第14話
お久しぶりです!しばらく更新が空いてしまってすみません……!
今回はまとめて更新です!
【反撃】
「こいつで終わりだ。」
黎が目の前の能力者を気絶させた後、ポツリと呟いた。
「いや〜、今回も人数多かったね。ちょっと疲れちゃったかも。ふわぁ〜……。」
湊は大きくあくびをして座り込んだ。
「翠、お前ほんと衰えねぇな。」
「本当にね〜、一週間休んでたとは思えないくらいいつも通りだよね。……翠ちゃん?まさか入院中に暴れ回ってたわけじゃないよね??」
優雅は翠をじーっと見つめた。
「え、そんなわけないじゃ〜ん。まさか?私が?みんなとの約束を破る?んなバカな〜。」
「そうだよね?僕もそうだって信じてるよ?翠ちゃんだもんね?」
優雅は翠に詰め寄ると、そっと顎に手を添え、自分と目が合うように顔を上向かせた。
翠は視線が合わないように、ずっと横を見続けている。
優雅は一向に自分を見ようとしない翠に、そっと触れるだけのキスをした。
翠はそれでも視線を合わせようとはせず、頑なに横を向き続ける。
ただ、その顔だけはみるみる赤く染まっていく。
「あ〜あ、こっち見ないかぁ。」
優雅はそんな翠を見て、おかしそうに笑った。
「翠ちゃんと優雅くんがイチャイチャしてるよ〜。」
湊は座りながら、両手で作った望遠鏡で翠と優雅を覗き込んでいる。
「あ……。」
魁斗は口を開けたままほけーっとしていて、顔は茹蛸のように真っ赤になっている。
「…………。」
黎は無言のまま二人をじっと見つめている。
「ま!任務も終わったし、そろそろ帰ろっか!」
優雅はパッと切り替えると、翠の頭を撫でながら声をかけた。
「……あ、うん。」
五人は車に乗り、帰路についた。
運転席には魁斗、助手席には翠が座り、後部座席には黎、湊、優雅の三人が並んでいる。
「今日も相変わらず敵多かったね〜。」
翠は窓の外を眺めながら、少し疲れたように息を吐いた。
「ほんとな。腹減った。」
魁斗は運転をしながら答える。
「魁斗くん任務終わると毎回それ言ってない?それで何食べたいか聞くと、いつも肉って答えるの。」
「動いたんだから減るだろ。そんなことねぇよ。」
「じゃあ今日の夜ご飯どうする?何食べたい?」
「俺肉。」
間髪入れずに答えた魁斗に、湊は呆れたように笑った。
「ほら、やっぱり。」
「別にいいだろ!」
「任せる。」
黎が短く答える。
「僕も何でもいいかな〜。あ、でも今日は結構動いたし、がっつりしたの食べたいかも。」
「うわ〜、それ一番困るやつだよ〜。」
「……肉でいい。」
「魁斗くんと一緒じゃん!」
「ほら見ろ。肉は美味いんだ。」
魁斗はどこか得意げに口元を緩めた。
「なんでお前が得意げなんだよ。」
「じゃあ翠ちゃんは?何食べたい?」
「…………。」
翠からの返事はなく、湊が後部座席から助手席を覗き込んだ。
「翠ちゃん?」
いつの間にか翠は窓にもたれたまま、静かに眠っていた。
「……寝てる。」
その言葉に、魁斗も信号待ちの隙にちらりと隣へ視線を向けた。
「あれだけ元気に動いてたのにな。」
「過労で倒れたばっかだしね。本人は元気そうにしてても、身体はまだ疲れてたのかも。」
優雅は眠っている翠を見ながら、少しだけ心配そうに眉を下げた。
「帰ったら起こすか。」
魁斗がそう言うと、湊も小さく頷いた。
「そうだね。じゃあ翠ちゃんが喜びそうなの、みんなで決めよっか。」
「翠は肉だろ。」
魁斗が当然のように言い切る。
「魁斗が食べたいだけじゃん。」
湊が呆れたように笑うと、魁斗は少しむっとした顔をした。
「うるせぇ。」
そんな他愛ないやり取りを続けながら、車はいつもの家へと向かって走っていった。
それから三か月。
五人は東條の拠点を徐々に潰しながら、これまでと変わらず任務をこなしていた。
五人揃って動く日もあれば、それぞれ単独で任務に向かう日もある。
