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普通になれない僕らへ  作者: 遙
第四章【異変】

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第13話

それから一週間、翠は西園寺の本邸で療養することになった。

四人は任務があるにも関わらず、毎日欠かさず翠のお見舞いに来てくれた。

その中でも魁斗は、なぜか毎日帰り際になると翠に抱きついてくる。

「翠、また明日な。」

「うん!また明日!」

「……。」

「……?」

ぎゅっと抱きしめたまま、一向に離れようとしない魁斗に翠は首を傾げる。

「かいちゃん?」

「……もうちょい。」

「いいけど……。」

(最近かいちゃん、どうしたんだろう?まさか、これは末っ子らしさの現れか!?だとしたら可愛いなぁ!)

そんなことを思いながらも、翠は大人しく魁斗に抱きしめられていた。

四人と過ごす時間以外は、東條についての情報を整理したり、これからの作戦を考えたりと、残された半年でできることを少しずつ進めていった。

そして四人が帰ったあとには、いつか必要になるかもしれない四人に宛てた手紙を書き進め、見つからないよう大事にしまっていた。

雪とも毎日顔を合わせた。

翠が頻繁に病室を訪れて話しかけていたこともあってか、初めて会った頃よりも雪の表情は少しだけ柔らかくなり、時折笑顔を見せてくれるようにもなった。

そんなある日、翠は雪に一枚の真っ白な封筒を渡した。

「雪ちゃん、この前の話の件でさ、これ持っててほしいの。」

「……これは?」

「みんなにもしかしたら必要なもの、かな?いつか雪ちゃんが『今だ』って思った時に、みんなに渡してほしいんだ。」

「……わかりました。」

「ありがとう!」

雪はまだ理由を聞かなかった。

翠も、それ以上のことは話さなかった。

そうして四人と過ごし、雪と話し、一人になればこれからの準備を進める日々を繰り返しているうちに、一週間はあっという間に過ぎていった。


「退院で問題ありません。今後ともご無理はなさらないように。」

「やったー!これで任務に復帰できるー!!」

翠は医者の言葉を聞いて、全力で拳を突き上げた。

「おー!」

翠の反応に湊は拍手をしながら大喜びした。

「私はこれで失礼いたします。」

医者が部屋から出たあと、翠は満面の笑みで四人を見た。

「ここで私から報告です!本日をもちまして、雪ちゃんも退院が決まりました!」

「お〜!」

翠の報告に、四人は嬉しそうな反応を見せた。

「雪ちゃんは退院した後、西園寺で暮らしてもらうことになったんだけど……あとで伝えないと!」

「まだ伝えてないのかよ。」

魁斗は呆れたように翠を見た。

「さっき話して決まったからね。体調も大丈夫そうだし、だいぶ元気になったから、そろそろ学校に通うのもいいのかなって話になってね。」

翠が今後のことを話すと、黎は少し考えるように頷いた。

「いいんじゃないか。翠は今後も様子見に来るんだろう?」

「もちろん!せっかく仲良くなったし、妹みたいで可愛いし!」

翠は満面の笑みで答えた。

「いいね。僕たちも仲良くなれるように頑張らないと。」

「ぜひぜひ仲良くなってくださいな〜。」

楽しそうに話す翠たちを見ながら、優雅はふと疑問に思ったことを口にした。

「西園寺で預かるということは、もしかして身元が判明してないの?」

その言葉に、翠は少しだけ表情を曇らせた。

「いや、身元は分かってるんだけど。……もういないんだよね、雪ちゃんのご両親が。」

先ほどまでの明るい空気が少しだけ静まる。

「そっか、詳しく聞いても大丈夫?」

「うん、でも雪ちゃんに伝える予定は今のところないから、秘密でお願いね。」

「あぁ、当たり前だ。」

「……調べてもらったら、雪ちゃんが6歳の時、家族で交通事故に遭ったみたい。ご両親はその時に亡くなったみたい。ただ……。」

翠は一度言葉を止めたあと、静かに続きを話した。

「その事故は東條の上層部のやつが乗ってた車で、悪いのも東條の方だったんだけど、雪ちゃんの家族に罪を擦りつけて、そのまま雪ちゃんを連れ去ったみたい。」

「それで、実験体にされたんだね。」

「……そう。だから、もう、帰る家族がいないんだよ。」

翠の言葉に、四人はしばらく何も言わなかった。

「そうだったんだ。それで西園寺で預かることにしたんだね。」

「うん。……だからみんなも仲良くなって、妹みたいに接してあげてほしいな。」

「当たり前だ。……クソっ、東條のやつ本当に許さねぇ。」

魁斗は苛立ちを隠すことなく吐き捨てた。

「まぁまぁ、東條のことは置いといて、せっかく雪ちゃんも退院決まったんだし、そこはお祝いしてあげようよ!」

「そうだな。」

翠の言葉で、少し重くなっていた空気が再び明るさを取り戻す。

「うん!じゃあまず、雪ちゃんに退院のこと伝えてあげよう!」

「じゃあ俺ケーキでも買ってくるわ。」

魁斗はそう言うと、さっそく店を探すためにスマホを取り出した。

「じゃあ僕も外でプレゼント買ってこようかな!何がいいかな?お洋服とか?」

「髪飾りとかもありかもな。」

魁斗が何気なく口にすると、翠がすぐさま反応した。

「お!かいちゃん、女の子の好きなものわかってる〜!」

