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戦争のあらまし

「「まず誰もが知っている情報から」」


 フランとリップルの二人が、同じことを同時に教えてくれる。

 はじめに戦争の発端は20年前のアポロン王から“水の国”マキシフィーリに向けての宣戦布告。当時はアポロン王の乱心だと思われていたり、あんなに仲が良かった両国の王がいきなり戦争を起こすなんて信じられない者が大半だった。

 当然そんな心持ちで戦争なんてできるはずもなく、アポロン王に反感を覚えるものの方が多かった。しかも初めはとても言葉では言い表せない苛烈な手段で、“水の国”を攻めていた。


「けれどアポロン王の乱心()()()()と納得したのは、“火の国”の重鎮達でした」


 街に住む当時のことを知る人達から、アポロン王の行為に納得したのは国の重鎮達が一番早かったと、話を聞いたフランは語る。

 おそらく王から事情を打ち明けられ、納得したのだと考えられる。国の全てを担う政治家達が納得したのだから、国の方針は完全に“水の国”との戦争にシフトしていった。

 それから二年後。


「貴族の友達や、その親達から聞いた話によると。いきなり攻め込まれて『これは大義も何もない侵略行為』だと糾弾していたネプチューン王でしたが……それもほんの一年ちょっとのことで、戦争が続くとだんだんとその糾弾していた内容を取り下げて、正々堂々と戦いに臨んで行くようになったとか」


 確かに“水の国”側からすれば当然、大義名分なしとして強気に出てもいい。周りの諸国に相談すればすぐにでも“火の国”は負けていただろう。

 しかし一年と数ヶ月が経過してから、ネプチューン王はそれをしようとしなくなった。


「まるでアポロン王の考えを理解したかのような様子だったと、当時の陛下の周りにいた人たちから聞きました」


「アポロン王陛下はネプチューン王の動きを見て、最初は苛烈な猛攻を仕掛けていましたが、だんだんと冷静さを取り戻し、今のようなほとんどこう着状態へと移行して行きました」


「しかしそこで待ったをかけたのが両国のちょうどあいだにある中立国の、トワイライトバンク」


「生まれたばかりの若い国で、戦争難民達は戦火を逃れて自然とトワイライトバンクに流れていきます」


「急に人口が増える羽目になったため困ったかの国は、二つの国に対して待ったをかけました。これ以上戦争を続け、難民を増やすつもりなら周辺諸国と手を組んで両国を攻撃する、と」


「その後すぐに、それを宣言した先代の国王は暗殺されました」


 あ、暗殺……⁉︎

 俺は、昨日目の前に現れた“ハウンドフェイス”を思い出す。話の流れからして暗殺を依頼したのは……。


「“火の国”の王、アポロン陛下が真っ先に疑われました。当然です。戦争を始めたのは陛下であり、戦争を止めようとする人物は邪魔でしかないからです」


「アポロン王はすぐにそれを否定。暗殺を実行したのは別の人間だと断言し、国王を継いだ二代目トワイライトバンクの王ジャック・ラグナロードに対して沢山の支援物資を送りました」


「取り繕うような動きと見られて当然だったと思います。しかし陛下の容疑を否定する声が新たに上がりました」


「ネプチューン王陛下が直々に、アポロン王への疑いを否定されたのです」


 敵国の王様が?

 本当ならその疑いをそのままにしておけば、“水の国”に有利になる。なのに自分からその優位性をゴミ箱に捨てた。


「それを受けた“水の国”マキシフィーリの重鎮達はネプチューン王に()()()()と感じ取ったようで」


「何度も事情を話すことを回避し続けて来た陛下も観念されたようで。信用できる側近にのみ、陛下は打ち明けられました」


「すると“水の国”の動きが変わりました」


「とにかく自国を守る動きへと移行し、島国と大陸の間を流れる海流を天然の要塞とし、何年もの間“火の国”からの攻撃を防ぎ続けました」


「それが『最初の6年』と呼ばれる戦争の始まりから、今に至る戦争の基盤となる情勢のあらましです」


 アポロン王の突然の宣戦布告。

 ネプチューン王の不可解な数々の動き。

 両国の重鎮は両者の事情を知っていて国を動かしている。

 二国に挟まれて先代が暗殺された中立国の存在。

 攻め込む火と、守る水という現在まで続く構図。

 それが『最初の6年』。


「「6年経ち、そこで世界に“転換期”が訪れます」」


 それって……!


「「“姫”の存在です」」


 レオナ・ヘスティア・アポロン。

 イザベル・テティス・ネプチューン。

 火を操る“ライオンハート”と、水を操る“ホエールハート”。二人の特別な姫が誕生した。

 驚異的なチカラを持つ二人の姫の登場は戦況に嵐を巻き起こした。それまでほとんどこう着状態だった両国。一気に戦いが変わっていった。


「姫様が生まれてすぐに、“ライオンハート”は姫様を選びチカラを与えました」


「“ホエールハート”の凄まじい能力は“水の国”の誰もが知っていました」


「昔から言い伝えられていましたから。自国が得たチカラの威力を自覚すると同時に」


「相手国が手に入れたチカラの威力も、否が応でも知ることになったのです」


 俺が持っている特別なチカラは、戦争を塗り替えた。


「まず初めに動いたのは意外にも“水の国”でした」


「ネプチューン王陛下はそれまで守り一辺倒だったにも関わらず、打って変わって攻勢に出るようになりました」


「動きの変化に戸惑った“火の国”は一気に領地を取られて行きます。我が国はなんとか反撃の体勢を整え」


「一進一退の攻防が続きます。一度攻勢に出た“水の国”も元の体制に戻り守りを重視するようになり」


「姫様が生まれて14年間の月日が流れ、現在では……」


「中立国の領地を避けて、大陸と島国を繋ぐ港町を“水の国”が取り……」


「取り返すための奪還作戦が———」

「守り抜くための防衛作戦が———」


「「何度も続いている状況です」」

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