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俺は人生を捧げない、私は全てを取り戻す! 第一部 続き分  作者: ふりがな
第9章 天魔躍動す、北海を巡る謀略
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第124話 詳細を語る彼女

天明さんの言う人類のスタンダード。


私は質問を続ける。


お寺の境内の一角では、ここへ避難してきた島の住人が、

次々と集まってきている。


それぞれ避難に当たって、貴重品等も持ってきたようで、

各々に荷物を抱えている。


その中には先程の男性を含む比較的若い人達が、

お年寄りの手伝いをしていた。


「天明さんの言うスタンダードって、どうやって見分けるんですか?

 それに仏門の徒だって十分異様な力を持っているじゃないですか。」


その言葉に天明さんは、


「まず仏門の徒についてですが、

 彼らは恐らく何らかの異郷の存在と関わりがあると思います。」


「彼らの力は歴史がありすぎる。

 彼らが進化の先触れならば、もう人類は不老不死の段階に至っています。

 しかし、現状そうではない。

 一般の人が、あの力を扱えていません。

 七果さんも今は視えたり、力を使えますが、

 前の段階では、金剛と呼ばれる使役する傀儡すら視認できませんでした。」


「日本にも神々が実在することが分かってきましたが、

 彼らの影響を受けても、日本人に所謂、力持つ者は現れていません。」


「つまり、彼らや今存在する神々はこの地の人間と何かの確執があるんです。

 あの召使いたちが、この地に住む者に何かした、

 そのため、神々と人間の間の繋がりが切れているんだと思います。」


「あとスタンダードという存在ですが、

 現れるとその傍の人からも次々と覚醒者が現れ始めると言われます。

 所謂、宗教のように教義を知ることで辿り着くのではなく、

 種族自体の集合意識に作用し、変化が始まります。

 全てがその出現による影響を受け、距離の関係もなく。」


「見分ける方法はとても感覚的なものです。

 傍に近寄れば、その身が反応し震えるそうです。」


「スタンダードを説明するとき、人類の進化が例えに出ます。

 所謂、猿種から今の人間となる時、

 最初は突然変異、または突飛な行動をとった固体と思われますが、

 それはおかしいのですよ。

 突然変異は一様に1代限りの場合が多いのです。

 文字も持たない動物だったはずの個体の突飛な行動は他に伝播しません。

 正規の歴史でも過去どれだけの技術が次代に伝えられず消え去ったか。

 鉄の発見とその活用法も一度戦いで消え、その後に再発見されています。

 ならば、なぜ猿種から人間と呼ばれる種が分かれ繁栄したのか?」


「人が行う品種改良では、優良な特定の種を集め配合していきます。

 自然界では環境の極端な変化により、強制的な自然淘汰が起きることも。

 ですが、人間という種に辿り着くのは結構な謎が含まれています。」


「過去、召使いによる操作が人類には入っているようですが、

 それでもその前、神々たる人間を輩出するに至ったのは事実です。

 そう歴史は結局、人間の真実を伝えています。

 例え途中で邪魔が入っていても、最初期は猿種からの進化は起きたはず。

 その時に起こった事が、スタンダードの出現なのです。

 種の次の段階、その姿の基本であり1代限りではない者。

 今の人は、所謂男性か女性か、人への進化体が現れ、

 次第に優良種たるその血筋が一族となった。

 そう思われていますが、それでは遅いのです。

 鉄の技術を持つ一族は根絶やしにされました。

 だから、技術も歴史の中に一度は消えた。

 どんなに優位でも数の差は容易に事をひっくり返します。」


「品種改良を行う作業では、ある意味失敗を繰り返すことになる。

 そして、人間の誕生にはそれを見守る者はいない。

 すべてに最初があると考えれば、それが最も正しい答えです。

 ただの一固体が変異、進化を遂げたのではなく、

 複数の個体、集団が一気に進化を遂げた。

 ある意味、それは前の姿を隔絶した進化だった。

 だからこそ、その集団は生き延び人類の祖先として繁栄した。

 その切っ掛けとなった者、一番最初に人間という姿になった存在。

 その集団を一気に進化させた者、それがスタンダードなんです。

 ある意味、それは感染症のようなものかもしれません。

 スタンダードが最初の進化という病の感染者であり、

 その病が集団を飲み込むことで種を一気に飛躍させた。」


いつになく、感情的な天明さん。


しかし、私はそんな存在について聞いたことが無い。


まあ、私は歴史の研究者でもないしなあ。


そう言えば、天明さんもあの研究所の研究員だったっけ。


所長もそんなこだわりがあったし。


そんな話をしていると、


「おおぉぉぉい!

 大丈夫かぁぁぁ!」


と男性の声が辺りに響いてきた。


寺の外からのようだ。


避難している人の何人かが、

お寺の外で自衛隊の救助を待ち受けていたようだ。


目の前で集まっている人達を見ると、

それぞれに明るい笑顔が見える。


はあ、それにしてもよくこのお寺で持ちこたえられたなあ。


当初の予定よりは少ない60人ほどと聞いたけど、

物資を運んでた連絡船は数日前からここで足止め。


そして、食料と飲料やらを向こうの新規移住者に持っていかれたそうで。


山菜って言ってもなあ。


それで食べられないから、漁やら道内への連絡船があるわけで。


少し待つと、足平さんが先頭を切ってお寺の境内に入って来た。


他にも5人ほどの隊員を連れている。


そして、最後に連絡役に出たアテナさんが入って来た。


「七果、どうしたんだ?

 何か疲れることでもあったのか?」


そんな言葉を掛けてくる彼女。


ううん?そんなに疲れた顔してるのかな?


ただ、ここで聞いた天明さんの話は、後々重要な事実に繋がっていく。


何故この時、こんな話をしたのか?

何故彼女がこんなにも具体的に説明できたのか?


この時の私はまだその事実に気を回す余裕はなかった。



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