アポロン王の先進
「20年前、俺はネプチューン王に誘われて水の国に遊びに行った。その時の海水浴でどっちが一番長く潜れるかって勝負をした。分が悪いのは承知でアイツに負けてたまるかと勝負を受けた」
さらに大量の石炭が入ったバケツを持って来て、そちらには部屋に設置されたレンガ製の暖炉から、燃えた木を持って来て火をつける。
するとさっきの石とは違い、煙をあまり出さずゴウゴウと燃えた。
俺の知っている石炭そのものだった。
「この石炭は全部、雪山やら鉱山やら、俺が大陸中を歩き回って探し出したもの。そもそも石炭は200年前に発見されていたから、研究は進んでいたしすぐにどうやって燃えているのかを俺は知った」
「それが、素潜り対決となんの関係が……」
「あったんだよ、水の国の周辺の海底にこれと同じ燃える性質を持つ物質がな。プランクトンの死骸が集まってできたものだろうと言うのも解明済み。雪国周辺の海域で見つけたものと同じ性質だった、北から南に流れる海流によって生態系が繋がり、進化の過程で“水の国”の気候でも増殖できるようになったのだろう。あそこは太陽光がよく当たり、植物プランクトンが発生しやすいから、海底には俺が見つけた以上の量が貯まっているはずだ」
あ!と俺は気づく。
イザベルの体を動かして自室の窓から海を見る。昨日と同じように海面がキラキラしていて、確かに太陽の光が当たっているのが見て取れる。
「素潜り対決の途中で海底から石炭や石油と同じ物質を発見した俺はすぐに行動に出た。国に戻り、宣戦布告をした。海底に眠る宝を手に入れるためにな!」
「………」
唖然とするしかなかった。
アポロン王は剣を振るう武人だと思っていた。だが実際は科学に精通した頭のいい研究者。
イザベルの体を使ってリップルからアポロン王について聞いた所によると、王は地質学や生物学などあらゆる学問に精通している学者気質だったと言う。
それでいて乗馬や兵を指揮する能力にも秀でており、まさに大陸を支配する人間のトップに相応しい男だった。
「で、でも! それなら! ネプチューン王に話をして、同盟を結べば化石燃料を輸入してもらえるようにできたはず!」
「……そこが、面倒なとこなんだがな」
「え?」
「できねーんだよ、残念ながら」
王がやれやれと肩をすくめた。そして話は終わりだと言わんばかりに研究室から出て行こうとする。
「ま、待ってください!」
「こっから先は本当に引き返せない領域だ。もし本気で知りたいなら……手段を考えて調べるといい。ヒントはそこら中に散らばっている」




