第15話
まとめて更新2/3話目です!
優雅、魁斗side
建物の中へ足を踏み入れた瞬間、二人の目の前を東條の構成員が勢いよく吹き飛んでいった。
「うわ。」
優雅が思わずその行方を目で追う。
「随分派手にやってんな。」
魁斗は倒れた構成員を横目に、そのまま奥へと視線を向けた。
至るところで西影衆と東條の構成員が入り乱れ、激しい戦闘が続いている。
優雅は周囲を見回しながら、ここに能力者が一人もいないことに気づいた。
……ここには五番隊と六番隊がいるはず。隊長と能力者がいないってことは、隊長たちが能力者の相手をしてるのか。
「ここは大丈夫そうだね。じゃあ隊長の援助に行こうか。」
「ああ、行くぞ。」
二人は戦っている構成員たちの間を縫うように、そのまま奥へと駆け抜けていった。
しばらく進むと、広い空間で二人の男と五人の能力者が交戦しているのが見えた。
「朔!」
魁斗が声を上げる。
「っ……魁斗!?」
朔が驚いたように振り返る。
「なんでお前らがここに――。」
「朔、前!」
綾の声に、朔は咄嗟に身体を反らした。
目の前を能力者の拳が掠めていく。
「危ねぇな!」
朔はそのまま相手の腕を掴み、勢いよく投げ飛ばした。
綾も一瞬だけ優雅と魁斗へ視線を向ける。
「優雅さんと魁斗、なんで……。」
「説明は後!」
優雅が声を上げる。
「そういうことだ!手ぇ貸せ!」
「言われなくても!」
魁斗はすぐさま能力者たちへ向かって駆け出した。
「魁斗、待って!」
「は?」
優雅が声をかけた直後、魁斗の足元が大きく揺らいだ。
「っ!?」
突然地面が傾いたような感覚に襲われ、魁斗は咄嗟に片膝をつく。
「なんだこれ……!」
「平衡感覚を乱す能力!」
綾が攻撃を避けながら声を上げた。
「まともに走ろうとすると余計に崩される!」
「先に言えよ!」
「今言っただろ!」
「喧嘩してる場合じゃないよ!」
優雅が苦笑しながら声を上げる。
その直後、一人の能力者が優雅へ向かって走り出した。
優雅はすぐに構える。
「……あれ?」
次の瞬間には目の前にいるはずの男から、意識がふっと逸れていた。
確かに視界には入っている。
それなのに、なぜかその存在を追おうという意識だけが抜け落ちる。
「優雅さん!」
朔の声が響く。
優雅が我に返った時には、能力者の拳が目の前まで迫っていた。
「っ!」
咄嗟に腕で受け止め、そのまま後方へ飛び退く。
「……なるほど。」
「そいつ、恐らく認識阻害の能力者です!」
綾が声を上げる。
「視界から消えるわけじゃなくて、意識から抜け落ちます!」
「うあぁ、結構厄介だねぇ……。」
優雅は頬を掻きながら、五人を順番に見回した。
一人は平衡感覚を狂わせる能力、一人は認識阻害。
残り三人のうち、一人は先ほどから異様な速度で動き回り、もう一人は朔の攻撃を何度受けてもほとんど怯んでいない。
「速い人と、硬い人もいる感じかな。」
「最後の一人は?」
魁斗がふらつきながら立ち上がる。
「まだ分かんない。」
「じゃあ殴りゃわかんだろ!」
「だからちょっと待ってって!」
魁斗は構わず飛び出した。
「ほんと人の話聞かないなぁ!」
優雅もすぐさまその後を追う。
魁斗が身体硬化の能力者へ拳を振り抜いた……が、直後に鈍い音が響いた。
「っ……硬っ!」
身体硬化の能力者はほとんど動いていないのに、魁斗の拳に鈍い痛みが走る。
「馬鹿!そいつ硬化だって言っただろ!」
朔が叫ぶ。
「聞いてたわ!」
「じゃあ殴るな!」
「うるせぇ!」
その横を、別の能力者が一瞬で駆け抜ける。
「魁斗、右!」
優雅の声に、魁斗が咄嗟に身体を捻る。
