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裸の付き合い

「姫様! お背中お流ししますよ」


「は、はい……よろしく、お願いします……」


 城の地下に作られた王族専用の大浴場にて、俺はフランと二人きりで入っていた。もちろんお互い服を脱いだ裸。

 フランの裸を見ないように、そして自分自身の女の子の体も見ないように目を瞑る。

 フランの手が背中を撫でるたび、ゾクゾクッ、全神経が疼いてしまう。


「けど、一つ疑問なんですけど」


「な、なんですか」


 緊張しすぎてガチガチの敬語になってしまう。


「どうして最後に現れた暗殺者は、わざわざ私たちに姿を見せたのでしょう。勝負だなんだと言ってましたよね。でも本気で暗殺対象を殺すなら、あんな堂々と姿を見せるなんて、おバカすぎますよ」


「そ、そうですね」


「あ、すみません。まだ怖いですよね。ご自身が狙われていたんですから」


「う、うん……」


 確かに怖かったけど、それよりも今のこの状況が怖い。


「姫様?」


 背中側からこちはの顔を覗き込んでくる。そのため身を寄せて来ていて、彼女の柔らかな胸が背中に思いっきり押し付けられた。

 や、やば、なんだこの柔らかさ……。


「ふ、ふふふ、フランはさ!」


「はい、なんでしょう」


「こ、怖くなかったの? あんな大勢に取り囲まれていきなり襲われたから……」


「そりゃあ怖かったですよ。ガルム殿下だって怖かったはずです。誰だって襲われたら怖く感じて当たり前です」


「そうだよね……」


「でも姫様ほどではありません」


 きゅ、と背中側から抱きしめられる。


「大丈夫です。今度また暗殺者が来ても、姫様を守り抜いて見せます……この命にかけても」


「は、はわわわ……」


「あ」


 抱きついて顔を寄せたフランが、俺の頬につけられた弓矢の傷を見つけた。

 医者に手当てされて数日待てば傷も癒えると言われた。

 傷を触らないように周りを指先で撫でられる。


「……ごめんなさい、この傷は私のせいです。守り切れなかった私の……」


「射られた時フランはいなかった。どうやって守るって言うの? 取れない責任を感じて、一々暗い顔されたらそっちの方が迷惑。元気出して欲しい」


「姫様……そう、ですね」


 まだ気負ってる様子。

 それはそれとして、ふと気になった。


「そう言えばなんで毒が塗られてなかったんだろう。医者に診てもらった時、毒とか検出されなかった。でももし毒が塗られてたら今頃私はお陀仏だったはずだけど」


「毒の殺しは確実ではないと考えたのでしょう。以前同じように毒矢に射られて死んだと思われていた人物が、数日後ケロッと回復した姿で街中を歩き、自分を射った犯人を探し回っていたって……街中でちょっとしたウワサになってましたから」


「ウワサ……そっか、フランは平民の出だから街の情報が耳に入って来やすいのか」


「はい。病院などの屋内で治療されれば殺し屋も死亡確認がしっかりと出来ないため、生きてるか死んでるか不確かとなってしまう。それを恐れて今回も毒矢を使わず……さらに考えられるのは、毒を使わずとも殺せてしまえると言う自信があるのでしょう」


「王城の目の前に堂々と現われたくらいだからな。“水の国”のほうでも」


「え? “水の国”?」


「あー! い、いやいや! なんでもないなんでもない!」


 あ、あぶねー、なんとか誤魔化せた。

 城の前といえばイザベルの方に現れた“ハウンドフェイス”も、船の上だったがあそこは城の前の海だった。どこまでも大胆かつ自信に満ち溢れた行動。

 そんな奴に狙われてしまうなんて……。


「早く捕まって欲しいですよね。今、陛下が調査してます。ただ陛下の動きに不思議な点がありまして」


「不思議な点?」


「依頼された、と暗殺者は言っていたのに、なぜか陛下はその依頼人の正体を探ろうとはしないのです。その代わりに城周りの警備と、街中でのハウンドスカルを付けた人間の捜索にチカラを入れていました」


「……まるでその依頼人の正体が、わかっているかのようだって言いたいの?」


「そ、そこまでは発想にありませんでしたけど、もしかしたら知っているのかもしれません。私のような平民出身の叩き上げでは決して想像できない、王様としての視点が必ずあるはずですから」


 王は依頼人の正体に心当たりがあるのか。

 だがなんでそれを、俺やフランに言わないんだろう。第三王子まで巻き込まれた大事件だって言うのに……。

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