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地球から一番遠い教室で  作者: 草川斜辺


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クレーターズ戦、その3 第1クォーター終了

永江が17番をマークするようになったおかげで相手の攻撃のリズムを少しは崩せたような気がする。何とか相手の攻撃に耐えているという感じではあるが、点を取られるペースが落ちてきた。本條莉奈(ほんじょうりな)は意外と、というと失礼かもしれないが、監督の才能があるかもしれない。


それに藍崎華瑠奈(あいざきかるな)の指摘で20番に注意を向けたことで、3ポイントシュートの成功数も減ってきた。彼女もさすが地元民だけあってよく知っている。浅井はベンチの藍崎をちらっと見る。


中山にボールを集めるという戦術もいい感じだ。浅井のシュート機会も増えた。

8対24、16点差。


浅井のシュートが連続で決まり12対27。まだまだ差は大きいが、攻撃がつながるようになってきた。

浅井はタイマーに目をやる。第1クォーターは残り2分を切っている。


「差を詰めるよー」

監督の声が聞こえる。


中山がスローインしたボールを受け取る浅井。

「一本決めるぞ」

浅井の横を走る中山が声をかける。

「おう」

返事する浅井。


相手チームはすでに全員がゴール前に戻り、ディフェンスの体制を整えている。

ドリブルしながら敵と味方の動きをうかがう浅井。

身長の高さまでジャンプしパスを要求する柚子山(ゆずやま)にパス。直後、永山(ながやま)がゴールに向かって右側、スリーポイントラインの外側から回り込みディフェンダーの隙をついて高くジャンプする。


柚子山からジャンプしている永山へのパスが通った。よしっ!

永山がシュート体勢に入った。リバウンドにそなえるか? いや、20番はどこだ? 左側スリーポイントラインの外側にいる。

永山が放ったボールはリングに当たり大きく跳ね上がる。くそっ! リバウンドに行っておくべきだったか。


ムーンバスケットボールのリバウンドは取るのが難しい。重力が小さいためリングにぶつかったボールは遠くまで飛んでいく。ボールは運悪く敵ディフェンダーが取りそうだ。跳ね返る方向を見極めてからジャンプしたのだろう。


20番を見るとセンターライン近くに移動してジャンプし、上昇しながらパスを要求している。既に身長より高い位置にいる20番にパスが通る。ボールを持ったままジャンプの頂点に到達、落下しながらゴールのあたりを見ている。


20番がパスするやつは? ゴールに向かって走ってるあの17番か。浅井は床を力強く踏みつけて摩擦力を上げ、17番に向かう。思ったより体が高く浮き上がったが追いつきそうだ。

20番の方を振り返ると、ボールを手にゆっくりと落下しながら17番へのパスのタイミングを計っているようだ。


浅井は着地後の次のステップで軽くジャンプし、20番からのパスコースの間に入り妨害する。17番へのパスはあきらめたらしく、別のプレイヤーにパスが渡る。速攻は防げた。

だが、パスを受けたやつが高くジャンプしている別のやつにパス。あの位置は3ポイントだ。

スリーポイントラインの外側で高くジャンプしたやつにシュートを決められる。


17対40、23点差にされる。

残り50秒を切った。


「今度こそ決めるぞ」

中山が再度浅井に声をかける。

「ああ」


中山がドリブルでボールをスリーポイントラインのあたりまで運ぶ。

パスを受け取る浅井。残り時間も少ないし、ここは3ポイントを決めたい。


柚子山がパスを要求しているのでパス、その直後に浅井はすぐ近くのディフェンダーの前で膝を曲げ大きくジャンプすると見せかける。引っかかった相手ディフェンダーがジャンプする。


浅井は一歩横に移動し、柚子山に合図を送りつつ思いっきりジャンプ。柚子山もディフェンダーをかわしジャンプし浅井にパス。

浅井は柚子山からの速いパスをキャッチすると、ゴールリングに狙い定める。上昇が止まり体が落下し始める瞬間、停止した状態からシュートを放つ。

ムーンバスケットボールのスリーポイントシュートは難しい。低重力のここではボールは放物線を描きにくく、スリーポイントラインからのシュートは感覚的には真上に向かって打って放物線を描くようにする必要がある。そのため長い距離を投げることになり決まりにくいのだ。

強い角度で上に向かって放たれたボールは頂点でまるで停止したかのようにゆっくりと放物線を描き、その後ボールはゴールリングに向かって落下、リングに吸い込まれる。


「ナイッシューッ!」

チームメイトの声が聞こえる。


審判のホイッスルが体育館に響く。第1クォーター終了。


20対40


まだダブルスコアだ。

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