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俺は人生を捧げない、私は全てを取り戻す! 第一部 続き分  作者: Zassouyorifumetsu
第9章 天魔躍動す、北海を巡る謀略
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第117話 封鎖された地 魔境拡大

神奈川を船で出発した私達は、今、

北海道の南東部にある港に到着していた。


今回の件を統括する立場である関場さんは、

既にこの街に設置された捜査本部で指揮を執っている。


マスコミ対策として、

捜査本部自体は港近くの施設に設置されている。


もちろん、関係者以外の立ち入りは制限されている。


まだ詳細を理解していない私達は、この事態の状況を説明されていた。


ここからは簡単に説明された情報を整理していこう。


捜査する島は、北海道の東10kmに位置している。


ただし、道内にそこへ最短距離で行ける港は存在しない。


島と道内を結ぶ定期連絡船も、

島のある位置より少し南部にある小さな港から出ていた。


私達が今いる港だ。


ここからだと、島へは少し遠くなり、

緩く北東方向に進まなければならない。


要するに真っ直ぐ直線で10km行けばいいのではないのだ。


ただ小さな島とはいえ、

陸地から離れていないその場所は航空機などなら近寄れなくても、

肉眼で見えるはずだ。


うむ、当たり前だが10kmというのは、

水平線の向こうという訳ではない。


だからこそ、最初はこの場所は見過ごされていた。


二重遭難した海保の船は、

島の傍を通ったはずの護衛艦の様子を島民に聞き取りするために

派遣されていた。


何か大きな音、例えば爆発音や閃光などが無かったか?


あるいは、局地的な自然現象とかなかったか等を確認するために。


ただの普通の小さな島だった。

近づくのは簡単なはずであり、何なら目視でも行けないことはない。


しかし、護衛艦の航路を精査していくと、

どうも島の近海域から跡を追えなくなっていた。


そして、調べ始めるとすぐそこにある島は、

砂漠で見る蜃気楼のごとく、捜索する者を惑わせた。


初めに島へと空から接近した捜索ヘリが計器等の異常を起こした。


もともとは海域に何らかの手がかりがないか、

空から調査していたヘリだった。


そのヘリは道内の開けた場所に緊急着陸する羽目になった。


曰く、あらゆる電子機器が警報を発して、

幾つかの飛行制御系が停止しかけたという。


このヘリのパイロットの証言から、鬼鳥島に注目が集まった。


そして、島へ聞き取りに向かった海保の船と連絡が取れないことが発覚。


次いで、島と道内を繋ぐ定期連絡船の行方が、

分からなくなっているとの情報も入って来た。


そこで島への連絡を取ろうとした。


何で最初からそうしなかったのか?


