11. 腹黒王子のご登場
あたしが夢中で話をしていたらきなりポン、と肩に手をおかれ、それはもう心臓が飛び出るのではないか!?と言うくらい驚いたのは言うまでもない。
「やぁ、おはよう」
「!み、三浦!!…くん。」
一応久家くんの前だからあたしは最後に「くん」を付けた。
昨日の今日だしどうも威嚇してしまうのは致し方あるまい。
それよりいつの間に来ていたのか、周りを見渡せば結構チラホラと教室内には人が集まっているのにその時はじめて気づいた。
時刻を見れば8時を指している。
なんだかんだで久家くんと30分くらい話し込んでいたらしい。
「なんだか盛り上がってたみたいで邪魔しちゃったかな?」
そう思うのなら最初っから声かけてくんな。と心の中で悪態をついて気づかれないように舌打ちした。
…つもりだったがばっちり三浦くんに見られていた。
あたしはどうもこの男の前だと裏の顔が隠しきれないらしい。
「いや、大丈夫だ。神城と日日日について話し込んでいたんだ」
「日日日?あー、葵が大好きなあの小難しい文章書いてる人か」
「確かに小難しいがあれは中々感慨深いぞ。柚希も読むといい」
「んー、俺は遠慮するよ」
…何やら聞きなれない単語が二つほど聞こえた気がする。
そういえば、全く興味なくて知らなかったけど、二人のフルネームを今はじめて聞いた。
「久家くんと三浦くんって今のが下の名前なの?」
話を折るのはいささか申し訳ないがあたしは疑問に思ったことを口にする。
すると久家くんも三浦くんも驚いたようにこちらを振り返りその後二人して笑いはじめた。
「まさか3年の2学期にもなって俺たちの名前知らなかったの?面白いね神城さんは」
無邪気そうに笑う三浦くんは昨日の事がまるで夢だったのではないか?と疑うくらいだ。
でももう二度と騙されはしない。
あたしは昨日の件があってから今日この日を復讐劇に変えてやるのだ、と決心しているのだから。
「あたし人の名前覚えるの苦手で…」
少し照れたようにうつむく。これはあたしが猫被っている時によく使う手段の一つだ。
そして勿論これは嘘。
人の名前を覚えるのが苦手なんて事は全くない。
むしろ覚える気があればすぐに覚える。
つまり興味が全くないから覚える気がないのだ。
「ふーん?」
そう言った三浦くんは少し意地の悪そうな笑みを浮かべる。
この顔は昨日嫌と言うくらい見慣れていた。
あたしはここぞとばかりに勝負にしかけることにする。
「そういえば昨日はどうもありがとう。まさかあんな事されるとは夢にも思っていなかったからすごくビックリしちゃった」
これ以上ないってくらいニコニコ笑顔を浮かべると三浦くんは少し嬉しそうに(意地の悪い笑顔のまま)笑った。
あまりの恐ろしい笑顔に寒気がする…。




