永江透哉
決まった! が、ホイッスルが鳴る。
「くそっ」
永江透哉は審判の方を見る。チャージングファウルを取られた。
あれくらいで倒れるかな。かすっただけっていうか、わざとよけなかっただろ、大げさだな。そう思いながらも倒れたディフェンダーが起き上がるのに手を貸す永江。
「3つ目だぞ。気を付けろ」
隣に来たチームメートがつぶやく。
「ああ」
ちっ。ったく。
最近、体がちょっとぶつかっただけでファウルを取られてるような気がする。ゴール下の狭いエリアで何人も動き回ってるんだから、多少ぶつかるのは仕方ないだろ。友達と遊びでやってたバスケじゃあ少々ぶつかって倒れようがそのまま流したもんだ。ぶつかり合いがあった方が、やってる方も見てる方も面白いだろうに。
どうもこういったルールに厳しいちゃんとした試合は苦手だ。ファウルしないよう気を付けないといけないのは、なんか遠慮しながらプレイするような感じで窮屈だ。
まあ、俺のようなプレイは素人扱いされることは知っている。ただ、わかってはいても窮屈であることに違いはない。やっぱりバレー部の方が良かったかもしれない。バレーなら相手とぶつかることもない。中学まではバレー部でセッターをやっていた。チームは大して強くはなかったが、それなりに楽しかった。
バスケは友達と遊びでやる程度だったが、高校ではバスケ部に入った。セッターは得点につながるトスをあげる役割だが、いいトスをあげてもアタッカーが打ち損ねたりブロックされるといらいらすることも多かった。バスケは自分で得点を決められるところが気に入っているし、それにゲームも楽しい。
そんなわけでバスケ部に入ったわけだが、『厳しい』ルールに適用できるか耐えられなくて辞めるのとどっちが早いかだ。
結局、ラフプレーが多いからか試合に出れる時間が少なくなり、部活もさぼりがちで幽霊部員になった頃、親の仕事の関係で引っ越しすることになった。場所は、何と月。地球の衛星の月だ。月の南極付近に作られた街に引っ越すのだ。高校に入学して日も浅いが、現地の高校の新学期が始まる9月に転校することになった。
ヘイワース高校では、もちろんバスケ部に入った。
地球の6倍の高さまでジャンプできるというのは驚異だ。摩擦力が低く滑りやすい床とか、滞空時間が長く下手にジャンプしてしまうと何もできなくなるとか戸惑うことも多かったが、ムーンバスケットボールは楽しいということに気づいた。それに、滞空中は動きを制御できないことから、体がぶつかるプレイも割と許容されているところが気に入った。
楽しいバスケ部活動だったが、対外試合が少ないことが不満だった。そんなことを考えていた時に中山から誘われた。こいつは面白いやつだし、バスケもまあうまい。それに中山がチームを作る目的も気に入った。




