14.腹黒姫、捕獲
あたしと三浦くんの身長差はそれほど感じられない。
割と平均的な三浦くんに対してあたしは164cmもあるので女子の平均としては結構高い方だ。
だからこうやって目の前にすると自分と差ほど変わらない三浦くんの顔がよく見えてしまう。
「…惚れちゃった?」
何がそんなに嬉しいのか分からないが、ニコニコニコニコとしているので彼のおでこにデコピンしてやった。
「あいたぁ」と女子みたいに言っても全く可愛くない。むしろ気持ち悪い。
デコピンしたことによりあたしと彼の間に少し距離が出来た。
目の前に三浦くんの顔があると言いたい事の半分も言えなくなる気がするので距離に余裕があると安心する。
それを良いことにあたしは本題に戻すことにした。
「で?なんだってあんな事言ったの」
「俺、有花ちゃんの事好きだし?」
「何で疑問系なの。あと思ってもないこと言わないで」
フン、と顔を横に向ければ「ひどいなぁ」と嬉しそうに笑う三浦くんの声が耳に入る。
全く会話にならない三浦くんに苛々が募る一方だ。
これ以上話しても意味がないように感じたのであたしは終止符を打つために口を開く。
「とにかく、あたしは君と付き合うつもりは全くないからクラスの人たちにもちゃんと訂正しておいてよね」
それだけ言えば後は用がないので踵を返そうとドアの方に体勢を向きなおす。
だけどまた三浦くんにより右手が掴まれてそれ以上先に進めなかった。
顔だけ彼の方に向けると、それまでずっと笑顔だったのに無表情に変わっていた。
「行かせないよ?」
グイッと引っ張られ抱きしめられた。
離れようと力を入れてもびくともしない。
必死になっているあたしに対して三浦くんは余裕そうにしていた。
一体この細い体のどこにこんな馬鹿力があるのだろう。
ス、と彼の顔が耳に近づいてくる。ビクッと肩を揺らせば耳に熱い吐息が吹き込まれた。
「ん…!!」
思わず声が漏れてしまう。
こんな声出したくないのに、聞かせたくないのに、操られてしまったみたいに言うことのきかない自分の体に嫌気が差す。
彼の唇はあたしの耳たぶをチュッチュ、と音をたて吸い付いてくる。
ゾクゾク、と手足に鳥肌がたち、足が震える。
逃げようと腕に力を込めれば更にギュウ、と抱きしめられた。
「絶対に逃がさない」
まるで鳥かごの中に閉じ込められたかの如く自由を奪われた瞬間だった。




