二匹の猟犬
ザ、と足音。
同時にガタン!と板の上に人が降り立った音。
レオナとイザベルは同時に後方を振り返る。レオナの方は王城の正門前を、イザベルは船尾を。
「「魔法だけではないようだ。味方も多い。ま、当たり前だが」」
(え……?)
くぐもった声。聞こえる言葉が全くの同じだった。
遠く離れた二つの国にいる二人が、同じ言葉を聞いている。どんな奇跡なんだ。
そして見た目も、ほとんど同じだった。頭にとんがった甲冑兜をかぶっていて人相がわからず、全身黒ずくめ。違うのは体格と、身につけているもの。
レオナの方に現れたのは図体がデカかった。
イザベルの方に現れたのは細身で、そして右肩からライオンの絵が描かれた赤い布を身に付けていた。
「あの赤い布は……」
「“火の国”の! まさかあの襲撃者達は火の国から送られた刺客!」
リップルが槍を構える。
一方でレオナの方で、突如現れた謎の人物の背後からフランが走って来て、背中側から剣を突き立てる。
「貴様、誰だ。何をしている」
「「ノーコメントだ。これから死ぬものに教えることはない」」
また全く同じ言葉を同時に言い放った。
「「とは言え、一筋縄で行かないことは理解した。いや、今回は俺の負けだ。情報不足だった」」
「「私の命を狙っているの?」」
こっちも同時に同じことを言う。
「「言っただろう。死人に教えるものなど……」」
「「ま、負けって言ったくせに? なんの勝負してたのか教えられないまま負けを認められても、わけがわからないだけだ……」」
「「それもそうか」」
二人は自分のかぶっている甲冑兜を撫でた。
その仕草は別々に動いていた。片方は右手で撫でて、もう片方は左手で撫でている。
(完全に同じ言動をしてるってわけじゃない。でもなんでここまでリンクする……?)
「「まずは名乗らせてもらおう。俺の名前は“ハウンドフェイス”で暗殺を生業にしている。この頭の兜はハウンドスカルと言って少し前に流行った甲冑だ」」
え……同じ、名前……!?
どうして!?
「「な、なんでおんなじ名前……」」
「「? 同じ……? 何がだ?」」
「「い、いや、なんでもない」」
思わず口にしてしまって慌てて誤魔化す。
「「俺の言う勝負というのはもちろん、姫を殺す依頼のことだ。俺がアンタを殺せたら俺の勝ち、殺せなかったらアンタらの勝ち。今回は負けだ、次挑む時はもっと情報を集めてからだな」」
「次があると思ってるなんておめでたいわね!」
「私が目の前で逃すわけないでしょ!」
フランが剣で切り掛かり、リップルが槍で突き刺しに行く。
だがどちらも簡単に避けられて、レオナの方に現れた奴は大きく飛び上がってフランを飛び越え逃げた。イザベルの方は横に避けたながれで海に飛び込み、姿を消した。
(“ハウンドフェイス”……二人の姫の前に現れた、命を狙う暗殺者。同じ名前に、同じ兜、そして姫を殺すという同じ目的……)
違うのは体格と、現れた場所と、“火の国”を象徴する赤いライオン絵の布を身に付けているかどうか。




