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普通になれない僕らへ  作者:
第三章【秘密】

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8.5話(日常回?)

「ねぇ、名前なんて言うの?」

懐かしい声が耳に届く。

小さな男の子がそっと屈み、少女の顔を覗き込んだ。

女の子は無表情のまま、小さな声で淡々と答える。

「しずく。」

「しずくちゃんって言うんだね!これからよろしくね!」

男の子は少女を見てにこっと笑う。

少女は何も言わず、ただその場に立っていた。


「……い、おい!早く起きろよ!今日出かけるんじゃねぇのかよ!」

部屋のドア越しに、魁斗の少し焦った声が響く。

「……かいちゃん!今何時!?」

慌てて飛び起きた翠が、寝ぼけ眼のまま叫ぶ。

「今は10時だよ〜。」

リビングから湊ののんびりした声が返ってきた。

「あ、みな。ごめん、10時に家出る予定だったのに、寝坊しちった。」

慌てて部屋を飛び出した翠は、頭を掻きながら苦笑した。

「大丈夫だよ〜。翠ちゃん今日体調悪い?家で過ごそうか?」

湊が心配そうに翠の顔を覗き込む。

「んーん、全然大丈夫!ぱぱっと出かけよ!そんで、家でパーティーしよ!」

さっきまでの眠そうな顔はどこへやら。翠はぱっと笑顔を浮かべた。

「いいな、今日はピザ作ろうぜ!」

魁斗が楽しそうに笑う。

「いや!お寿司を作るんだよ!」

翠が負けじと言い返す。

「全部作ればいいんじゃない?」

ちょうどその時、リビングへやってきた優雅は翠の明るい声を聞いて、くすくすと笑っていた。

「いいの!?じゃあ決定!全部もりもりパーティー!さっ!れいれいとゆうくんにも早く伝えねば!」

翠は勢いよくリビングを飛び出していった。


そうして一日があっという間に過ぎていき、パーティーを終えた五人はリビングで各々くつろいでいた。

ソファへ腰掛けた魁斗が、大きく伸びをしてから口を開く。

「なぁ、今の所の情報整理させてくれ。齟齬があったらまずいしな。」

「あぁ。」

黎が短く頷く。

「まずどこから確認しようか。」

優雅がテーブルに肘をつきながら四人を見渡した。

「能力からだろ、西園寺に関しては分かるし。」

「そうだね。」

湊が小さく頷く。

「能力は東條が研究して、生み出したもので、翠ちゃんは実験番号零番……つまり最初の被験者なんだよね?」

「そうだよ。」

翠は頷きながら答えた。

「私と壱番までは胎児の時から実験体で、結局効果が見えづらいから、それなりに成長した人を攫って実験体にしてるって感じ。蓮さんもその一人。」

「そういえば、今は能力を与える薬に感情をなくす……性格を歪ませるみたいな因子が入ってて、能力自体を取り除かないとだめなんだよね?」

優雅は確認するように続ける。

「蓮司さんが能力を保持したまま感情が失われなかったのは、まだ感情をなくすって部分の技術がそこまで発達してなかったからだっけ?」

「そうそう。」

翠は指を一本立てた。

「私の時もそうだけど、まだ技術が発達してなかったから、強い衝動で自我を取り戻すことができたの。この前の女の子は薬を打たれてから二年が経ってて、本当ならもう感情というか自我はないはずなんだけど、能力自体が精神耐性だったから、自我が残ったままだったの。でもまだ小さかったから体が薬に耐えきれなくて、感情がなくなりつつあったって感じかな。」

「うんうん。」

湊が納得したように頷く。

「この前できる限り傷つけない方がいいよねって話をしたのは、能力者は攫われた一般人で無理やり能力を付与された人たちだから、元の生活に戻すために、傷をつけずに回収してって話だよね。」

「そうそう。」

翠は少しだけ表情を曇らせた。

「ただ能力の吸収はできるから、薬としての成分の回収はできるんだけど、失われた精神状態までは回復できなかったんだよね。でもこの前の戦いで精神操作をゲットしたから、多分戻してあげられると思う。今までの性格を知らないから正確にとまではいかないけど。」

