クレーターズ戦 その2 タイムアウト
くそっ。また決められた。
浅井はスコアボードを見る。
2対22。
あっという間に20点差をつけられた。
こっちのリズムが整わないうちに一気に差を付けられた。相手の高い位置でのパス回しにまったく対応ができていない。逆に、こっちの攻撃はパスを奪われすぎだ。
第1クォーター、1回目のタイムアウトだ。うちの監督がたまらず取ったという感じだ。
「ごめん、ちょっと遅かったかな」
監督の本條莉奈がベンチ前に戻ったメンバーに声をかける。
「いいタイミングだよ」
柚子山がこたえる。
「問題ない」
これは永江。
「くそっ、パスがことごとく取られる。シュートにもっていけねえ」
中山が不満そうだ。無理もない。決まったのが浅井のシュート1本だけでは。
「17番のポイントガード、やっかいだねー」
そういうと、監督は相手チームベンチの方を見る。
「たしかに」
浅井も同意する。
17番には結構な数のパスを取られたり妨害されたし、こいつを起点にシュートを決められてもいる。
「透哉は17番についてくれるかな」
監督が永江透哉の方を見る。
「ああ、あいつね」
永江はそうつぶやくと水分を補給する。
「彼はいつの間にか現れるよね」
これは柚子山。
確かに。17番はどこからともなく現れるって感じだ。まるでボールがどこを通るかをあらかじめ知っているかのようだ。
「17番は中空層の守備がうまい。まだ序盤だから、低空層でのパスを増やすのがいいと思う」
監督の横に立つコーチの藍崎華瑠奈が発言する。
ムーンバスケットボールはプレイ空間が上に広いスポーツだ。この空間を3層に分け、低空層、中空層、高空層、と呼ぶ。低空層は地上から3メートル程度、中空層は3メートルから6メートル、高空層はその上の空間だ。広い空間での守備は、プレイヤーやボールが今どこにあるかではなく、2秒後、3秒後にどこにいるか、どこを通るかを予測する必要がある。17番はこれがうまい。
「確かに。あいつはやっかいな中空ディフェンダーだ」
永江がいう。
「それと、20番。17番から20番にパスが通ると3ポイントが決まるから気を付けて」
藍崎華瑠奈が続ける。彼女のコーチらしい発言に浅井はちょっとうれしくなる。
「了解」
永江がすぐに反応する。
「OK」
浅井も返事する。
「俺にボールを集めろ」
中山は集まったメンバーを見回しながらそういうと、水分補給する。
タイムアウトも終わりコートに戻る際、中山が浅井に声をかける。
「俺がボールを持ったらゴールに向かえ」
点を取れってことだな。
浅井はうなずくとコートに入り位置に付く。
ゲーム再開。




