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宿敵と運が繋がっても、王冠はひとつ  作者: 綴木 灯
第一章「運が繋がっても、負けたくない」

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3/20

三人目

開幕節三日目。


朝の一戦を終え、リゼが次の対戦表を見に行くと、セラ・ノーグがその前で水を飲んでいた。


近づくより先に、向こうがこちらを見る。


「リゼ・オルディア?」


「そう。セラ・ノーグ?」


「そう」


短い。


対戦表には、ちょうど二人の名前が並んでいる。


「昨日まで、名前知らなかった」


「でしょうね」


セラは水筒の蓋を閉めた。


「怒ってる?」


「別に。今日覚えるなら」


「勝つ前提なんだ」


「王冠を取りに来てるから」


リゼは少し笑った。


「私も」


係員に呼ばれ、セラは先に歩き出す。振り返らなかった。



白線を越えると金色が沈み、三枚ずつの護印が灯る。


鐘。


リゼは最初から行った。


推進の紋を一つ。距離を詰めながら右から光を撃つ。


セラが出した防壁は、自分の前ではなくリゼの左前方だった。


「?」


攻撃はその横を抜ける。セラが半歩ずれ、外れた。


次の光面は右前方。


左右に一枚ずつ。中央だけが空いている。


なら、中央だ。


推進を重ねて細い空間へ入ったところで、リゼはようやく形に気づいた。


左右の光面は、こちらへ斜めに向いている。外へ逃げるならどちらかを壊す。前へ進むなら一本しかない。


そして、その出口にセラがいた。


短い光。


身体をひねったが、胸元に熱が走る。


護印が一枚砕けた。


セラは追わない。代わりに新しい光面をリゼの右後ろへ置いた。


前を塞いでいるんじゃない。


横を消している。


「なるほど」


なら、減らされる前に壊す。


リゼは左の光面を一撃で砕いた。開いた場所へは出ず、足元へ自分の防壁を斜めに出す。


踏む。


推進の勢いが横へ流れ、身体が大きく滑った。


セラの視線が遅れる。


「取った」


横からの光が護印を一枚割った。


歓声が跳ねる。


セラは割れた護印を一度だけ見た。


「それは知らなかった」


「昨日覚えた」


「じゃあ、覚えた」


言い終わる前に、次の光面が出ている。


今度は前後にずらして三枚。右なら一度曲がれば抜けられ、左は二度。


右を選んだ瞬間、セラも動いた。


追ってくるのではない。一度だけ曲がる、その出口へ先に移る。


簡単な道ほど、出てくる場所が読める。


セラの腕はもう上がっていた。


「――っ」


リゼも撃つ。正面で光が白く弾け、わずかに遅れたリゼの護印が砕ける。


一対二。


さっきは一本道へ入った。今度は曲がる回数の少ない方を選んだ。


自分で選んでいるはずなのに、どちらも同じ場所へ運ばれている。


リゼは口の端を噛み、次の光面を見る。



残り一枚。


今度は先に道を選ばない。


セラが一枚、左後ろ。もう一枚、右前。


リゼは待つ。


セラも待つ。


三枚目が置かれた。


足場だけが、静かに減る。


カイなら、こちらが動くまで待つ。


セラは違う。待っている時間まで、自分の盤面にしていく。


だったら壊す。


正面の光面へ一撃。薄い面が砕けた。


その瞬間、セラが入った。


速くない。


けれどリゼの右腕は伸びきっている。次を出すまでの一拍だけ、完全に空いていた。


短い光。


防壁は間に合わない。


最後の護印が砕ける。


『勝者――セラ・ノーグ!』


歓声の中で、リゼはすぐには動けなかった。


一対三。


照明は落ちていない。手首の金色も白線の中へ沈んだまま。


言い訳を探す場所がない。


「オルディア」


顔を上げる。


セラがこちらを見ていた。


「何」


「一枚取られた」


「見れば分かる」


「次は取らせない」


思わず笑った。


「次は私が三枚取る」


「じゃあ、その時に」


セラはそれだけ言って、先に白線を出た。



通路の先で、カイが給水台の紙杯に水を注いでいた。


目が合う。


「何」


「何も」


横を通り過ぎる。


「三回」


足が止まった。


「何が」


「君が、ノーグの空けた道に入った回数」


「二回でしょ」


「最後も」


壁を壊して、自分で道を作った。


そう思った最後まで、壊すための一拍をセラに使われていた。


リゼは紙杯を持つカイの手を一度見てから、通路の向こうへ目を移した。


セラはもう次の対戦表を確認している。こちらを見もしない。


昨日までは掲示板の一番上にあった、知らない名前だった。


今は違う。


倒す相手が一人増えた。

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