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2.ロイズ大法官殿は、コルベール財務卿から財政破綻の宣告を受ける

いきなり革命前夜のロゼリエッタ王国に転生した官僚の山口は、ロイズ大法官と入れ替わってしまう。

女王アリスの処刑を回避し、地球に戻るために、ロイズはこの国の革命回避に乗り出した。

ロイズは、平民あがりのコルベール財務卿に、王国の財政状況を確認しに行くことにした。

(次回更新は4月27日月曜日です)

 女王アリスには、同じ年齢の従妹がいる。メアリー・ロゼリエッタ、王位継承順位1位である。

 メアリーを新女王に担ぐ貴族とアリス女王を支持する貴族の政争が絶賛勃発中なのだ。

 公爵級の有力貴族は、王族の子孫である。けれど、流行り病で王位継承者がかなり死んだ。

 それでも、先々代の国王の血を引く貴族が数名いた。その筆頭がメアリーである。

 ロイズ・オリジナルの記憶は、あいまいな部分も多い。

 

 この国が財政的にやばいことは、ロイズにも理解することができた。 

 ロイズは、ロイズ・オリジナルの記憶をある程度、整理する。それから、コルベール財務卿の執務室を訪問することにした。

 

 ロイズ・オリジナルの記憶で、王宮内の位置関係はわかる。

 ロイズは、一人で財務卿の執務室まで歩いていくと、部屋をノックした。

 「どうぞ」

 財務卿の秘書官が扉を開け、ロイズをみると恭しく頭を下げた。

 コルベール財務卿が席を立つのをロイズは手で制した。

 「財務卿。先ぶれなしの突然の来訪、申し訳ありません」

 「大法官殿、わざわざお越しいただかなくとも、こちらからお伺いたしましたのに・・・」

 あからさまにコルベールが警戒していることをロイズは悟った。

 「いえ、コルベール財務卿。教えていただきたいことがございましてね」

 財務卿は小さな応接机に、ロイズを座らせる。

 「ヴォードワール夫人の邸宅新造ですか」

 ロイズは苦笑いをして、頷いた。

 アリスの女王就任後、ヴォードワール夫人ら取り巻きの要求で膨大な額の国庫が私的に流用されていた。

 「それもありますが、この国の財政状況の数字を教えて頂けますか」

 お貴族様の大法官はそんなことも知らないのかと、呆れた顔でコルベールはロイズを見る。

 「約10年分の国家予算が赤字ですね」

 ロイズには、この世界の金銭の価値、国家予算の総額がわからない。

 「歳入と歳出の区分を大まかに教えて頂けませんか」

 「歳入は約6割が直轄領の農作物による税収ですね。4割が国債。歳出は、王室費が5割、この中には公務員の人件費も含まれます。5割が国防費です」

 

 ロイズ・オリジナル・オリジナルの記憶でも、国の収入は直轄領の地租と国債、要するに借金である。

 ロゼリッタ王国は、貴族の集合国。連邦国である。王室の収入は、国土の3割を占める直轄領からの税収である。王室の直轄領以外の7割の領地は、貴族に徴税権があるのだ。

 王は、ロゼリッタ王国の最大の領主でしかない。ロゼリエッタ王国内の徴税権をアリス女王が持っていないのだ。そのため、ロイズ・オリジナルの記憶では、財政赤字の埋め合わせのために、国債を発行し、平民から人頭税を徴収する増税案が貴族会議で可決される予定になっていた。

 

 貴族には非課税特権がある。自前の軍隊を持っている貴族に課税すれば、反乱を起こされる危険性がある。ほとんどの閣僚も貴族である。

 富裕層は、下級貴族から爵位を購入し、非課税特権を手に入れていた。そして、元平民の下級貴族を中心に、貴族制打倒の運動が広まりつつあった。

 ロイズ・オリジナルの記憶には、ヴォードワール夫人の浪費、取り巻きの浪費、王宮内の貴族の法外な給料。こうした無駄遣いの細かい数字が抜け落ちていた。

 「財務卿。ヴォードワール夫人の邸宅建設を止められませんか?」

 「これは意外ですな。アリス女王の命で、私に邸宅建設の予算を要求に来たのかと思っていましたが・・・」

 「国庫が持ちませんよ。このままいけば、革命が起こる」

 「大法官殿がそのような危険思想の持ち主とは・・・」

 「事実でしょう?」

 コルベール財務卿は無言で頷く。宮殿の運営は非効率である。ドアを開けるためだけの侍女、他の閣僚にメッセージを伝えるための下級貴族、1人の閣僚に10人、20人の付き人がいるのだ。そして、女王であるアリスには、数百人の侍女がおり、この侍女達の給料だけでも法外な金額を支払っていた。

