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第82話 整列

「動きましたね」


 ユージンは魔遠鏡を見ながら隣にいるギュンターに声を掛ける。


「そうだな。敵は軍を5に分け、3つの軍団を前面に出している。戦術も何もない。力で押し通す気だな」


 当然そこには策など講じなくとも勝てる絶対的な数の差があるわけだが……。


「軍中央の先頭にいるのは……魔導士部隊の様ですね。あれがペドロヴィア上級騎士の言っていたエムレバートなる人物が率いる隊でしょうか?」

「間違いなくそうだろうな。ルイン将軍は……いや、ルインの魔法は貴金属をも砂に変える力を持つ。早急に一掃しなければこの城壁が持たん」


 帝国は3つの軍団を横並びに配置しており、残り2つの軍団を3つの軍団のうちの中央にある軍団の後ろに、縦に並ぶように配置しいる。そしてゆっくりアバディン北城壁に近づいてくる。


 前3つを率いるのはおそらく将軍。そして最後尾は予備兵力だろう。


 そうなれば皇太子がいるのは中央真中。皇太子がいる場所にたどり着くには、中央の軍団約6万の軍勢をかき分けて突破しなければならない。


 此方は一万の兵を城壁の防衛に回す為7万で中央を突破する必要がある。


 だが中央を突破するにあたり、左右の軍団が回り込み挟み撃ちにする構図は容易に想像できる。つまりこの戦いは、挟み込まれた兵がすり潰される前に中央突破し、皇太子を討つ必要があるということだ。


 普通に考えれば不可能。しかしギュンター、シリウスはじめ諦めている騎士は誰一人いなかった。


「問題は、騎士以外の兵の士気がどれほど維持できるかですよね」

「そこは問題なかろう。5年間ただ飯を食らっていたのだからな、」


 なにが問題ないのかユージンには分からなかったが、ギュンターがそういうならそうなのだろうと、思うことにした。



――



 俺は背中に大剣をクロスするように 二本背負い、左腰にはライトセイバーを右には伸縮自在の剣を下げて北の城門前に行くと、整列した兵士たちで溢れかえていた。


 兵士たちにはヘストロアの騎士のような統一した軍服ではなく、鎧を着ていたり、レザーアーマ―だったり、中にはフルプレートメイルを着こんでいる者もいる。

俺たちはどこに行けばいいのか迷っていると、ヒルダと老騎士が近づいてきた。


「お待ちしておりました。フィンゼル様、お嬢様」

「ヒルダか。俺たちはどこに並べばいいんだ?」

「はい。フィンゼル様とお嬢様、それからカトレア様は、軍団の中央でお待ち下さい。マリアさんは左師団にルーナさんは右師団となりますので、ご整列下さい」

「は? ちょっと待ってくれ。みんな一緒の部隊じゃないのか?」

「はい。そのように指示されております」

「誰に?」


 思いのほか冷たい口調になってしまった自分に驚く。


「この配置はアウクテュルス上級騎士がお決めになった事です。この戦いに勝つためにと……」


 勝つために……。シリウスがそう決めたのならおそらくこれが最善なのだろう。


 だが、これでは俺からマリアとルーナが離れてしまい、俺の手が届かなくなってしまう。彼女たちは俺が守ると誓ったのにそれが成し遂げられなくなってしまう。


 ここで俺の我儘で配置換えしてもらったら騎士の士気を下げてしまうか……?

 いや、ここはどう思われても進言するべきだ。俺は領民を守る為戦うが、それで大切な者が失われるのは耐えられない。せめて自分が守れる手の範囲内にいて欲しい。


 俺がそう口を開こうとしたのをマリアが遮る。


「フィンゼル様。私は大丈夫です。私はフィンゼル様が思っているよりか弱くないですよ」


 ふふっと笑うマリア。

 いや、弱くないのは知っているが……。


「それに、中央に籠るくらいなら外でフィンゼル様の敵を排除する方がフィンゼル様のためになりますから……」


 一瞬マリアの笑みの中に邪悪さを感じた。まるで人を殺せるのを楽しみにしているような、そんな禍々しい笑み。


 俺は身の毛がよだつ感覚に襲われる。この可愛い顔のマリアがそんな顔をする訳がない。これは幻覚だ。


 俺は心を落ち着かせ、もう一度マリアを見ると、いつもの優しいマリアの笑顔がそこにあった。やはり俺の勘違いか……。良かった……。


 マリアは先ほどのように血気盛んで、やる気十分の為、大丈夫だろう。問題はルーナの方だ。


 俺はルーナの方を見ると、ルーナの決意の籠った目があった。


「マリア様がやるのに、私一人甘えられません! 私もご主人様のお役に立てるところを見せちゃいます!」


 ルーナはそう言うが、俺は不安でいっぱいだった。マリアはなんか底知れぬ安心感というか、頼もしい強者の風格がするので大丈夫そうだが、ルーナはその天然な感じも相まって目が離せない妹のような感覚がある。この世界では歳は五つも上なんだが、成長が遅いエルフだからだろうか?


 しかし、本人がやる気を出している以上、俺がそれを遮るのはどうだろうか?

 不安だが、任せてみよう。俺が中央に配置されるなら右側の戦況もよく見えるはず。

 俺が気を配れば問題ない……か……。


「分かった。だがくれぐれも気を付けてくれ。やばくなったら無理をせずに撤退するんだ」

「分かりました!」 


 ルーナは敬礼しながら明るく答える。

 この明るさが逆に心配になる。戦争という物をルーナは分かっているのだろうか?


「それでは所定の位置に。マリアさんは左師団に案内します。私は右師団となりますので、ルーナさんはついて来て下さい」

「分かりました!」

「ヒルダ。くれぐれもルーナを頼む」


 ヒルダは俺を安心させるためか、力強く頷いた。

 とりあえずルーナはヒルダに任せよう。


 去り際、マリアは俺の方を見ると寂しそうな顔をするが、足を止めることなく、兵士の群れの中を歩いて行った。



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