しかし、ここ半月ほど、四人は翠の様子に明らかな違和感を覚えるようになっていた。
「……俺、翠を一人で任務に行かせるの反対だからな。」
突然そう言い出した魁斗に、三人が視線を向ける。
「僕も。」
優雅はすぐに同意した。
「この前だって任務中に倒れかけてたし、一人で行った時だけ妙に帰りが遅い日も増えてる。」
「最近、家に帰ったらすぐ寝ちゃうことも多いよね。」
湊も心配そうに眉を下げる。
「話しかけても全然気づかない時あるし……。」
「あぁ。本人は大丈夫だと言っているが、もう信用できない。」
黎の言葉に、魁斗は大きく頷いた。
「そうなんだよ。今まではあいつが『大丈夫』って言うから任せてたけど、流石にもう無理だろ。」
「一人の時に倒れられたら、僕たちじゃどうしようもないし。」
「でも翠ちゃん、絶対嫌がるよ?」
「嫌がろうが関係ねぇよ!」
魁斗は苛立ったように吐き捨てる。
「何かあってからじゃ遅ぇんだよ。」
「……一度、無理矢理にでも話した方がいいな。」
黎の言葉に、三人も静かに頷いた。
「問題は、どうやって翠ちゃんを納得させるかだね。」
「正直に言って聞いてくれるかなぁ……。」
「聞かねぇだろ、あいつ。」
「だよねぇ……。」
四人が揃って黙り込んだ、その時だった。
突然、湊のスマホが鳴る。
画面に表示された名前を見て、湊は目を瞬かせた。
「……翠ちゃんだ。」
「すごいタイミングだね。」
湊はそのまま電話に出る。
「もしもし、翠ちゃん?」
『……みな?今、みんな一緒?』
いつもより低い翠の声に、湊の表情がわずかに変わった。
「うん。一緒にいるよ。どうしたの?」
『今から四人で本邸に来て。……できるだけ早く。』
その言葉に、四人の表情が一気に険しくなる。
「翠ちゃん、何かあった?」
電話の向こうで、一瞬だけ沈黙が流れた。
『……来たら話す。』
翠の声には、普段の明るさがほとんどなかった。
四人は互いに顔を見合わせる。
「……わかった。すぐ行く。」
——西園寺本邸
「おい、翠!どうしたんだよ!」
魁斗が勢いよく扉を開け、翠の元へ駆け寄る。
「……騒がしい、もっと静かに入れ。」
厳がキツく睨むように四人の方を見る。
「申し訳ありません。それで翠ちゃん、何があったの?」
優雅は厳に軽く頭を下げると、真剣な表情で翠の方へ視線を向けた。
「……これ見て。」
そう言って翠は一枚の紙を差し出した。
その紙は地図で、随所に×が書かれているものだった。
「これって……、この×の場所って、西影衆の派閥の事務所があるとこでしょ?」
湊の問いに翠は小さく頷き、少し震えた声で話し始めた。
「うん。……この×は夜中から東條の奴らに襲われて、既に潰されてるところ。」
「は……?」
「え、潰されてるって……?」
四人は信じられないように、もう一度地図へ視線を落とした。
「昨夜からほぼ同時に襲撃を受けた。」
厳が低い声で口を開く。
「既に連絡が取れない事務所もある。負傷者の数も、まだ正確には把握できていない。」
「同時にって……東條が一気に仕掛けてきたってこと?」
「おそらくな。」
湊の表情から、先ほどまでの柔らかさが消える。
優雅は地図に書かれた×印を目で追っていたが、その途中でふと動きを止めた。
「……待って。」
「どうした?」
「ここ……。」
優雅が指差した場所を見て、三人の表情が一変する。
「……嘘だろ。」
魁斗が思わず呟いた。
そこは四人がまだ西影衆にいた頃、何度も足を運んだ事務所だった。
幼い頃から戦い方を教わり、任務でも何度も助けてもらった男がまとめている場所。
そして何より、四人はその男が簡単に倒されるような人間ではないことをよく知っていた。
「……ここも、やられたのか?」
黎の声がいつもより低くなる。
翠は一瞬だけ唇を噛み、静かに頷いた。
「まだ制圧されたかは分からない。でも……安否の確認中に突然連絡が途切れてから、何も音沙汰がない。」
