クレーターズ戦 その7 第3クォーター開始
「さあ、みんな! 第3クォーターは重要だよ。集中していこう!」
15分のハーフタイム終了し、監督の言葉を背にコートに戻る5人。
第1クォーターの後半から第2クォーターにかけて調子が上がってきた。今は19点差だが、このクォーターで一桁差にしたい。
プレイ開始直後、速攻が決まる。いい感じだ。まあ、決めたのが浅井というのはちょっと気に入らないが。このチームで練習試合を7戦やっている。内5戦は浅井が最多得点、残り2戦は永江が最多得点だ。永江はそんなことを考えながら守備につく。
相手のスローイン。この攻撃を防ぎたい。地球のバスケも同じだが、攻撃する側はスリーポイントラインあたりまでボールを容易に運ぶことができる。そこから攻撃を組み立てる。リングは7.7メートルの高さなので、シュートは必ず高い位置から打つ。スリーポイントシュートであっても高くジャンプしてから打つが、シュートの成功率を上げるには、できるだけリングに近いところで高い位置からシュートを放つ必要がある。
シュートまでの流れは、中空層、つまり身長よりちょっと高い空間でパスを回し、6メートル以上の高空層にいるやつにパスを通しシュートというのが基本だ。なので、ディフェンダーは数秒後に高空層にいるプレイヤーを予測する必要がある。
永江はここまでファウルを2回取られている。5回で退場なので、4回取られたらベンチに下がることになる。
滞空中は動きの制御ができないので、少々強い接触でもファウルを取られにくい。もちろん意図的な体当たりは取られるが。
相手のシュートを防ぐ際に意識しておかないといけないのは、ノーチャージエリアだ。ムーンバスケットボールでは地球のバスケよりもこのエリアが広い。
地球のバスケでのノーチャージエリアは、リングの中心から1.25メートル前に描かれたサークルに囲まれたエリアを指す。このエリアの上空にいるオフェンスプレイヤーは、同じエリアにいるディフェンスと接触しても基本的にはオフェンスファウルは取られない。
ムーンバスケットボールではこのエリアが広く、リングの中心から半径3.5メートル、高さ10メートルの円柱空間がノーチャージエリアだ。低重力の月面では、遠いところからジャンプしてダンクを決めることもあるので範囲が広いのだ。なお、各プレイヤーはタグを付けていて、プレイヤーの空間での位置は審判に把握されている。
攻撃側のプレイヤーがボールを持ってノーチャージエリアに入りシュート体勢に入ったら、後からジャンプしたディフェンスにコースを防がれたとしてもチャージングは取られない。ディフェンダーが後からオフェンスの飛行軌道に侵入してぶつかった場合、防御側がブロッキングを取られるので攻撃側が有利だ。ただし、ディフェンダーが攻撃側の動きを読んで先に空域を占有していれば、オフェンスがディフェンダーに衝突した場合にはチャージングになる。
つまり、相手のシュートを防ぐには、まずは最後の踏切り、つまり高くジャンプさせないよう妨害する。ジャンプされた場合でもそのプレイヤーにパスが渡らないようにする。そして、パスが通った場合でもそのシューターの飛行軌道に先回りして空域を守る必要があるのだ。
スリーポイントラインにいる相手プレイヤーにボールが渡った。そいつはその場でドリブルしながらパスする相手を探している。ペイントエリアに駆け込みジャンプしたやつにパスが通る。ジャンプの勢いが弱いのでこいつはシュートしない。更に別のプレイヤーにパスが通る。
永江がマークしていたやつがゴールの方に駆け込もうとしている。こいつがシュートを放つかもしれない。永江はそのプレイヤーがシュートを放つ場合に通る軌道に先回りして強くジャンプする。予想通りそいつにパスが通るが、シュート体勢に入ったところで永江がいることに気づき慌ててパスするが、これを広瀬がインターセプト。うまい! 広瀬か中山にパス、キャッチした中山がセンターライン当たりで高くジャンプ。長い滞空時間の間に浅井が速攻でゴールに向かって走り込み、中山からのパスが通りダンクが決まる。また浅井か。まあ、このシュートは自分のディフェンスから生まれたものだ。永江はそう考えて納得する。
相手のスローイン。スリーポイントラインあたりの中空層でパスが回される。永江はさっきと同じやつをマークする。ゴール右側にいるやつにパスが通る。マークしていた男が少し後ろに下がる。スリーポイントを狙うのか? 永江はスリーポイントに備え男の近くに移動した瞬間、男はペイントエリアに駆け込み高くジャンプ、男にパスが通る。くそっ! 永江は慌てて強くジャンプし男とリングの間に入る。男はそのまま飛行を続け永江に衝突。ホイッスルが鳴る。
ブロッキングを取られた。永江の3つ目のファウルだ。