しかし平衡感覚が崩れたままでは、思うように動けない。
「っ!」
自己加速した能力者の蹴りが、魁斗の肩へ直撃する。
「魁斗!」
「平気だ!」
魁斗はそのまま床へ手をつき、すぐに身体を起こした。
「……ったく、ムカつく能力ばっかだな。」
「でも、少し分かってきたかも。」
優雅は五人の動きを見ながら、静かに呟いた。
「何がだよ。」
「さっきから魁斗の平衡感覚を乱してる人、ずっと魁斗のことだけ見てる。」
「は?」
「視線から外れてる僕には何も起きてない。朔と綾も今は普通に動けてる。」
優雅はさらに視線を巡らせる。
「見てる人にしか能力を使えないんじゃないかな。」
その言葉に平衡感覚を乱す能力者の表情が僅かに強張った。
優雅はそれを見逃さなかった。
「あ、当たり?」
『てめぇ……!』
「じゃあ簡単だな!」
魁斗が口元を吊り上げる。
「俺がこのまま引きつけりゃいいんだろ?」
「無茶しない程度にね。」
「誰に言ってんだよ!」
魁斗はふらつく身体のまま、能力者へ向かって駆け出した。
それを追うように平衡感覚を乱す能力者の視線が魁斗へ向く。
「綾!」
「分かってる!」
綾が別方向から一気に距離を詰める。
平衡感覚を乱す能力者が気づいた時には、既に遅かった。
『っ!』
綾の蹴りが男の脇腹へ深く入る。
『ぐっ……!』
平衡感覚への干渉が途切れた瞬間、魁斗の身体が一気に安定した。
「おぉ!戻った!」
地面を強く蹴り、そのまま追撃する。
「お前は寝てろ!」
魁斗の拳が男の顔面へ直撃し、平衡感覚を乱す能力者はそのまま床へ倒れ込んだ。
「1人目!次!」
優雅は残った四人へ素早く視線を巡らせると、すぐに次の標的を決めた。
「次認識阻害を潰そう!」
しかし認識阻害の能力者へ視線を向けた瞬間、また意識が逸れる。
「……。」
直接本人を追おうとすると、意識から外れる。
なら——。
「認識阻害のやつどこいんだよ。」
「魁斗。」
「何だ。」
「僕が指差したところ、全力で殴って。」
「は?」
「いいから!」
優雅は能力者本人を追うのをやめ、その足元へ視線を落とした。
そこに人がいることを意識すると、また認識が逸らされる。
……でも床に落ちている影が消えてない。影そのものなら追うことができる。
動く影を目で追いながら、優雅はその先を指差した。
「そこ!」
「おう!」
魁斗は指示された場所へ迷うことなく一直線に駆ける。
「なっ!?」
認識阻害の能力者が慌ててその場から飛び退いた。
「本当にいやがった!」
「僕にもほとんど見えてないけどね。」
「じゃあ何見てんだよ!」
「影だよ。」
「なるほどな!」
魁斗は楽しそうに笑うと、再び優雅が示した方向へ距離を詰める。
その動きに合わせ、優雅も反対側から回り込んだ。
「逃げ道塞ぐよ!」
「任せろ!」
二人に挟まれた能力者が一瞬動きを止める。
その隙に、朔の拳が背後から叩き込まれた。
『ぐぁっ!』
「2人目!」
綾が倒れた男を確認しながら声を上げる。
残った三人。
自己加速、身体硬化、そしてまだ能力の分からない一人。
「さて。」
優雅は小さく息を吐きながら、残った三人へ視線を向けた。
「さっさと片付けるよ。」
「そうだなぁ!」
魁斗は拳を鳴らしながら、不敵に笑った。
その瞬間、自己加速の能力者が一気に距離を詰めてくる。
「魁斗、左!」
「おう!」
優雅の声に合わせ、魁斗が身体を横へ滑らせた直後、男の蹴りが目の前を通り過ぎる。
「さっきから見てたけど、速くなる直前に必ず一回踏み込んでるね。」
「だから何だよ!」
自己加速の能力者が再び地面を蹴る。
「次、右。」
優雅が呟くと直後に男が優雅の言葉通り右側から飛び込んできた。