「……。」
部屋の空気が一気に張り詰める。
「だから、今からみんなに動いてもらいたい。」
翠は地図の上に手を置くと、四人をまっすぐ見た。
「れいれいとみな、ゆうくんとかいちゃんで別れて向かってほしい。うちの本部の人たちも随時向かって対応してるから、合流して。」
地図の上を指でなぞりながら、それぞれが向かう場所を示していく。
「それで、そこはあの人がいるから、まだ潰されていないことを信じて最後に全員で対応にあたる。」
「わかった。」
四人は翠の話に頷き、荷物をまとめ始めた。
その様子を見て、翠は表情を曇らせた。
「……みんな死なないでね。きっと能力者もたくさんいる。……絶対、絶対死なないでね。」
「こんなとこで死んでたまるかよ。」
魁斗は呆れたように答えた。
「あと、能力者はできるだけ殺さないで、動けない状態にしておいてほしい。制圧が終わったところから、私が能力を回収して回るから。」
その言葉に黎はハッとしたように顔を上げ、翠を凝視して聞いた。
「……翠、お前は。」
「え?」
「……まさか一人で回るつもりなのか?」
「まさかも何も、私は一人で回るよ。」
翠はさも当たり前のような表情で答えた。
その言葉に、四人は一斉に反対した。
「ダメだ。」
「は?」
「お前一人では行かせねぇ。」
「なんで?私はちゃんと強いよ。」
翠は少し戸惑うように四人を見回すが、誰一人として表情を緩める様子はない。
「さっきも話してたんだよ。ここ半月の翠ちゃん、明らかにおかしいって。」
「それは……さ、最近東條の動きが怪しくてずっと内密に調査を進めてたから疲れてただけだよ。ほら!この通り元気だからさ!それに早く対応しないと人手が足りないから!さっ!早く行くよ!」
翠は取り繕うように笑いながら、扉の方へ向かって勢いよく歩き始めた。
「待てって。」
魁斗は横を通り過ぎようとした翠の腕を勢いよく掴んだ。
翠は掴まれた腕に一度視線を落とすと、心配そうに自分を見つめる魁斗へ目を向けた。
「待たないよ。きっとみんながなんで止めようとしてくれてるかもわかる、。……でもごめん、今は待てない。襲われてる人たち、みんな私を大事に育ててくれた人たちなの。だから今は待てない。」
「……。」
魁斗は何か言いたげに翠を見つめたまま、しばらく腕を離そうとしなかった。
やがて諦めたようにゆっくりと手を離す。
「……絶対に無茶すんなよ。」
翠はそんな魁斗に小さく笑って頷いた。
「当たり前。」
黎、湊side
「ぐはっ!」
二人が現場に到着すると、既に西影衆の三、四番隊と東條の構成員たちが激しく交戦していた。
黎と湊は近くで戦っていた、副隊長のバッジをつけた女性の元へ駆け寄る。
「遅くなりました。状況は?」
「今ここにいるのは能力者以外の構成員だ!奥では隊長たちが能力者と交戦してる。ただ、能力者の数が多い。ここは私たちでなんとかするから、奥を頼む!」
「了解。」
状況を確認すると、黎と湊はすぐさま戦場を駆け抜け、奥へと向かった。
「早く終わらせるぞ。」
「うん。翠ちゃんが心配だもん。」
二人は奥へ進んで行き、徐々にひらけた部屋へとたどり着いた。
そこでは二人の男と、五人の能力者が激しい戦闘を繰り広げていた。
「恭介さん!後ろ!」
「え、やべっ!」
湊の声に振り返った恭介だったが、死角から迫っていた攻撃を避けきれず、咄嗟に腕を構えた。
しかし攻撃が届くより先に、間へ飛び込んだ黎が相手の腕を掴む。
「っ!」
そのまま勢いよく身体を引き寄せ、腹部へ一撃を叩き込んだ。
「黎!?」
「話は後だ。」
黎が短く答えた直後、今度は別の能力者が湊へ向かって駆け出した。
「湊、そっち!」
尚人の声に、湊はすぐさま振り返る。
「わかってる!」
振り下ろされた拳を避け、そのまま懐へ潜り込む。
