はじめてのじゅうま
王都へ戻る途中。
二頭のフェンリルは、ずっと双子のそばを歩いていた。
奏音の隣には、少し大きなフェンリル。
音波の隣には、もう一頭のフェンリル。
どちらも白銀の毛並みで、歩くたびに尻尾がゆったり揺れている。
すると突然。
「……奏音ちゃん」
「え?」
奏音が足を止めた。
今、声が聞こえた。
隣を見る。
フェンリルがこちらを見ている。
「……今、喋った?」
「うん~」
音波も振り返る。
すると、音波の隣のフェンリルも口を開いた。
「音波ちゃんも、聞こえた~?」
「聞こえた~!」
二人が目を輝かせる。
「喋れるんだ!」
奏音がフェンリルを見る。
「うん。今までは、ちゃんとお話しする方法がなかったの~」
「そうなんだ!」
フェンリルはふんわり笑った。
「私、奏音ちゃんと一緒にいることになったから、いっぱいお話ししたいな~」
「私も~」
もう一頭のフェンリルが、音波の隣で嬉しそうに尻尾を振る。
「音波ちゃん、よろしくね~」
「よろしく~」
「二人とも女の子?」
奏音が尋ねる。
「そうだよ~」
奏音の隣のフェンリルが答える。
「私はお姉ちゃん~」
「私が妹~」
音波の隣のフェンリルが続ける。
奏音が目を丸くした。
「じゃあ、私と同じだ!」
「そうなの~?」
「私がお姉ちゃんで、音波が妹!」
「一緒だね~」
フェンリルのお姉ちゃんが嬉しそうに尻尾を振る。
「じゃあ、奏音ちゃんがお姉ちゃんで、私もお姉ちゃん~」
「お揃い!」
「お揃い~」
その横では。
「私も音波ちゃんと一緒~」
妹フェンリルが、音波の肩に鼻先を寄せる。
「双子の妹同士だね~」
「ほんとだ~」
音波は嬉しそうに笑った。
「ねえ、名前は?」
奏音が尋ねる。
二頭は顔を見合わせる。
「まだないの~」
「私たち、ずっとお互いを『お姉ちゃん』『妹』って呼んでたから~」
奏音と音波は、また顔を見合わせた。
「じゃあ、名前つけよう!」
「うん~」
こうして。
聖騎士の奏音には、双子の姉フェンリル。
聖女の音波には、双子の妹フェンリル。
まるで鏡合わせのような、二組の双子が誕生した。
そして四人は。
「「「「これからよろしくね~」」」」
ふんわりした声を重ねながら、王都への道を歩いていった。