『なっ……!』
「速くても、踏み込む時の癖が分かれば追えるよ。」
待ち構えていた魁斗が男の腕を掴む。
「捕まえた!」
勢いをそのまま利用し、床へ叩きつける。
『ぐぁっ!』
「3人目!次は硬い奴だな!」
魁斗が声を張り上げた直後、朔が身体硬化の能力者へ向かって走り出した。
身体硬化の能力者は両腕を構え、その攻撃を真正面から受け止める。
『効かねぇよ!』
「だろうな!綾!」
「ああ!」
背後へ回り込んでいた綾が身体硬化の能力者の膝裏を蹴り抜く。
「っ!?」
体勢を崩した瞬間、朔がそのまま身体硬化の能力者の肩を掴み、勢いよく床へ倒した。
「硬くなったところで、体勢崩されたら意味ねぇだろ。」
「魁斗!」
「任せろ!」
魁斗は倒れた身体硬化の能力者へ向かって勢いよく跳び上がる。
『なっ――!』
男が起き上がるより早く、魁斗は力いっぱい叩き込んだ。
『がっ……!』
凄まじい衝撃とともに、男の身体が再び床へ強く叩きつけられる。
そのまま男は力なく動かなくなった。
「4人目!」
残るは一人。
最後の能力者は四人の動きを見ながら、ゆっくりと構えた。
「……こいつは?」
魁斗が眉を寄せる。
「多分、動体視力を上げるタイプです。こっちの攻撃を全部見切ってきます。」
「へぇ。」
優雅は一瞬だけ考えると、三人へ視線を送った。
「じゃあ、見捌けないくらい一気に行こうか。」
「雑じゃねぇ?」
「魁斗に言われたくないなぁ。」
「うるせぇ!」
「じゃあ……、行くよ!」
言い合いながらも、四人は同時に地面を蹴った。
正面から魁斗。
右から朔。
左から綾。
そして僅かに遅れて、優雅が背後へ回り込む。
『っ……!』
能力者は魁斗の拳を避け、続けて朔の蹴りも受け流し、綾の攻撃も瞬時に捌いた。
しかし——。
「後ろ。」
『なっ……!』
振り返るより早く優雅の蹴りが背中へ直撃し、大きく体勢を崩したところへ、魁斗が一気に距離を詰めた。
「終わりだ!」
拳が男の腹部へ深く入り、そのまま床へ崩れ落ちる。
「5人目!」
しばらく静寂が流れた。
「……これで終わりだね。」
優雅が肩の力を抜く。
朔も大きく息を吐くと、改めて優雅と魁斗へ視線を向けた。
「……それにしても、優雅さん。本当にお久しぶりです。」
それから隣にいる魁斗へ視線を移す。
「魁斗も久しぶりだな。」
「だね。こんな状況で再会するとは思わなかったけど。」
「というか、優雅さんはどうしてここに?……魁斗、お前も。西影衆に戻ったって話は聞いてましたけど、今日来るなんて聞いてませんよ?」
「僕たちも急に呼ばれたんだよ、翠ちゃんから。まぁいつも急なんだけどね。」
「翠さんが?」
綾が僅かに眉を寄せる。
「うん。東條が西園寺の派閥を一斉に襲ってるって分かって、僕たちもそれぞれの場所に向かうことになったの。」
「なるほど……。」
朔はそう呟きながら、床に倒れている五人へ視線を落とした。
「こいつらは殺さないでいいんですか?」
「うん、殺さないで。翠ちゃんが後から能力を回収しに来るから。」
綾は短く頷くと、倒れた能力者たちの方へ歩き出した。
「分かりました。なら、こいつらの拘束とここに残ってる連中の処理は俺たちでやります。」
朔もその隣へ並ぶ。
「優雅さんたちは、まだ回るところがあるんですよね?」
「うん。」
「ならここは僕たちに任せて、早く行ってください!」
優雅は一瞬二人を見たあと、小さく笑った。
「久しぶりに会ったのに、もうお別れですね。」
「残念だけど、今は仕方ないね。」
優雅は呆れたように笑う。
「全部終わったら、またゆっくり話しましょう。」
「話すよりも訓練だろ!」
