたりで高い位置にいるやつにボールが渡りシュートを打たれるが、ボールはゴールリングにぶつかり大きく跳ね上がる。リバウンドを取ろうとジャンプする両チームの選手。クレイグがリバウンドを奪い取る。
「よしっ!」
速攻だ!
浅井はゴールに向かって走り始める。
コートの反対側を浅井と並走する中山がジャンプしパスを要求。中山をマークしていた敵ディフェンダーも慌ててジャンプするが間に合わない。身長ほどの高さに達した中山にパスが通る。
浅井は中山に合図しつつ、スリーポイントラインのあたりで思いっきり床を蹴りジャンプ。ゴールリングに向かって上昇、中山からのパスをキャッチ。ボールを頭の上に持ち上げた浅井はゴールリングにボールを押し込む。
ゴールリングを掴んだ手を離し、ゆっくり落下しながら浅井はタイマーの方を見る。第4クォーター、残り時間3分。5点差まで追いついた。
ここで相手チームがタイムアウト。
「5点差で残り3分。なんとかなりそうな気がしてきたな」
ベンチでメンバーを迎えた永江がいう。
「まあ、ここまで一度もリードしたことないけどね」
柚子山が指摘する.
確かに。始まってから一度も逆転していない。
「黒田くんは下がって透哉、クレイグに代わってミカちゃん出て」
監督の本條莉奈が指示を出す。
「りょーかい」
「例の技、やってみるか。浅井、中山」
永江はそういうと浅井と中山を交互に見る。
例のやつか。試合ではまだ一度もやってないが。
「おう。俺がボール持ったら配置に付け」
中山がいう。
中山のパス精度は高い。彼に任せれば大丈夫だ。
ゲーム再開。
ミカ・コルホネンが低空でボールを運び、中山にパス。
永江はゴールリングの左側、スリーポイントラインのあたりにいる。浅井はゴールの右側に向かう。中山がジャンプしたのを確認、ディフェンダーの横から浅井はゴールに向かって思いっきりジャンプする。
永江もディフェンダーにフェイントをかけた後、その場でジャンプ、中山から永江に速いパスが送られる。頭の上に向かったパスを永江がトス。そう、バレーボールのトスだ。永江はバレー経験者、セッターをやっていたのだ。
中山の速いパスがトスによって一瞬で向きを変え、浅井に向かってまっすぐ飛んでくる。コースは完璧。浅井はボールをキャッチしリングに押し込む。
この永江のトスによるパスが威力を発揮し、連続してゴールを決めることができた。スポーツに流れというのがあるなら、今はまさにぼくらのチームに流れが来た。試合の終盤になって。
試合終了のホイッスルが体育館に響く。
120:118
勝った。
監督が大喜びでメンバーを迎えている。ハイタッチしているので浅井もその列に並ぶ。練習試合では何度か勝っているが、公式戦はこれが初勝利だ。
「たった2点差かよ」
中山は不満そうだが笑顔を隠しきれていない。
結果を見れば苦戦だったが、逆転勝ちでいい試合だった。
「2勝が必須だからこの勝利は大きいよ。得失点差は次で取り返すしかないね」
これは永江。まあ、その通りだな。
「それじゃあこの後、反省会と次の試合に向けての作戦会議やるからねー」




