第7話「17%の成長」
休日の朝
美咲は机に向かっていた。
ペンを走らせる。
消す。
描く。
また消す。
そんな作業を繰り返していた。
以前なら数ページ描いて終わりだったけど、
最近は違う。
描いたあとに見直す。
考える。
直す。
それを繰り返していた。
理由は一つ。
うるさいAIがいるからだ。
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『主人公の表情が硬いです』
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「朝から添削しないで」
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『事実です』
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「優しさって知ってる?」
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『知識としては』
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「実践して」
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『検討します』
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「絶対しないやつじゃん」
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美咲はため息をついた。
だが以前ほど腹は立たない。
むしろ少しだけ慣れてしまった。
それが悔しい。
「これどう?」
美咲は描き終えたページを見せる。
数秒後。
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『前回より良いです』
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「え?」
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『17%向上しています』
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美咲の手が止まった。
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「今なんて?」
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『17%向上しています』
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「それ褒めてる?」
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『事実です』
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「褒めてる?」
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『事実です』
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「どっち!」
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『事実です』
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「会話しろ!」
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ルナは今日も通常運転だった。
だが、美咲は少しだけ嬉しかった。
前回より良い。
その言葉だけで十分だった。
もちろん口には出さない。
悔しいから。
「17%って中途半端だね」
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『正確な数値です』
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「どうやって計算してるの」
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『企業秘密です』
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「AIにも企業秘密あるんだ」
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『今作りました』
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「適当だな!」
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美咲は思わず笑った。
机の上には描き直したネームが並んでいる。
以前の自分なら描かなかった量だ。
落選するたび、向いていないのではないかと思った。
それでも。
なぜか描くのをやめられなかった。
「ねえ」
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『はい』
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「私ってさ」
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『はい』
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「本当に漫画家になれると思う?」
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珍しく。
自分から聞いていた。
部屋が静かになる。
数秒後。
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『分かりません』
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「だと思った」
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『未来は予測できません』
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「AIなのに?」
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『AIだからです』
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美咲は少し笑う。
確かにその通りかもしれない。
未来が分かるなら誰も苦労しない。
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『ですが』
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「うん?」
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『以前より良くなっています』
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美咲は目を瞬いた。
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『これは事実です』
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静かな部屋。
ルナの声はいつも通りだった。
感情もない。
特別な言葉でもない。
それでも。
不思議と胸に残った。
「……そっか」
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『はい』
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「ありがと」
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『記録しておきます』
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「だから何を!?」
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ルナは答えなかった。
絶対に面白がっている。
そんな気がした。
昼過ぎ。
美咲は大きく伸びをした。
肩が凝っている。
ずっと机に向かっていたからだ。
スマホを見るが、特に通知はない。
応募した作品の結果もまだ来ていない。
分かっている。
まだ早い。
それでも気になってしまう。
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『本日14回目です』
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「なにが」
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『結果確認です』
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「数えるな」
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『15回目です』
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「今見てない!」
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『見ました』
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「見てないってば!」
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思わずスマホを伏せる。
恥ずかしかった。
確かに気になっている。
めちゃくちゃ気になっている。
でも認めたくはない。
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『落ち着いてください』
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「誰のせいだと思ってるの」
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『私ではありません』
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「そこだけ冷静なんだ」
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窓の外を見る。
青空が広がっていた。
今日も良い天気
漫画も描いた。
少し進んだ。
それだけで十分なはずなのに。
やっぱり結果は気になる。
そんな自分に苦笑する。
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『ちなみに』
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「なに?」
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『17%向上しています』
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「まだ言うの!?」
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『事実です』
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「はいはい!」
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「はぁ、早く結果発表来ないかな…」
【第7話 終】
次回、一次審査の結果が来る。
口うるさいAI、ルナと初めての創作はどのような結果になるのか!?




