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地球から一番遠い教室で  作者: 草川斜辺


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チーム名決定

土曜の夕方。

浅井は予約時間の30分前に市民体育館に到着した。練習開始までに着替えてストレッチしておくのだ。


体育館に入るといくつかのチームが練習している。あの2チームは地元チームだな。見たことのあるユニフォームだ。もう1チームには地球から来たばかりのやつがいるようだ。ジャンプしながら歓声を上げているやつが何人もいる。気持ちはわかる。あんなことができるのはここだけだから。浅井も最初の体育の授業で跳び上がった時のことを思い出す。


「よう」

呼びかける声に振り返ると、永江(ながえ)がいる。

「地球人がはしゃいでるな」

柚子山(ゆずやま)と新メンバー3名も続いて体育館に入ってきた。3人の内2人は現役のバスケ部員で、大会出場メンバーに選ばれなかったやつらだ。まあ、それでも経験者が入ったのは心強い。もう1人も中学、高校でバスケ経験がある3年で、浅井と同じく今年地球から転入してきたやつだ。なんとかまともなチームらしくなった。


「エントリーチームのリストが公開されたね」

監督の本條莉奈(ほんじょうりな)がタブレットを眺めながらやってきた。

ぼくらのチーム名は、セレニティ・ラビッツ(Serenity Rabbits)になった。ヘイワース校Bチームにしようかという話もあったが、高校からは1チームしか参加できないのにこのチーム名では受け付けてもらえないだろうということで、一般参加チームらしい名前ということでこの名前にしたのだ。


セレニティは、晴れの海(Sea of Serenity)からきている。「晴れ」とはいうものの、語源からすると晴天というか晴朗・澄明とかの意味なので、さわやかなウサギ、みたいな感じでかわいいというか少しクール系な感じもあるといえばあるのだが、ウサギというところに中山はいまいち納得していないようだった。監督の本條莉奈が強く推したので、他のメンバーは賛成したという感じだ。ムーン・ラビッツとかルナ・ラビッツの方がわかりやすいと思うが、ありふれているということでこの名前にしたそうだ。まあ、別にいいんじゃないかな、かっこいい感じもするし、と思う浅井。


ユニフォームのデザインは監督とコーチ、つまり本條莉奈と藍崎華瑠奈(あいざきかるな)で考えるそうだ。あんまりかわいいのはやめてくれ、というのが、チーム名を認める際の中山の条件だ。


「予選に出る24チームで強そうなとこは、っと」

本條が端末の画面をスクロールする。

「予選ラウンド突破実績があるチームだな」

これは中山。

「俺らみたいな初出場のチーム以外は、これまでの成績が載ってる」


「予選突破実績のあるチームは、24チーム中18チームかー。結構多いね」

柚子山(ゆずやま)がつぶやく。

「昔の実績も含めてだからな。ここ2年で実績のあるチーム以外は大したことないと考えていいだろう」

中山が指摘する.

「2年以内だと、10チームだねー」

本條が画面を見ながらいう。

「予選突破は上位8チームだから、10チームってのはきついな」

ストレッチしながらいう永江。

「予選は6グループだから、どのグループにも必ず入るってことだよな...」

浅井はそうつぶやくとちょっと不安になる。


予選ラウンドのグループ分けでは、これまでの予選突破実績から強豪チームは分散されるが、予選の突破条件は、6グループの各1位6チームと、2位の内、勝ち点や得失点差で上位2チームの計8チームだ。強豪が10チームというのは確かになかなか厳しい。


「このムーンウォーカーズは3年連続で予選突破してるね」

本條がつぶやく。

「そこって確か25年前くらいに結成された最古参の地元リーグのチームだな」

これは永江。

「そうだな」

中山がいう。

「今年も予選ラウンドからってことは、歴史のあるチームでもグループリーグでは勝てないってことなのか」

そういうと永江が腕を組む。予選ラウンドを突破してもその先は厳しそうだなと考える浅井。


「予選ラウンドは弱小が多いので、突破したからといって大して強くはない、ともいえるね」

柚子山が指摘する。

なるほど、そうともいえるな。

「だといいんだけど」

と発言してみる浅井。

「ここは住民の平均滞在年数は3年半程度、まあバスケやってるやつはちょっと長いがそれでも5、6年。メンバーの入れ替わりも頻繁だからな」

中山はそういうと肩をすくめる。


そうだったな。ヘイワース市の人口は9万だが、ほとんどは短期滞在者だということを浅井は思い出す。メンバーの入れ替わりが多いから、強いチームを保つのは難しいということか。確かにそれはありそうだ。


「後は、クレーターズも2年連続予選突破、ムーンロックスは去年初突破でグループリーグでも1勝してるな」

「こうみると、どのチームも強そうな気がしてきたな」

浅井がつぶやく。


「今から弱気になってどうすんのよ。はーい、みんなー、練習開始!」

コートを見ると、ここを使っていたチームが掃除道具の片づけを終えるところだ。


監督の声に全員コートに入る。

本條莉奈が監督、藍崎華瑠奈がコーチになってからチームの雰囲気もいい。

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