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地球から一番遠い教室で  作者: 草川斜辺


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初デート! その3 浅井英騎の場合

土曜日の午後。今日の練習は午前11時半で終わった。

午後は藍崎華瑠奈(あいざきかるな)と初デートだ。


浅井英騎(あさいえいき)は、最初のデートは地球が見える丘に行こうと思っていたのだが、初回はやめておくことにした。この前の宇宙服実習の時に藍崎が月面に出るのは好きだといっていたこともあるし、いつかは誘いたいが。


なぜやめたのかというと、調べたところ、そこは観光客に人気なのはもちろんだが、デートスポットとしても人気なのだ。

デートなので人気のデートスポットに行くのは自然な感じはするが、宇宙服を着て二人で月面に出る場合、ツアーと違って無線の通話設定は二人だけになる。周りは真空なので当然外の音は何も聞こえない。


毎日ホームルームの前とか昼食の時に彼女と会話してはいるものの、なんというか、わりと頻繁に会話が途切れる。教室や学食は騒がしいのでそんなに気にならないが、二人っきりで周りが無音の環境で沈黙が続くというのは、ちょっと間が持たないかもしれない。


二人で地球を眺めるとかちょっとロマンチックな雰囲気だし、そこで沈黙が続くとか、最初のデートで気まずい感じになるのは避けた方がよいと考えたのだ。


ということで、初デートのプランはこうだ。

まず、待ち合わせ場所は噴水広場、午後1時。昼食はお互い軽く済ませておくことにした。

しばらく公園通りを歩く。店も多いしウィンドウショッピングとか、ドラマとかの舞台になった場所も多いのでそのあたりをめぐる予定だ。


それからコーヒーか何か飲んで休憩した後、美術館、ヘイワース市立美術館に行く。規模はそれほど大きくはないが、地球外で活動する芸術家の作品が多く収蔵されていて、教科書に載ってる有名な作品も少なくない。ヘイワース市歴史資料館もあるが、相手は地元出身者だし地味な感じもするのでそこはやめておく。


夕食は6時、遠心力で1Gの重力を生み出す施設、スーパーボウルにあるレストランを予約してある。1時に待ち合わせだから5時間後だ。公園通りと美術館だけで5時間過ごせるだろうか。美術館はそれほど大きくないからせいぜい1時間くらいだろうし、最初の通りの散策が1時間だとすると、コーヒー飲むのに1時間を要したとしても3時間だから2時間余る。散策に1時間、コーヒーに1時間というのは無理がある可能性も高いので3時間余るかもしれない。

一応、時間が余った時には映画を見に行く予定にはしているから何とかなるだろうとは思っているが、これまで彼女とこれほど長時間一緒にいたことがないから、間がもつかどうかが一番心配だ。


☆  ☆  ☆


「行ってきまーす。夕食は外で食べてくるから」

浅井は家を出て通りを歩いてエレベーターで地下鉄の駅のある上のフロアに移動する。

ここに越してきて最初の週末と同じように、最寄りの地下鉄駅から街の中心部に向かう。3駅目が街の中心。駅から出たところにある広い通りが公園通りだ。駅から公園通りの噴水広場までは徒歩で数分。


12時45分か。ちょっと早かったかな。まあ、誘った方が遅れるわけにはいかないし、こんなもんか。


浅井は周りを見回す。昼時ということもあり、噴水広場には見るからに観光客という感じの人が多い。噴水のある池を取り囲んで同心円状に並ぶ、座面の高いベンチというか、もたれかかる感じのスタンディングスツールに向かう。彼女も駅の方からくるんじゃないかと思うので、駅の方向が見えるあたりでもたれかかる。


それにしてもこの噴水は見ていて飽きない。地球の感覚はそう簡単には忘れられないから、スローモーションのような水の動きがリアルタイムで見えるというのはやはり不思議な感じだ。


「お待たせ」

後ろから聞こえた声に振り返る浅井。

高校に制服はないが、今日の藍崎華瑠奈の服装はいつものシンプルで無彩色なのとは違ってちょっとカラフルな感じだ。女子の流行はよく知らないが、最近よく見かける派手めな色合いのような雰囲気はあるが、それをちょっとおとなしくした感じか。世の中的には地味な方だが、彼女にしては派手という感じだ。


「あ、どうも」

そういうと立ち上がる浅井。

「駅の方見てたんだけど見逃したかな」

それとも、浅井より早く来て待っていたか。


「地下鉄は使ってないから」

「そうなの?」

「うん。ここまでは歩ける距離のところに住んでる」

「あ、旧市街だっけ、ここに長く住んでる人が多いのって」

「そう。公園通りの下の階層」

「へー。ぼくの家はここから3駅目」

「一番新しくできた住居地域だね」

「うん」


「まだここに来て日が浅いから、スローモーションのような感じで見てて飽きないよ」

浅井はそういうと噴水の方を示す。噴水は低重力の影響で水滴の落下が遅く、噴水のトップ部の動きや水が落ち始めるところ、水面に水滴が落ちた際の水の跳ねがスローモーションのように見える。


「そうみたいだね」

藍崎も噴水の方を見る。観光客が噴水を背景に動画を撮影している。


この噴水広場は月を舞台にしたドラマや映画で必ず出てくるところだ。

実際ここで撮影されたのではなくコンピュータグラフィックだけど、よく再現されている。記念撮影している人は、ゾンビのまねをしているようだ。ここに越してきて初めての週末、街を探索しているときに藍崎に偶然出会った時のことを思い出す。その時にここを舞台にしたゾンビ映画「ゾンビ・オン・ザ・ムーン」の話をしたが、あまり関心がないようだったから再度その話題を持ち出すのはやめておこう。


「じゃあ、ちょっと歩こうか」

「はい」

噴水広場を背に公園通りを歩く二人。

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