「なるほどね。」

優雅は少し考え込むように顎へ手を添える。

「あ、翠ちゃんに確認したいことあるんだけど、この前翠ちゃんが僕らから逃げた時あったでしょ?その時の敵が東條とは別組織だったみたいだけど、東條じゃなくても能力を保持してるのはどうしてなんだろう。この前から色々調べてみたけど、契約書と交換条件って記載があったから、僕の予想だと実験体と経過報告を出すことを条件に、能力者にしてるのかなって思ったんだけど。」

翠は少し目を丸くしたあと、嬉しそうに笑う。

「ゆうくんすごいね。正解。」

その一言に優雅は少し照れくさそうに笑った。

「東條は実験に関する情報は公開してないけど、実験体の募集はしてるの。交換条件はゆうくんが言った通り、実験体の提供とその後の情報提供。あと最近だと感情をなくすってことの他に、この人は仲間だって認識させることもできるみたいで、今まで見た通り能力者が仲間に手を出さないのは、そういうふうに仕組まれてるから。私も分かることはそこまでかな。」

黎がじっと翠を見る。

「……翠はなぜ今の状況をそこまで詳しく知ってるんだ?」

「……定期的に潜入捜査してるからです。」

翠がさらっと答えた瞬間。

「「はっ!!??」」

四人の声が綺麗に重なった。

「おい!なんでそれを言わないんだよ!」

魁斗が勢いよく身を乗り出す。

「いやぁ、それは最近色々明かしたばっかりじゃん?ちょっと色々情報量が多いかなって……。でも大丈夫だよ?ずっと認識阻害使ってるし、厳重なところ入る時は透明化してるから。」

「そういう問題じゃねぇけど……。」

魁斗は頭を抱えた。

「でも俺らがスパイとして活動できるわけじゃねぇしな……。」

「あぁ、気をつけろよ。死んだら許さない。」

黎が静かに言う。

「もちもちだよ〜。」

翠は笑いながら敬礼する真似をした。

「じゃあ能力については以上だけど、他に確認することある?」

「あ、じゃあ。」

湊が少し照れくさそうに頬を掻く。

「翠ちゃんに関してなんだけど、翠ちゃんは僕らのこと好き?」

「え?好きじゃないよ?」

翠の返事に、一瞬だけ部屋の空気が止まる。

「大好きだけど?家族ですし。」

「よかった。」

湊は安心したように笑う。

「じゃあ、ちょっと棘のある質問なんだけど……最初僕らに監禁されたわけでしょ?それは僕らのこと知ってて接触するためだった?」

「うーん、言い方次第?接触ってより会いたかったから……かな?」

「なるほど。」

優雅が小さく頷く。

「僕らは各々が好きだったから、その時の状況的に監禁するのが一番かなって話で接触したけど、翠ちゃんほどの実力がある人なら逃げ出せるよなーって思ってたから不思議だったんだ。」

「確かに?でもこんなイケメンたちに監禁されるのは悪くないよね!」

「あはは!」

優雅が吹き出す。

「そっか、それは嬉しいね。でも僕たちのこと昔から知ってたんでしょ?どこかで会ったことある?僕たちが西園寺にいる時とか?」

「ふふ、それは秘密ー!」

翠は悪戯っぽく笑い、勢いよく立ち上がる。

「さっ!そろそろ寝よ〜。今日みんなで一緒に寝ようよ!」

「はぐらかすなよ……まぁ、また今度聞けばいいか。」

魁斗は苦笑しながら呟いた。

「よし!みんなでお風呂に入って寝よう!」

「いいね!お風呂!準備しよ!」

そうして話し合いを終えた五人は、それぞれ立ち上がり、笑い合いながら風呂場へ向かっていった。

すみません、先週に続きまた遅れました。今後は20時前後に更新予定です。

あともしかすると、来週中とかにXでキャラクターのイラストをあげるかもです。

今後ともよろしくお願いします!

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