第126話 開発区域への進出
如月さんや足平さんと私達が、現状の報告をしていると、
島の人たちに食事を提供していた木内さんが操舵室に入って来た。
「島民への食事の提供は終えたぞ。
はあ、詳しく聞いたがこの数日は山にある山菜やらで、
食いつないでいたらしい。」
「悪い事じゃないが、
それにしては、元気だったな。
ここには、やっぱり何かあるんだろうな。」
木内さんはそんな感想を口にする。
皆の報告を聞き、如月さんは、
「ふう、一応、島民をここまで避難させられたわ。
足平陸佐の調査でも漁港に私達以外の勢力の存在は、
今は確認されていない。」
「木内さん、例の通信機器で道内との通信は確保できた?」
そんな言葉を発する。
それに答えて木内さんは、
「設置はしたが、全く繋がる様子はねえな。
俺たちも長いこと現場を経験してきたが、
これはちょっと異常だぜ。」
そんな答えを返してくる。
「今のところ、船の設備は通信機器を除けば使えるようになったわ。
あの通信機器は本部との連絡用に用意したものだけど、
この島の中での通信用に使えないかしら。」
「天明さん達の話によれば、
ここでリゾート開発が進行していたらしいし。
あくまで今は仮説でしかないけれど、
そうであれば、何等かの通信手段を残しているはず。」
「現状が彼らの思惑の範疇内で収まっているなら、
道内との通信を遮断しても、
島内部での連絡に使えるように通信機器を配置しているはず。」
「ただでさえ、大事なお客様を迎えているようだし、
不便を掛けることはないはず。」
「木内さん、あの通信設備を島内用に設定し直して。
足平陸佐と検証をお願い。」
「あと島の人たちをこのまま港側に置いてはおけないわ。
確かに人数は多いけれど、彼らを船に収容しないと。
非常事態が起こった時、迅速に避難させられないわ。
今は海上を渡って道内に行けるかは分からない。
でも、用意はしておくべきね。
この船に収容できればいいのだけれど、
さすがに人数が多いわ。」
そんな言葉に、
「なら、例の不審船を使おう。
まあ誰が使っていたのかわからんが、
百人くらいは乗れるし、調理設備もある。
一応爆発物が仕掛けられていないか、詳細な調査は必要だが、
それでも大事なお客さんを乗せてきた船だ。
危ないものを仕掛ける理由はないぜ。」
足平さんはそんな提案をしてきた。
如月さんは少し考え込む仕草を見せるが、それも短時間、
「いいわ、でも船を動かせるか?
確認が必要ね。
はあ、部下をそのまま連れてくるべきだったわね。」
海自の人員は、道内へ向かう航海で船の安全性を確認するため、
3人が乗り込んでいた。
しかし、この島へ向かう際に人員を必要最小限にするため、
その役割を足平さん達に受け渡し、彼らは船を下りていた。
「足平陸佐、2人ほど部下を借りるわ。
安全が確認でき次第、島の人達を収容する。」
「それが終わり次第、
天明さん達の言うリゾート区へと調査範囲を広げます。
また、海保隊員たちが残したメッセージもある。
足平陸佐には隊員に銃装備を指令します。」
如月さんのその言葉に、
「そりゃ困ったことだなあ。」
と困り顔の足平さんに、すこし厳しめの如月さんの声が跳ぶ。
「足平3等陸佐、復唱を。」
次の瞬間、顔を引き締めた足平さんは、
装備であろう多目的腕時計?を確認し、
「は、現在時刻 00月00日 14時17分、
隊員への小銃装備を指令します。」
そんな言葉で返事を返し、
「装備後はどうしますか、隊長どの。」
と聞き返す。
すると、
「一旦、隊員は漁港正面の市場と思われる建物前に集合してください。
その後は人員を二つに分け、
この漁港の防衛と島の探索を行うことにします。
人選は足平3等陸佐に任せます。」
「木内さんたちは、島の避難者への支援を随時行ってください。
それと貴女達ですが、、」
と民間組の私達のほうに顔を向けてくる。
「私達は島の探査に着いて行くぞ。
もともと、私達は島の異常を調査にきたんだからな。」
とアテナさんが発言し、天明さんも、
「そうですねぇ、
どの道、状況が解決しないと帰れないようですし。
どう見ても、あの開発区域の奥側に何かありそうです。
船で来た人たちも、この島の新たな住人も姿を消しています。
皆、どこかにある施設に避難した可能性は高いですよねぇ。」
そう言い出した。
その言葉に、如月さんは、
「確かに異常な現象は起きていますが、
該当区域には武装した何者かが存在する可能性もあります。
私には貴女達の行動を制限する権限がありませんが、
十分に危険性を考慮してください。」
と真剣な顔で警告してきた。
集落への調査に行った時とは、真剣さが違う感じだ。
多分、失踪した海保隊員のメッセージから、
ある程度の危険性が判断されたのだろう。
私達が不可思議な力を操る可能性は十分知らされている感じだったが、
銃火器を相手に何かできるかどうかは判断できない。
それはまあ、私もそう思う。
銃など向けられて、どうするか?
今までもそんな体験はしてこなかった。
戦闘の大半が人知を超える相手だったわけで。
だが、それでも、
「私は、早くこの事象を治めないといけない気がします。
その為には、島の奥へ行かないと。
私達も同行させて下さい。」
そう言って、私は頭を下げた。
お寺で聞いた天明さんの言葉や紙絵法教についての聞き込み、
これらは単なるリゾート開発事案とは、
別種の事が隠れているように思えるのだ。
解決には早急に動き出す必要がある。
アテナさんも魔境の拡大を示唆しているのだし。




