初デート! その2 デートに誘う
昼休み。
いつものように浅井は藍崎を誘って学食に向かう。最初は弁当持参だった藍崎も最近は学食で食事している。
いつもは中山と本條が合流してくるのだが、今日は二人ともそれぞれクラスメートや1組の生徒と一緒のようだ。となると、デートの話を持ち出すチャンスだなと浅井は考える。クレセントのメッセージを使う必要はなさそうだ。
「それ、おいしそうだね」
会話のきっかけをつくろうと浅井は藍崎に話しかける。
彼女が食べているのはサラダだが、ジャガイモとか大豆由来の人工ミートで作られたベーコン風の素材が入ったボリュームのあるもので、それだけで食事になる。
「うん」
藍崎のこの返答だと会話が途切れる。
というか彼女の返答ははいつもこんな感じだったな、と浅井は思い返す。
沈黙が続く。
中山と本條、というか中山はそれほどしゃべらないので、社交的な本條莉奈がいないと会話が続かない。これはちょっと状況を甘く見ていたかもしれない。
「今週末だけどさ」
もう本題に入ろう。浅井は週末を話題にすることにした。
「はい」
食事の手を止めて返事する藍崎。
「土曜の練習は昼前、11時半には終わるんだ」
午後は開いていることをまずそれとなく説明する。
「そうなんだ」
そういうとサラダをフォークでつつく藍崎。
気のない返事だな。まあ彼女らしいのだが。
沈黙。
「あ、えっと、わ、私も、土曜は休み」
突然思い出したように藍崎が発言する。
「え?」
意外な発言にちょっと驚く浅井。
「あ、みんな休みだよね」
ちょっと照れたような様子の藍崎。
「はは」
思わず笑ってしまう浅井。
沈黙。
会話が続かない。
ここはもう遠回りせず、デートの件を伝えるかと浅井が藍崎の方を見たところで誰かがテーブルの横に立つ。
「あれ? 来たばかりなの?」
本條莉奈が近くに立っている。手には食事のトレイを持っているが片づけるところのようだ。
「え? いつも通りだけど」
そう答える浅井。
「半分も残ってるじゃない」
本條の指摘にお皿を見ると確かに半分ほどしか食べていない。
無言の状況が続いたから食事を中断してはいなかったが、浅井はいつでも話し始められるよう少量ずつ食べていたからほとんど進まなかった。
会話がないので普通のペースで食べているとあっという間に食べ終わってしまう。なので、少しでも会話の機会をつくろうとゆっくり食べることになったのだ。
「あれ、えっと、ちょっと食べにくかったかな」
浅井はそう答えるが、食べていたのはパスタだ。
ちょっと納得いかないような表情の本條。まあ無理もないが。
「ま、いいけど」
肩をすくめる本條。
「昼休み、後15分しかないよ」
本條はそういうと食器の返却棚の方に向かって歩き出す。
「ほんとだ」
時計を見る浅井。
「それじゃあ」
そういうと本條は食器の返却棚の方に歩き出す。
「あの」
二人同時に発言する。
「あ、先どうぞ」
藍崎が譲る。
「うん。あの、今度の土曜だけどさ、午後、一緒にでかけない?」
譲りあう時間もないので、浅井は思い切って誘ってみる。
「え? は、はい、でかけます」
一瞬驚いたような表情の藍崎だが、すぐに返事を返す。
「よかった。待ち合わせ場所とか時間はクレセントで送るよ」
目的は果たせた、と安心する浅井。
「はい。よろしくお願いします」
ちょこっと頭を下げる藍崎。
「藍崎さんの方もなにかいいかけてたけど?」
「あ、もう大丈夫」
「そう」
「いそいで食べないとね」
「うん」
二人はそそくさと食事を済ませ、学食を後にする。




