第121話 追跡
如月さんには、指揮権無効ということを突き付け、
私達も独断専行を始めることにした。
向かうは島の漁港の奥、民家が立ち並ぶ集落のほうである。
鬼鳥島は、離れ小島ではあるが、
一応、百を超える人口はある。
その集落へと至る道路も舗装はされている。
まあ、島に水産加工業とかがあるわけではないらしいので、
大型トラックとかが行き交うような感じではないが。
獲れた魚介類の一部を残し、そのまま道内へと出荷する感じだ。
ただ、そういう島にしては、結構人の手が入っている感じがする。
考えれば、当たり前だが車類が必要な立地ではない。
集落と言っても、百人程度なのだ。
規模としては、ちょっと大きな村程度なのだ。
建てられた家屋だって、そこまで多くない。
なのに、何故か舗装道路が奥まで続いている。
ここは島だ。
漁港から進めば、色々なものが見えてくる。
もちろん、港からも確認はできるはずだったが、
奥へ続く道路などは、港から微妙に隠されている感じだ。
よく島の形を思い出そうとする。
確か地図では漁港自体がこの島の入口として広がるが、
どちらかと言えば、それは島の一端に過ぎなかったはずだ。
この島は円形ではなく、漁港に対して縦長な感じで広がっている。
奥が広い感じなのだが、まあ山もあるしな。
奥にも何かあるのかもだが、基本的には車あっての舗装仕様のはず。
ここは日本だ。
だが、その常識は有り余る資材と資金が支えている。
確かに小さな島であっても、舗装道路は珍しくないかもだが、
穴なども開いていないメンテナンスの行き届いた道路は、
こういう島では珍しいのではないかと思う。
観光で食べているなら、それもアリだが、
ここはそう言うことではない感じだ。
しかし、人を見ないな!
集落まであと少しまで進んだ頃、
私達は一旦、考えを共有すべく相談することにした。
近づいたけれど、人影が一切見当たらないのだ。
アテナさんと天明さんに先程の道路の事を伝え、
何か集落の裏側へと続く道について相談した。
すると、
「そうですねぇ。
わたしは、このお家の建て方に興味がありますねぇ。
普通、通常の民家を漁港側に建てるでしょうかぁ。
ここには、道警察の出張所があるそうですが、
それはともかく、集落の集会所みたいなものもあっていいはずです。
そうなると、漁港側とも接点のある主要道路らしきこの前くらいに、
建てられそうなのですがねぇ。」
「あと、普通は過疎化する島事情です。
それが、見た感じでは奥に新築らしき家屋が並んでいるのが見えましたぁ。」
「全体的に道もそうですが、
この島の経済状況ってどうなっているんですかねぇ。」
ううん、前にあるこの古びた家屋は囮なのか?
その言葉を聞いて集落内に足を進めることにした私達。
なるほど、漁港側から見える感じでは、
普通にさびれてきた過疎化な島なのだが、
ちょっと集落に入ると結構新しい家屋の群れが見えてきた。
その家屋はどれも大きく豪華なものだった。
というか、公園などの設備もある。
整備されているというか、、、
「ふうむ、これは典型的なリゾート開発かもしれないな。
所謂、大きなホテルなどを招致するやり方ではなく、
富裕層向けの別荘を呼び込む形の。」
「最近は夏は暑いし、冬は寒い。
日本の四季というが、年間の気温差は激しいからな。
ここは道内からもそれほど離れていないし、
交通の不便もあまり感じないかもしれないな。」
あれを、とアテナさんが指さす方を見ると、
ううんと、あれはヘリポートか?
「ここは小さな島だが、今ある豪華客船より遥かに広い。
外部から孤立していると言えるが、
反対に考えれば、いつでも外部の影響を遮断できるとも言える。」
「漁港と農産物を島で賄えれば、自給もできるようになる。
パンデミックや最近の犯罪トラブル、あと地球温暖化とか、
色々なものを遮断できるな。」
「そして、ネット環境も整っているはずだったと。
この島を有事の避難場所とすることもできる。
他にも何か山側に建設を進めているようだ。」
まさかと思うが、あの法主とかいう柱葉さんは、
宗教関係ではなく、宗教法人系のリゾート開発事業者なのか!
確か、前の教祖さんと揉め事があってとか、
団体の実力者が次々出て行ったとか如月さんが言っていた。
それって、もしかして意図的に追い出したんじゃ、、
「「とても過疎化した島には見えないな」」
「ええ、見えませんねぇ。」
「ただし、魔境と思われる領域の拡大は本物だな。」
とアテナさんが釘を刺してくる。
「そうですねぇ。」
天明さんもそう頷く。
まずいな、どうやら何か地域のリゾート系トラブルで、
何らかの存在が怒りを抱えているかもしれない。
人が今、見えないわけだが、
「魔境って、人払いとかの効果があったりするんですか?」
そんな質問を二人にしてみたところ、
「いえ、そんなことはないですよ。
人払いの術は、常時展開できませんから。
あれは後から開発したもののはず。」
天明さんはそう答え、
アテナさんは、
「私の頃はこんなに人はいなかったからな。
ある程度、時が経ってからだろう、
あの術が必要になったのは。」
と言う。
というわけで、この島の人は何処かにいるはずだ。
島民は百人くらいのはずだが、
この目の前にある豪華な家屋をみると一体どれだけの人がいるのか?
もっと集落を見て回ろう。
ここがリゾート開発で問題を起こしていたのなら、
柱葉さんたちは恐らく、新しい施設の方へ行ったはず。
目の前の豪華な家屋に既に人が住んでいたなら、
それは彼にとって大事な顧客のはずだ。
だが、私達が知りたいのは、真実だ。
この状態では新規の人は何も知らない可能性が高い。
ならば、この島の本来の住人を探さなければ!
島のどこかに、昔ながらの避難所があるはずだ。
そして、今までの経緯を聞かなければ、話にならない。
ここには、確かに魔境がある。
ならば、そこに何者かが住んでいる可能性があるし
今こんなことが起きているなら、
昔から住んでいた島民たちが何かの備えをしていてもおかしくはない。
伝承とかの記録でも手がかりにはなるのだ。