しかし反撃しようと腕に力を込めた瞬間、身体から一気に力が抜けた。
「……っ!?」
湊の拳が僅かに鈍る。
その隙を狙い、能力者の蹴りが腹部へ直撃した。
「湊!」
吹き飛ばされた湊は床へ手をつき、すぐに身体を起こす。
「大丈夫。……でもこれ、力入らないなぁ。」
「筋力を落とす能力だ!」
恭介が声を上げる。
「そいつだけじゃない!痛みを増幅させる奴と、反応を遅らせる奴もいる!」
「なるほどね……。」
湊は腹部を押さえながら立ち上がり、目の前の五人を見回した。
「思ったより面倒そうだね。」
「だから早く終わらせる。」
黎はそう言うと、再び能力者たちへ向かって走り出した。
正面にいた男が黎に向かって拳を振り抜く。
黎はそれを紙一重で避け、そのまま懐へ潜り込もうとした。
「……っ。」
しかし一瞬、身体の反応が遅れる。
その僅かな隙を逃さず、男の拳が黎の頬を掠めた。
「黎くん!」
湊が声を上げる。
黎はすぐに距離を取ると、能力者たちを鋭く見回した。
「反応を遅らせてるのは……あいつか。」
視線の先には、他の四人より少し後ろに下がり、こちらの動きをじっと見ている男がいた。
「わかるの?」
「あいつだけ、俺が動く直前に必ずこっちを見てる。」
黎が男へ向かって走り出す。
しかし、その進路を遮るように別の能力者が飛び込んできた。
『行かせねぇよ!』
振り下ろされた拳を、黎は咄嗟に両腕で受け止める。
「っ……!」
重い衝撃に、身体ごと数歩後ろへ押し戻された。
「身体強化か。」
腕に残った鈍い痺れに、黎は僅かに眉を寄せる。
その感覚に、ふと最近の記憶が頭をよぎった。
——任務のない日、五人でいつものように訓練をしていた時。
「れいれい、いくよ!」
身体強化をかけた翠が地面を蹴り、一気に黎との距離を詰める。
振り抜かれた拳を両腕で受け止めた瞬間、想像以上の衝撃が身体を突き抜けた。
「……翠。」
「ん?」
「それ本気か?」
「え、ほ、本気だよ〜?」
「嘘つけ。」
少し離れた場所では、湊と優雅が笑い、魁斗が「次俺な!」と声を上げていた。
翠の拳を受け止めた時の鈍い痛みが腕に蘇り、今受けた痛みを上書きした。
……はっ、翠の方が重いな。
黎は目の前の男を見据えると、再び拳が振り抜かれる寸前で身体を横へ滑らせた。
『なっ……!』
翠との訓練で何度も見てきた。
身体能力がどれだけ上がっても、動きを出す直前の癖まで消えるわけではない。
黎は男の懐へ潜り込むと、勢いのまま腹部へ拳を叩き込んだ。
『ぐっ……!』
男の身体が大きくよろめく。
「黎くん!背中貸して!」
湊の声に黎はその場で身体を低くした。
直後、頭上から別の能力者が勢いよく降下してくる。
湊は駆け出した勢いのまま、黎の背中へ片足を乗せ、黎が身体を起こすのと同時に強く地面を蹴る。
『なっ!?』
一気に距離を詰められた飛行能力者が、慌ててさらに上へ逃れようとする。
「逃がさないよ!」
湊は空中で身体を捻ると、そのまま男の脇腹へ強烈な蹴りを叩き込んだ。
『ぐぁっ!』
男の身体が勢いよく床へ落下する。
「恭介さん!」
湊の声に、恭介が素早く落下地点へ駆け込んだ。
「よくやった!」
床へ叩きつけられた能力者が起き上がるより早く、恭介の拳が顔面へ直撃する。
飛行能力者はそのまま力なく床へ倒れ込んだ。
「1人目!」
着地した湊が声を上げる。
『余所見すんなよ。』
身体強化の能力者が背を向けた湊へ拳を振り上げた。
「湊、後ろ!」
尚人が横からその腕を掴む。
「お前の相手は俺だ。」
そのまま強く腕を引き、能力者の体勢を大きく崩した。
『っ、この……!』
「黎!」
尚人の声に黎はすぐさま駆け出し、崩れた男の腹部へ先ほどと同じ場所を狙って蹴りを叩き込んだ。
『がっ……!』
身体強化された男の身体が大きく吹き飛び、壁へ激突する。
「2人目。」
残った三人を見て、湊は小さく息を吐いた。
