クレーターズ戦 その11 第4クォーター
後半2回目のタイムアウト。
予選リーグでは、前半、つまり第1、第2クォーターで2回、後半の第3、第4で3回まで取れる。
「チームファウル3つ。狙われてるね」
戻ってきたメンバーに監督の本條莉奈がいう。
各クォーターごとにチーム全体のファウル数が5回以上になった場合、ファウルの度に相手チームにフリースローが2本与えられる。
「勝負は僅差でつく想定なんだろ」
これは中山。
今は6点差。確かに1点でも2点でも追加点が欲しいところだ。
「じゃあ、こっちも相手のファウルを狙っていきたいね」
永江がいう。
「シュートの成功率でいうと、13番、21番が低い。仮に5ファウルになっても、フリースローを与えるならこの2人がいいかも」
コーチの藍崎華瑠奈がいう。
確かに、そういうプレイヤーなら1点しか決まらない可能性は高いし、反撃で2点取れれば点差を詰められる。
「透哉くんはファウル3つ取られてるから、ぼくがファウル取りに行くよ」
これは柚子山。永江はすでに3つファウルを取られているから、柚子山が動いてくれるのはありがたい。
タイムアウトが終わりコートに戻る5人。
柚子山は宣言通り相手のファウルを狙い、さっそく1つブロッキングのファウルを得た。
柚子山が中山に対し投げたパスに相手プレイヤーが反応しインターセプトしようとジャンプしたのだが、ボールは大きく曲がり味方に通る。ボールに向かってジャンプしていたディフェンダーは、その際にこっちのプレイヤーの進路を体で防ぐかたちで体当たりしたのだ。
柚子山は永江とは対照的なプレイヤーだ。永江は強引に行くタイプだが、柚子山は『華麗』で『エレガント』なプレイを好む。このファウルも、狙った相手ディフェンダーがジャンプすれば届きそうな軌道を通って味方に通るパスで、ディフェンダーがボールに触ろうとジャンプした先に味方がいる状態を狙ってパスしたのだ。柚子山の宣言を聞いていなければたまたまと思うかもしれない。
「ナイス」
中山が柚子山に小声でいう。
インターセプトできそうな軌道を進むボールに向かわないとパスが通り攻撃につながる。ということで、相手ディフェンダーも罠とわかっていてもジャンプするしかなく、柚子山は相手に2つ目のファウルを与えることに成功した。
相手チームは、柚子山にパスが通らないようマークし始めたが、柚子山の動きを止めようとしてユニフォームを掴みホールディングのファウルになった。これで3つ目。
「有言実行ってのも、エレガントっていっていいよね?」
柚子山がすれ違いざまに浅井にいう。
「見事だね」
感心した浅井が反応する。