この国の貴族は、土地からの税収で暮らしている貴族と王室で働き給料を貰って生活をしている下級貴族や軍人がいる。大まかな物価はまだわからない。それでも、感覚的には、大法官クラスで数億円、閣僚にも同程度の給料が支払われていた。

 

 この国は、人件費が多すぎるのだ。

 王宮を手放し、アリスが直轄領の領主としてつつましく暮らせば、革命を防げる可能性が高い。

 

 「いっそ、魔王でも召喚して貴族を戦死させれば、人件費も抑えられるのではないのか・・・」

 

 ロイズ・オリジナルの記憶には、公爵家の家族のことが欠落している。そして、ロイズ自身も伯爵領を持っているらしいが、代官に経営を任せ、王都を離れることはなかった。

 「コルベール卿、一度、持ち帰って財政改革案を検討させてください」

 「ええ、構いませんよ」

 ロイズは、執務室に戻る。

 

 ロイズ・オリジナルの記憶は曖昧な部分が多い。こまごまとした記憶があれば、具体的な対策を立てることが出来るのだが・・・。

 財政学的には、山口の知識で立て直すことが出来る可能性がある。問題は、政治的に立て直すことが可能なのかである。

 ロイズ・オリジナルの未来の記憶はない。アリス女王に好意を抱いていたロリコンであること。詳細は不明だが、数年以内に革命が起こりアリスは処刑されること。

 そして、ロイズが関わった人間の人名と役職をロイズとなった山口は、ロイズ・オリジナルと共有している。だが、ロイズ・オリジナルの意思はなく過去に起こった記憶として共有しているだけなのだ。

 「よし、この世界でやることの優先順位をたてよう」

 平穏無事に生きられれば良いのだ。平穏無事に生きるためには、この物騒な世界から日本に戻る必要がある。

 

 確証はない。確証はないが、アリスの処刑を回避できれば帰還できるのが、この手のファンタジーのお約束であろう。

 

 財政破綻の原因は、人件費にある。だが、財政破綻が根源的な革命の原因ではない。

 

 革命は、権力闘争の一形態である。この国の革命も権力闘争なのだ。必ず、革命を裏で操っている黒幕がいる。それは、地球の歴史が証明をしている。

 

 革命は悲劇ではなく喜劇である。誰かの思惑通りに歴史が作られることはない。

 複数の人間の思惑が絡み合い、革命になるのだ。そして、革命そのものを主導者達は望んでいない。ロイズ・オリジナルは、商工業者やブルジョワの知識が乏しい。

 

 この国の革命はブルジョワが主導しているはずである。そして、道化達、王族や貴族の派閥争いが絡み合いアリスの処刑につながったはずである。それが、地球人である山口望が出した結論であった。

 

 ロイズ・オリジナルは、財政破綻を招いたヴォードワール伯爵夫人を憎んでいた。だが。彼女は間接的な革命の原因でしかない。

 

 この国が存続することで金銭的な被害を被っている者達。そして、道化達の中心は、アリスの従妹、メアリー・ロゼリッタ殿下であろう。

 

 ロイズ・オリジナルは、メアリーを嫌っていない。しかも、アリスとメアリーの家庭教師はロイズなのだ。



4月27日、月曜日更新

○大法官殿は革命から巨乳の女王陛下を救い、メアリー殿下の貧乳コンプレックスを克服して異世界を救えるのか?

3.ロイズ大法官は、絶壁の姫君、メアリー大公女をマジギレさせる

大法官ロイズと中身が入れ替わった山口は、革命の真相を知ってしまう・・・。

「くだらねえ。こんなくだらない対立から革命に発展したのか・・・」

この国、滅ぼした方がいいんじゃないのか・・・。


目のパッチリとした童顔の美少女が口を開く。

 「どうしたの。ロリコン豚」

 曇りなき、笑顔でメアリーは、ロイズに言い放つ。

 「すがすがしいまでの悪態ですね」

 「いつもは、喜ぶのに・・・。どうしたのかしら」

 ロイズは察した。秘書官ルイスの蔑視の理由を。そして、わりと有能そうな大法官がいながら、この国が革命に突っ走って行き、アリスが処刑された理由も・・・。

 

 そういえば、メアリーの胸はつつましい。

「絶壁の姫君」

ロイズ・オリジナル・オリジナルの記憶から一つの単語が紡ぎ出される。

「殺すわよ」

絶壁党。メアリーを女王に推す派閥をアリス女王は悪意なく、こう呼んでいた。

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