キングセンス
「ありゃ“水の国”の人間だ」
「え?」
ハウンドフェイスが立ち去った後、城の方から王が現れた。レオナの父であり“火の国”の王。
「さっきの暗殺者のことですか?」
目の前で逃してしまい、悔しげな表情を浮かべるフランが王に対して訊いた。
「ま、証拠がないから完全な俺の推測になるがな。だが間違いなくアイツは“水の国”から来た男だ」
「それは“直感”ですか?」
「キングセンスって言いたいのか? ふん、かもな。だが証拠はなくても確証はある。とりあえず……」
アポロン王は周囲に集まっていた兵士たちに指示を出した。内容はガルムの安否を確かめることと、民間人の安否、それと犯人達と確保だ。
「襲って来た奴らはその場で適当に首落としとけ」
「え! こ、殺すのですか?」
「ああ。別に訊くこともないしな。それより、襲われたんだろう? 大変だったな」
頭を撫でられる。
迷ったが、頭に乗せられた手を払う。命令を受けて向かおうとする兵士たちの前に立って無理やり止める。
「待ってください! 彼らは確か、冒険者ギルドに出入りしているような、この国の人間ですよ! ど、どうして殺してしまうのですか!」
払われた手に驚いていたが、すぐに表情をめんどくさげなジト目に変えて王はダルそうに答えた。
「難しい話になるんだがな。仕方ないんだ。敵国の息がかかった人間をいつまでも野放しにしとくわけにはいかない」
「しょ、証拠がないって今言いましたよね! だったら……殺す理由にはならないはずです!」
「レオナ。ふっ、言うようになったな」
その時、馬が鼻を鳴らす音が聞こえた。レオナの愛馬ポラリスだった。王は馬の方を見て、目を見開く。
「コイツがこんな表情するとはな」
俺には馬の表情の変化はわからなかった。
だが王はすぐにわかったようで、何かに納得していた。
「……なるほど、どんどん成長して行ってるみたいだ。わかった。ちゃんと全員法律に従って裁こう。情状酌量の余地があればしっかり対応する。これでいいか?」
「は、はい。ごめんなさい、お父様。それとありがとうございます」
嬉しそうに笑うと王は兵士たちに犯人達を捕まえることを命令し、背中を向けて城の方に戻って行く。
フランの手が肩に置かれる。
その時、気になるものがあることに気づいた。
「そうだ、フラン。さっきお父様が言ってた“キングセンス”ってなに?」
「え? そりゃあ王様や王子様、王女様がたにある特別な感覚ですよ。“直感”です。姫様も経験があるでしょう?」
直感?
確か襲撃者が現れた時、ガルムも違和感を覚えていた。そして相手を怪しんでいた。
「お父様はその直感でさっきの暗殺者を“水の国”の人間だってわかったの?」
「うーん、どうなんでしょう。確証はあると言い切っておられましたから、直感以外の根拠があったように思いました」
「その根拠って?」
「さあ……?」
姫の姿で初めて王と会った時、王は俺のことを一目見た時すぐに怪しんでいる様子だった。あれも王族が持つ“直感”だったのだろう。
ただそうなると、あっちの方も。
「ねぇ、もしかして“水の国”の王様にもそういう直感のチカラがあるの?」
「ネプチューン王ですか? はい、あると思いますよ」
じゃあイザベルの姿であっちの王と会った時の反応も“直感”だったってわけだ。
あれ?じゃあいずれ俺の正体がバレてしまわないか?
(さっきのアポロン王の即断即決の行動……もし俺が姫ではない別人だったとバレたら……)
即、処刑。
特別なチカラを持つ大事な姫が誰かに乗っ取られているなんて知ったら、あの果断な王ならすぐに処刑されるかも知れない。
ゾッとした。
ば、バレるわけにはいかないけど……キングセンスには要注意だ。




