直感は雷のように
二人の姫が目覚めてから二時間後のことだった。それまで汗をかけば姫護衛騎士が拭いてくれて、催したらバケツでするように言われたりと、軟禁状態のまま時を過ごした。
そしてやっと目的の人物が来てくれた。会議や指示送りを終わらせ、俺の元へ来た。
「よお、元気かい。ネプチューンの娘」
アポロン王が扉を開けて部屋の中に入ってくる。寸前でルージュが入室を食い止め、俺に体を覆い隠すマントを被せてから改めて王を入らせた。
「……レオナ嬢、息災か? 君はとりあえず我々が大切に保護することに———」
一方でネプチューン王も部屋にやって来たが、こっちは先にノックしてブルーに外套を被せるよう指示してから、入って来た。
時間差が全くない同時。
1分、1秒の差がない、同時。
同時に二人の王は姫を見た。
———瞬間。
———王の顔色が一気に変化した。
どちらも目を見開いて、瞳をぐらぐらと揺らした。口を中途半端に開き、乾いた喉から短い空気を吹き出した。
「———バ、バカな……! う、嘘だろ……⁉︎」
「こ、こんなことが……あ、ありえるのか⁉︎」
どちらの王も激しく動揺していた。
部屋に入ってくる時は全くそんな様子なかったのに、俺の姿を見た途端に驚いていた。
その変化に同じ空間にいる二人の第一王女と、二人の姫護衛騎士も戸惑っている。
「………どう言うことだ? いや異変は前々から感じていた……」
アポロン王は動揺から抜け出し、顎に手を当てて思案顔になる。ネプチューン王はまだ戸惑ったまま、後退りしている。
しかし決断を下したのはネプチューン王の方が先だった。
「……ブルー、リップル。部屋を変える」
「え? 場所を変えるの? でもここから出して移動している最中に、この子が暴れたら危険じゃない?」
「いいから!」
珍しいネプチューン王の大きな声にブルーは身を震わせた。リップルもずっと戸惑っている。
ネプチューン王は俺の方にゆっくりと近づいて、大きな手で顔を掴み上げて来た。口が塞がれ、顔が引っ張り上げられて息が詰まる。
「いいか、お前は我々の温情によって生かされていることを忘れるな。イザベルの命と引き換えに、君を殺す気が起きかねないと忠告しておく。お前は———黙って我々に従え。いいな?」
「………っ」
思わず、睨んでしまった。
それを見て王の瞳の揺らぎが止まった。疑惑が、確信に変わった瞬間だ。
「………………」
ネプチューン王が黙り込んだ。
アポロン王は、思案をやめてイザベルの体を抱き上げた。乱暴気味に力づくで。どうやら独力の推理力で答えに辿り着いたらしい。
(……まさか、“キングセンス”か! お、俺の正体が、バレた⁉︎)
予想外の事態になってしまった。
そして二人の姫は、その国の姫の部屋に運び込まれた。いつも暮らしていた部屋なのに、体が違うだけで空気感がガラリと変わって感じる。
「二日だ。二日、ここで大人しくしていろ」
「三日後、お前をここに閉じ込めておく。全てを解き明かすためにな」
アポロン王が提示した期日は二日。ネプチューン王は三日。それまで王は面会しに来ないと言った。
部屋に残されたのは俺と、世話係に任命された姫護衛騎士だけ。
二人とも完全に俺に対して敵意を滲ませた険しい表情を向けてくる。
(もう、バレたと考えるしか、ない……!)
待ち望んでいた人物がやっと来たと思ったら、事態が想像を超えて行く。
ど、どうする……どうする!




