16. 久家くんと安藤さん
久家くんの発言に安藤さんは絶句する。
関係ないあたしも驚いているのだから安藤さんはもっと驚いているだろう
言葉の意味が理解出来ないのか、安藤さんは詳しく久家くんに尋ねている。
「どんな相手でもって??」
気になって久家くんの方を向いていたがあたしの席からは彼の後姿しかみえない。
その時久家くんが後ろを向きまさかの彼と目があった。
だがそれも一瞬。あたしと目があったように見えたけど、もしかしたらこちらを向いただけであたしを見ていた訳ではなかったのかもしれない。
辺りをキョロキョロと見たけど、特に何もなかった。
「告白対象者。例えば彼氏がいるやつでもいいのか?」
安藤さんの喉が上下に動いたように見えた。
遠くからだったのではっきりそうとは言いがたいが、視力には割りと自信があるので恐らくそうだろう。
「それってどういう意味…?」
尋ねる安藤さんの声音が先ほどより低い。
あたしの方からは安藤さんは正面に見えているので表情も硬くなっているのが分かる。
「いや、ただ聞いただけ。」
久家くんが応えるとホッとしたように安堵し、安藤さんは複雑そうに返答する。
「一応、彼氏や彼女がいる子でも告白対象者にはなるよ。でも…みんなそこら辺考えてるみたいでまだ誰も恋人がいる人に告白はしてないみたいだけど」
「そうか。」
「あの、結局誰に告白するかは・・・?」
「もう少し考えさせてくれ。ルールはちゃんと守る」
久家くんが応えると安藤さんはまだ何か言いたげにするが、これ以上は悪いと思ったのであろう、渋々と離れていく。
安藤さんがグループの子達の元に戻ると切なそうに顔を歪ませそれを他の子達が慰めていた。
それを横目でみつつ、久家くんが告白するような人は一体誰なのだろうと頭の片隅で考える。
だけどあたしの思考はそこで一時中断した。
正面を向いたら三浦くんがこちらを向いているからだ。
「・・・!」
目があうと三浦くんは微笑んだがすぐ無表情になって口パクで何かを言ってきた。
「余所見しちゃダメだよ」
声にはだしていないものの、なんとなくそう言っているような気がした。