既に出口へ向かっていた魁斗も、二人へ振り返る。
「相変わらず訓練かよ。」
綾は変わらない魁斗の様子に、思わず苦笑した。
「じゃあここよろしくね。」
「ああ。お前も無茶すんなよ。」
「お前らもな!」
久しぶりの再会を惜しむ暇もなく、優雅と魁斗は再び次の場所へ向かって走り出した。
翠side
——数日前
翠は誰にも気づかれないように、一人で東條の施設へ潜り込んでいた。
薄暗い通路を進みながら、周囲の気配を探る。
……残りの時間で東條を潰すなら、もう少し情報が欲しい。
施設の構造、構成員の数、研究施設の位置、能力者の増加状況。
何より、東條が今どこまで能力の研究を進めてるんだろう。
自分に残されている時間を考えれば、悠長に探っている余裕はない。
それにきっと止められちゃうから、四人にはこの潜入のことを伝えてない。
……早くみんなのところを離れる準備をしないと。
なんて……考えれば考えるほど、すごく胸がズキズキする。痛くて痛くて仕方ない。
でも今はこんな自分の感情のことより、周りに集中しなきゃ、見つかったら元も子もない、ちゃんと切り替えよう。
翠は物陰へ身を隠しながら、奥から聞こえてくる声に足を止めた。
『例の薬、完成したらしいな。』
『能力開花の?』
『ああ。今までみたいに実験体を誘拐して確保する必要もないらしい。』
完成した……?
『既存の構成員に打っても問題ないところまで来たって話だ。まぁ能力者にしてもどんどん減らしてく奴がいたらしいからな。研究員も脅されてたみたいだし、総長もだいぶ焦ってたんだろ。』
『最近になってものすごい勢いで能力者を減らしてた奴だよな?そりゃ焦るわ。じゃあ徐々に能力者を増やしていくのか?』
『その予定らしい。なんならすでに幹部の方々は能力者になってるらしいぞ。それに元から戦える奴に能力まで付けば、かなり戦力が上がるだろ。』
『そりゃそうだ。……にしても幹部の方々が。薬打つなんて、正直怖いけどな。』
男たちは周りを気にせず大きな声で話しながら、そのまま廊下の奥へ消えていった。
翠はしばらくその場から動かなかった。
……能力を開花させる薬。
これまで東條が能力の実験に使っていたのは、一般人や実験体ばかりだった。
けどさっきのやつらの話だと既に戦闘訓練を受けている構成員に、そのまま能力を与えられる段階まで来てる。
なんなら幹部レベルの奴が能力者になってるとなると、かなり厄介だな。
「……研究、思ってたより進んでるなぁ。」
翠は小さく呟く。
その後も施設内を探り続けた。
——現在
この前潜入した時、西園寺の派閥へ一斉に攻め込む計画について、一つも見かけなかった。
翠は目の前に倒れている能力者へ視線を落とした。
「……やっぱり。」
今回現れた能力者たちは今までの能力者より、明らかに戦い慣れている。
能力に頼っているだけではない。
間合いの取り方も、攻撃の受け方も、動きそのものが違う。
「この前聞いた話……もう始まってるんだ。」
東條の構成員に、能力の薬を打つ。
知性も感情も失ってない能力者がどんどん増えているなら、今後西影衆でも東條に張り合えなくなるかもしれない。
それに自分が死んだら能力を消せる人が一人もいなくなってしまう。
もし今後死んだ人でも能力因子が生き続けるなら、死んだやつも動かして使い続けるかもしれない、……そうなったら本当にタチが悪いし、今後本当に手が追えなくなってしまう。
なら死ぬまでに自分の手で終わらせないと、……でも全員の能力を吸収しないといけない。
まだどれくらいの能力者がいるんだろう。きっと今回だけでも相当な数がいる。
「……ははっ、こりゃ死期早まっちゃうなぁ。」
