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地球から一番遠い教室で  作者: 草川斜辺


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初デート! その7 ちょっと進展

「夕食にはちょっと早いけど、スーパーボウルに移動しようか」

と浅井は提案する。

「はい」

レストランを予約した時間まで1時間半ほどあるが、スーパーボウルに移動することにする。

スーパーボウルは回転によって疑似重力を生み出す野球場並みに巨大なお椀状の施設で、もっとも外側の歩道を回転方向に歩けば1Gの重力になる。


地下鉄で公園通りの最寄り駅に戻る。

エレベーターで更に地下に降りてスーパーボウルに向かう。スーパーボウルの中心部は回転していない円形状の広場で、この広場の真ん中に下から登る階段が入口だ。広場が近づくにつれて強い風を感じ始める。巨大なお椀状の斜面が回転している施設だが、回転に合わせて風が渦を巻いているので、中心部はかなりの強風が吹き荒れている。


回転する斜面から手すり付きのステップが中心の広場にせり出している。斜面エリアへの出入り口だ。藍崎華瑠奈(あいざきかるな)は慣れたもので手すりを掴むことなく乗り込む。浅井は念のため手すりを掴んで乗り込む。そのまま手すりに沿ってらせん状にゆっくりと外周部に向かいながら歩き、芝が敷かれたエリアに到着する。


まだ中心部に近いので風はかなり強い。


「もうちょっと風の弱いところまで行こうか」

「それがよさそう」


ちょっと外周寄りのあたりが最も風の弱いエリアだ。

ベンチに座ろうかと思ったが、よく考えたら、予約の時間までベンチで座って過ごすのはちょっと間が持たない気がしてきた。アマチュアバンドが演奏しているのでそこに向かうのもいいかと思ったが、それだと無言のまま過ごすことになりかねない。どうしたものか。


「あっれー?」

後ろから声が聞こえたので振り返ると、満面の笑みを浮かべた本條莉奈(ほんじょうりな)がいる。


「もしかしてー、デート、なのかなー?」

ちょっと冷やかしが入ったような言い回しだが、満面の笑みの上に、さらににやにやしている感じが加わった。人間はここまで笑顔になれるのかと感心する。


「さっきは差し入れありがとう」

午前の練習の時に本條に差し入れをもらった件で、ちょっと話題をそらしてみる浅井。


「どういたしまして。で、デートなの?」

話題をそらせなかった。もちろんデートのつもりなんだが、ここでデートだといって藍崎に否定されたらと思うと、どう答えたものか悩む浅井。

「えーと...」

浅井はちょっと返答に(きゅう)する。


「うん。デート」

藍崎華瑠奈がこたえる。

「そ、そう、デートなんだ」

藍崎の返答に驚く浅井だが、慌てて藍崎にあわせる。弱気過ぎたことをちょっと反省する。


「へー。初デートかなー?」

相変わらず楽しそうな本條。


「まあ、そんなとこ」

今度は浅井が先に返事する。

「そっかー。今日の練習は昼前に終わったからねー」

「うん」


「そういえば華瑠奈もバスケうまいよね。中学までは私のほうがうまかったけど」

「へー、藍崎さんもバスケやるんだ」


驚いたように浅井の方を見る本條。

「ちょっと、何、その"藍崎さん"って。華瑠奈って呼んでないの?」

「え? いや、その、まだそれほど...」

「華瑠奈はなんて呼んでるの? もしかして"浅井さん"とか?」

「う、うん」


「ちょっとー、中学生じゃないんだからさー」

あきれたという感じで腰に手をやり二人を見る本條。気まずい感じになる二人。


まあ、指摘されているところはもっともではあるが、今回はまだ初デートだし。ふだんよく話してはいるとはいえ、会話が続かないこともあってファーストネームで呼びあうような感じでもない。浅井はどう反応したものかと悩む。


「下の名前なんだっけ?」

本條が浅井の方を見る。


英騎(えいき)、浅井英騎」

「私も英騎って呼んでいい?」

「え? う、うん」

「私のことは"莉奈ちゃん"でいいから」

まあ、周りはみんな本條莉奈のことは"莉奈ちゃん"って呼んでいる。

「華瑠奈も英騎って呼べば?」

「え? そ、そうだね...」

「じゃあ、邪魔するのも悪いから行くね。私は1Gエリアで友達に会う約束だから」

「うん。じゃあまた」


歩きかけた本條が立ち止まり振り返る。

「あ、そうそう。1Gエリアにはクラスメートとかもいるから、邪魔されたくなければ来ない方がいいかもー」

「ありがと」

浅井は有益な情報に礼をいう。

「じゃあね」

そういうと、回転方向に向かって歩いていく。外周部に最短距離で向かおうとするとコリオリの力の影響でまっすぐ歩くのが難しいので、回転方向に歩きながら螺旋状(らせんじょう)に徐々に外側に向かうのがここでの歩き方だ。


なんか、かき回されたような感じだが、気を取り直してデートの続きだ。


「そ、その、呼び方だけど、ファーストネームでいいかな?」

浅井は念のため彼女の意向を確認しておくことにする。

「うん」

「じゃあ...」

浅井は"華瑠奈"と呼ぼうとしたがちょっと照れくさい。

「なんかちょっと照れるね」

「そうだね、英騎」

名前を呼ばれて驚く浅井。華瑠奈はちょっと笑ってる。

「華瑠奈に先こされた」

そういうと浅井もほほ笑む。自然な感じでお互いファーストネームで呼べるようなったかな。浅井はちょと安心する。


「バスケうまいって聞いたけど」

「ここで生まれ育つとバスケは身近なスポーツだから」

「えっと、"莉奈ちゃん"は練習に協力してくれてるんだけど、華瑠奈も来ない?」

「え? うん。じゃあ行ってみようかな」

「よかった。今度の練習は月曜の放課後、市民体育館で」

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