「筋力を落とす人と、痛みを増やす人と、反応を遅らせる人……だね。」
「先に能力を止めるぞ。」
「うん。」
湊はそう答えながら、三人の動きをじっと観察する。
先ほどから筋力を落とされているのは自分だけだった。
そして能力者の男は戦闘に加わろうともせず、一定の距離を保ちながら、ずっと湊の動きを追っている。
湊は試すように右へ大きく駆け出すと、男の視線がそれを追う。
急に方向を変えても、やはり視線がついてくる。
「……そっか。」
湊はふっと笑った。
「この能力、ずっと見てないと使えないんだ。」
『っ!』
図星だったのか、男の表情が一瞬強張る。
「なら簡単だね。」
湊は一気に男との距離を詰めた。
『来るな!』
男は慌てて後ろへ下がって、すぐに構え直し、湊の拳を腕で受け止めた。
「やっぱり……。」
『何笑ってやがる!』
「いや、今までの能力者よりちゃんと戦えるなって。」
湊が僅かに目を細める。
「お前ら、元から東條の構成員?」
男の表情が一瞬だけ変わった。
その一瞬で湊は男の腕を払い、そのまま足をかけて床へ倒す。
『ぐっ!』
視線が外れた瞬間、湊の身体に力が戻った。
「やっと動きやすくなった。」
今度は迷わず拳を振り下ろす。
打撃を喰らった男はそのまま意識を失った。
「3人目!」
一方、黎は残る二人のうち、反応を遅らせる能力者へ向かっていた。
黎が右へ動けば、男の視線も右へ動く。
左へ踏み込む素振りを見せれば、僅かに身体が反応する。
「……お前も見てる時だけなんだな。」
黎は突然足を止めた。
『何を――。』
「恭介。」
黎が呼んだ直後、恭介が反応遅延の能力者へ背後から蹴りを叩き込んだ。
『がっ!』
「ここにいんのはお前らだけじゃねぇぞ。」
能力者が咄嗟に恭介を振り返る。
その瞬間、黎は地面を勢いよく蹴る。
能力の対象から外れた身体が一気に本来の速度を取り戻し、黎の拳が男の顎を正確に捉えた。
『っ……!』
そのまま男は床へ崩れ落ちる。
「あと1人。」
最後に残った能力者が周囲を見回すと仲間は全員倒れていた。
『くそっ……!』
男が手をかざした瞬間、尚人が突然顔を歪め、膝をつく。
「っ……!」
「尚人さん!」
湊が駆け寄ろうとする。
「来るな!」
尚人はそう叫ぶと、痛みに顔を歪めながらもゆっくりと立ち上がった。
「この程度で動けなくなると思うなよ……!」
そのまま能力者へ一直線に突っ込む。
『なっ――。』
一発目を避けられる。
それでも尚人は止まらず、二発、三発と拳を繰り出した。
能力者は攻撃を避けながら、徐々に後ろへと追い込まれていく。
「恭介!」
「ああ!」
恭介が後ろから回り込み、能力者の膝裏を思い切り蹴っ飛ばした。
「今だ!」
黎と湊も同時に駆け出した。
「終わりだ。」
姿勢を崩したまま、三人から一斉に詰められた能力者は攻撃を捌ききれず、そのまま床へ倒れ込んだ。
しばらく誰も動かない。
静まり返った部屋の中で、湊が大きく息を吐いた。
「……終わったぁ。」
「まだだ。こいつらを拘束する。」
黎は倒れている五人へ視線を向ける。
「あ、そうだった。翠ちゃんが回収しに来るんだもんね。」
「ったく……。」
恭介は軽く息を整えながら、改めて黎と湊へ視線を向けた。
「久々に顔見せたと思ったら、相変わらずだな、お前ら。」
湊はその声に振り返ると、ようやくいつもの柔らかい笑みを浮かべた。
「恭介さんも尚人さんも元気そうでよかったです。」
尚人は傷だらけの身体を見下ろし、呆れたように笑った。
「これのどこが元気に見えるんだよ。……まぁ、お前らが西影衆に戻ってきてくれてよかったよ。」
張り詰めていた四人の空気が、ようやく少しだけ緩んだ。
不定期更新になりますが、今後ともお読みいただけますと幸いです。
また、今回は3話続けての更新となります。
お時間ありましたら、お読みいただけますと幸いです。




