17. 腹黒王子の告白
結局昼休みになっても久家くんは誰にも告白することはなかった。
お昼を終えて、みな学校で一番長い休み時間を各々自由に過ごしていたが、あたしは昼休みと同時にある人物に連れ去られ、人気が少ない別棟にいる。
「やっぱりここはいつ来ても静かでいいね」
「……」
予想道理と言うか何と言うか。
まぁ、あたしの事を強引に連れ去る人物なんて今のとこ目の前にいるこの男しかいない訳で。
別棟の2階にある美術室にあたしを連れてきて抜かりなく鍵を施錠し、そこら辺にある椅子に座っている。
あたしも彼とは少し離れた椅子に座ろうとしたが睨まれ、彼のすぐ隣の席につくのだった。
「ふふ。俺一回やってみたかったんだよね。学校でいけない事。」
背筋がゾワァとする。なんと言う恐ろしいことを口にするのだろうかこの男は。
あたしは半目で呆れたように彼に視線を向けるが、相も変わらず笑みを崩す事無く機嫌が良さそうにしている。
貞操の危機を感じたあたしはドアの方に目を向ける。
今ならひょっとしたら逃げれるかもしれない。
そう思いチラっと三浦くんの方を見ればさっきとは打って変わって今度は悪巧みを思いついたように意地の悪そうな笑顔を向けていた。
「逃げたら犯すよ?」
蛇に睨まれた蛙、とは正にこのような事を指す。
逃げようと思えば逃げられるのに体が硬直して全く動かない。
ひいいいいい。と心の中で叫び助けを請うがきっと誰にもこの叫びは届かないであろう。
三浦くんはあたしの頬に手を添えてくる。
びくん、と反応してしまいうが、気にする様子は見せず優しく頬を撫でられる。
こういった類には全く慣れていないあたしに対して彼はまるで壊れ物を扱うみたいに丁寧に接してくる。
是非ともこういう事はあたし以外の女の子にやってもらいたい。
きっと皆泣いて喜ぶに違いない。
「やめて。」
あたしは手を振り払うと行き場のなくした彼の手は宙で止まったままになる。
少し傷ついたような表情を見せるがそれも一瞬の事で拳を強く握りまたあたしに手を伸ばしてくる。
「いい加減にして!あたしは一度たりともこういう事を許可した覚えはないから!」
こちらが強く出れば相手は目を細めてこちらを伺うが、直ぐにまた得意の笑みでクスクス可笑しそうに笑い出す。
一体何が面白いというのか。こちらは真面目に怒っているというのにこのふざけた態度に腸が煮えくり返る。
「何で一々君に許可を得ないといけないの?」
「はぁ!?」
なんと言う開き直った態度なのだろう。
未だかつてこんなに失礼な奴に出会った事はない。
反論しようと口を開けばあたしが言葉を発する前に邪魔された。
「考えたんだ。どうやったら君に見てもらえるか。どうやったら君に俺を忘れさせないか。どうやったら距離が縮むのか。考えて考えて、ようやく見つけたんだ。ねぇ?君はこの2日間俺の事でいっぱいになったでしょう?」
言葉が出てこない。
凶器に満ちた告白を受け、眉間に皺が寄る。それまでずっと小馬鹿にしたようにニヤニヤしていたのに急に真剣に満ちた顔でそんな事を言われてすぐに頭が回転するほどあたしは出来た人物ではない。
硬直しているあたしに彼はフ、っと悲しそうに微笑み手を握ってくる。
思いのほか握られた手の力が強くてビクッと肩に力が入る。だけど彼はお構いなしに言葉を続けた。
「本当はもっと後になったら告白しようと思ってたけど、有花が悪いんだよ。あんな可愛いこと言われたら止まんなくなる。」
「はぁ…?」
「告白ゲームだって事は分かってるよ。それでもどうしようもなく嬉しかったんだ。好きな女の子にゲームとは言え告白されて嬉しくない男なんてどこを探してもいないよ」