翠は乾いた笑みを浮かべながら、倒れている男の頭へ手を伸ばした。
記憶を覗くと流れ込んできたのは、東條の施設で訓練をする姿、構成員として任務を受ける姿。
そして、薬を投与され、能力を得た記憶。
「……。」
静かに手を離し、能力を吸収すると、そのまま男の命を絶った。
そして次の人の元へ移動して、記憶を覗いた。
「……この人は違う。」
流れ込んできたのは、普通の生活を送っていた記憶。
そして突然日常を奪い去られ、薬を打たれて能力を与えられ、無理矢理戦わされた記憶。
翠は能力だけを吸収すると、男の記憶へさらに深く干渉し、東條に関すること、能力を与えられたこと、戦わされたこと、この人にとって不要な記憶を消して、精神へ残っている干渉も解いていく。
「この人は殺さないで。」
近くにいた西影衆の構成員が戸惑ったように翠を見る。
「東條の人じゃないから。目が覚める前にうちの病院に連れて行って。」
「分かりました。」
翠は立ち上がると、今度は倒れている西影衆の構成員たちへ向かった。
「怪我してる人は、動かないで。」
回復をかけながら携帯を取り出す。
画面には各地の状況が次々と更新されていた。
制圧済み。
交戦中。
連絡なし。
「……ここの後始末お願いね。」
翠は回復を終えると、立ち上がり、先ほど吸収したばかりの能力を発動した。
次の瞬間、その姿が消える。
——別の拠点。
既に戦闘は終わっていて、意識を失った能力者たちが、拘束された状態で並べられている。
「翠さん!」
「そのままで大丈夫だよ。」
翠は一人目の傍へしゃがみ込んだ。
”記憶を見る、東條の構成員、能力を吸収、殺す”
二人目も同じ。
三人目。
「……違う。」
”能力を吸収し、記憶を消す”
「この人は病院に連れてって。」
それだけ告げ、再び移動する。
次の場所は、まだ戦闘中。
翠が姿を現すと、周囲にいた西影衆の構成員たちが驚いて振り返った。
「翠さん!?ここまだ終わって——。」
「大丈夫。」
複数の能力を同時に発動させる。
数秒後、その場に立っている東條側の人間はいなくなっていた。
瀕死の能力者たちを順番に確認していく。
”吸収、記憶確認、処理”
”吸収、記憶確認、記憶操作”
負傷者を回復し、また次へ。
制圧済みの場所、戦闘中の場所、どちらも関係なく、翠は次々と回り続ける。
現れて、制圧して、能力を奪い、記憶を見る。
”東條の構成員なら殺す”
”巻き込まれただけの人間なら、能力と東條に関わる記憶を消して戻す”
そして味方を治療し、また消える。
……四人には、制圧された場所を回って能力を回収するとしか伝えていないけど、でも……それだけじゃきっと能力者の対応をしきれない。
今回対応に出てるほとんどの隊が実力はあっても、能力者の任務に当たったことがない。
もし私が西園寺にいるせいで誰かが死ぬなら、私なんて最初からこの世に存在するべきじゃなかった。
まして、大事な人たちが、……四人が死ぬなんて、絶対にだめだ。
だったら私の寿命なんか気にするべきじゃない。
携帯へ目を落とすと、まだ戦闘中の場所はいくつも残っている。
「……あー!本当に面倒な奴らだな!」
翠は東條への怒りを露わにしながら、携帯で次の場所を確認した。
吸収した能力の数も、既にかなり増えている。
頭が重い、指先にも僅かな痺れが残っている。
目を閉じて、全身を隅々まで巡らせるように大きく息を吸う。
「……まだいける。」
次の瞬間、翠の姿は再びその場から消えていた。
今話もお読みいただきありがとうございます!
次話もお時間ありましたら、お読みいただけますと幸いです。