「……うるせぇ。」

翠がニヤニヤしながら魁斗の顔を覗き込むと、魁斗は逃げるように顔を逸らした。

「かいちゃん顔真っ赤!」

「う、うるせぇえ!」

二人のやり取りを眺めていた黎が、呆れたようにため息をついた。

「あはは!じゃあ私たち3人は何か飾れそうな装飾でも作ろ!」

翠は楽しそうに笑うと、黎と優雅の二人に視線を向けた。

「もちろん!」

優雅も笑顔で頷く。

「何作ろう?折り紙のペーパーチェーンとか?」

翠が指を折りながら考えていると、優雅も少し考えるように顎へ手を添えた。

「いいね!他にも作る?風船とかあるとパーティーっぽいのかな?」

「お、いいね!じゃあそれ作って、時間あったら他にも作ろう!」

「そうだね。せっかくだし、雪ちゃんを呼ぶまでにできるだけ飾っておこうか。」

「うん!れいれいも大丈夫?」

二人から視線を向けられた黎は、静かに頷いた。

「あぁ、大丈夫だ。」

「じゃあ決まり!」

話がまとまったところで、魁斗はスマホをポケットにしまった。

「俺らもそろそろ行ってくるわ。」

「はーい!気をつけて〜!」

魁斗が病室の出口へ向かうと、湊もその後を追う。

「行ってきま〜す!」

湊はいつもの明るい笑顔で手を振り、翠も大きく手を振り返した。

二人を見送ったあと、翠たちはさっそく飾り付けの準備を始めた。

翠が昔住んでいた部屋から折り紙を持ってきて、三人でペーパーチェーンを作っていく。風船も用意してもらい、翠の病室を少しずつパーティーらしく飾っていった。

買い出しに出ていた湊と魁斗も戻り、準備が整ったところで雪を病室へ呼び、用意したケーキやプレゼントを囲んで、ささやかな退院祝いが始まった。

突然のお祝いに最初こそ戸惑っていた雪も、翠たちに囲まれているうちに少しずつ緊張が解けていった。

パーティーの途中、翠から改めて退院が決まったことや、これからは西園寺で暮らすこと、体調が落ち着けば学校にも通えるかもしれないことを聞くと、雪は驚きながらも、どこか嬉しそうな表情を見せた。

その後もケーキを食べたり、プレゼントを受け取ったりしながら楽しい時間を過ごし、最後には何度も「ありがとうございます」と笑ってくれた。

そうして賑やかな時間を過ごしているうちに、退院祝いはあっという間に終わりを迎えた。

パーティーを終え、雪とは西園寺で別れたあと、翠たち五人は久しぶりに自分たちの家へと帰った。

「ただいま〜!」

玄関を開けるなり、翠は嬉しそうに家の中へ入っていく。

「やっぱり家って落ち着く〜!」

「一週間しか離れてないけどね。」

「あはは、確かに!」

楽しそうに笑う翠を見ながら、四人はどこか意味ありげに顔を見合わせた。

「……そういえば、あれ渡さないの?」

湊が思い出したように口にすると、翠は不思議そうに振り返った。

「あれ?」

「誰が渡す?」

「え、なになに?」

湊の問いかけに、四人は一瞬だけ顔を見合わせる。

「魁斗でいいんじゃない?そもそも言い出したの魁斗だし。」

優雅がそう言うと、魁斗は露骨に嫌そうな顔をした。

「はぁ!?別に誰でもいいだろ!」

「でも、かいちゃんが言い出したんでしょ?」

「翠ちゃんもこう言ってることだし、お願いしま〜す。」

「お前ら……。」

楽しそうに笑う三人に囲まれ、魁斗は諦めたようにため息をついた。

「……翠。」

「ん?」

魁斗は少し気まずそうに視線を逸らしながら、小さい箱を翠へ差し出した。

「これ。」

「え、私に?」

「……おう。」

翠は首を傾げながら箱を受け取り、ゆっくりと蓋を開ける。

中に入っていたのは、小さな緑がかった宝石がついたネックレスだった。

「わぁ……!綺麗!」

目を輝かせる翠を見て、魁斗は少しだけ表情を緩める。

「それ、五人分あるんだ。」

「五人分?」

「……五人で、お揃いでつけたいと思って。」

「え!」

翠が顔を上げると、四人はそれぞれ自分の首元を見せた。

そこには、箱の中にあるものと全く同じネックレスが下がっていた。

「ほんとだ!みんな同じ!」

「魁斗が、五人で同じものを持ってたらいいんじゃないかって言い出したんだよ。」

「おい!余計なこと言うな!」

「え〜!かいちゃんが!?」

嬉しそうに顔を覗き込んでくる翠から逃げるように、魁斗は再び顔を逸らした。

「……いいだろ、別に。」

「あはは!うん、嬉しい!ありがとう、かいちゃん!みんなも!」

翠はもう一度ネックレスを見つめると、大事そうに両手で包み込んだ。

「私もつける!」

「……おう。」

そうして翠もネックレスを身につけ、五人の首元にはお揃いの緑がかった宝石が並んだ。

投稿遅くなりました!

今回もお読みいただきありがとうございます!

病室でパーティーなんて非常識なのでは!?と思われるかもしれませんが、ここは西園寺の本邸内にある病室なので、一般の患者さんが利用する場所ではありません。ご安心ください!

次回もお時間がありましたら、お読みいただけますと幸いです!

よろしくお願いします!


P.S.

近いうちに別作品を一気に投稿する予定です。

もしよろしければ、ぜひそちらもお読みいただけると嬉しいです!

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