それは護衛艦消失という事件の重さから、その機密性を優先したからだ。


そのため海保の担当官が直接聞き取り捜査を行い、口止めもするはずだった。


しかし、今はそんなことは言っていられない。


何かおかしい。


そこで島にある道警の駐在所へ電話や無線連絡を入れた。


しかし、どの通信手段も島と繋がらない。


小さな島だが、道内と近くネット環境もあるはずだった。


念のため島の様子を確認しようと、

捜索ヘリが高度を上げて、島の望遠画像を撮影しようとした。


目で見る限り、異常はない。


島には少し高い山とそのすそ野に集落があり、小さい漁港が見える。


しかし、報告用に撮影した映像にそんな平穏な光景は映っていなかった。


その後も遠隔地からのドローン撮影が試みられたが、結果は変わらなかった。


その問題となった映像には、

島の姿はなく代わりに大きな真っ暗な穴が映っていた。


穴の近くになるほど薄暗くなり、その闇深い穴へと繋がっている。


真昼であるのに、

それはまるでブラックホールのように太陽光を飲み込んでいるようだった。


目に見える島の姿と機器が撮影した映像が、あまりに食い違う。


海自の上層部は、偵察用のドローンを島へと飛ばした。


陸地なら10kmなど、すぐそこの距離である。


ドローンの映像を確認しつつ双眼鏡片手に操縦する捜査担当官2名。


ドローンの映像には暗い何かの歪んだ穴が映り込む。


それでも目視で島へと誘導する。


しかし、島へ近づく前に操作不能になり海上へと落下した。


ドローンの映像はリアルタイムで中継されその画像も記録されていた。


結果的に分かったのは、島のある場所に近づくほどに映像は乱れること。


制御不能になった位置では、複雑怪奇な何かが映り込んでいた。


その映像を確認し、一応遠巻きに海保や海自の船を接近させてみた。


だが、やはり電子機器の異常が観測され、レーダーが使用不能に陥った。


観測用のカメラを回しながら、接近した船もあったが、

島へ近づくと何かの渦が船を襲ってくる光景が観測された。


ここに至って、事件は尋常なものではないとの認識が海自上層部にも広がった。


ヘリやドローンは制御機器が異常をきたすので、島への接近は困難だ。


しかし、ただ船を目視で向かわせることはできるかもしれない。


見たところ、行方不明の護衛艦や海保の船が沈んだ風には見えない。


ただし、今見ている光景が真実なのかは分からない。


そんな不可思議な現象を目の当たりにした上層部は、

つい先日起こった事件を思い出した。


そして政府を通じて霊的災害対応室に声がかかった。


事の経緯を説明してくれたのは、

他ならぬ今回の作戦指揮官の如月さんだった。


うむ、はっきり言えばすぐそこにある島だが、

目視で確認して船を進め、到着できても帰ってこれない可能性が高い。


まあ、異郷の道を思い出されるが、

あそこは基本、海などの地形はないはずだ。


あるかもしれないが、あそこは尋常な生命が行き交う場所ではない。


そして、人間の作った動力などが通用しないとのことだった。


私は科学に明るい訳じゃないのだ。


これは何かの未知な宇宙現象だったりしないよな?


そうだったりしたら、幾ら私達でも帰ってこれない気がするぞ。


天明さんとアテナさんも説明を聞いていたが、

この現象に心当たりはないようだ。


無いかもと思いながらも異郷の道関連を聞いてみたのだが、

異郷の道へは本当に限られた場所からしか侵入不可能だそうで。


そう言えばいちいち私達も岐阜のエンキタン遺跡へ行っていた。


出口だって、思い通りにはいかないかった。


何処からでも行けるなら、移動に電車や車は使わない。


「はあ、一応、そういう場所には心当たりはある。」


そんな言葉を発したのは、難しい顔をしたアテナさんだった。


「以前、七果の修行に行ったことがあったはずだ。

 あの時は妖精郷だったが、ああいう場所は今も複数ある。

 ただ、ああいう場所には昔からこの地に住まう異郷出身者が、

 暮らしている。

 基本的には地上に危害を加えたりはしない。」


「ただ、ああいう場所が魔境と呼ばれる所以は、

 あの場所には古き旧き存在が眠っている場合がある。

 この星のこの地にそんな存在がいるのかは別として。」


「異郷の道は無数の世界に繋がっている。

 そんな世界を渡り、

 この地に降り立った者がひと眠りしている場合もある。」


そんな言葉を継いで、


「七果さん、オリンさん達もそういう存在ですよぉ。

 彼女らは一時的にこの世界に降りてきた者です。」


そう天明さんも言い出した。


「ただし、そんな場合でも降り立った世界で暴れたりはしないはずです。

 そういう存在はもうそんな争う段階を超えた者ですから。」


「ちなみに異郷の神都の件は別ですよぉ。

 あれは異例です。

 詳しくは当事者が知っているはずです。

 あとゴブリン達は修行で異郷の道で戦ってるだけですからねぇ。」


そこまで言って、再びアテナさんが口を開いた。


「魔境と決まったわけではないが、恐らくその類だろう。

 この地の人間の科学ではそんな現象は起こせない。

 だが、本来隠れていたはずの場所が今開かれている。」


「何者がいるのか?

 どんな事情があるのか?

 ただ、どちらにせよ、あまりいい事ではないだろう。」


ええっと何で?


すると天明さんが、


「寝て起きたら、本来の目的通りにするはずです。

 隠されていたのですから、

 本来この地の人間には認識すらできないんですよぉ。」


「要するに、姿を見せるということは何等かの要求があるということ。

 それもこの地の人間に。

 私達のような者に接近するだけなら、

 隠れたままでも何とでもなるでしょう?」


その言葉を今度はアテナさんが引き継いだ。


「つまり、大きな現象を起こすということは要求も大きいということだ。

 説明を聞く限りではやっていることがかなりの規模だ。

 魔境なら人間への影響を失くせるし、

 今まで異常もなかったということだからな。」


「それがいきなりこの状況だぞ。

 妖精郷の主は妖精王だったろう。

 だが、その力をもってしても、

 こんな大規模に魔境を開くことはできないはずだ。」


そう言いながら、

天明さんとアテナさんは同時に整列する陸自の精鋭を見る。


”この装備と人員で何とかなるのか?”


とアテナさんが訝し気に見ているし、


”今回海が舞台なのがキツイですよねぇ。

何かあっても自由に退避できませんよぉ。”


と天明さんは万が一の避難について考えている。


はあ、

そんな二人の様子を見ながら、私は溜息をついた。


世の中、戦いだけに目を向けてはいけない。


そんな教訓を得たばかりだ。


用心に越したことはないが、

今回ばかりは戦いにならないように考えなければ!


問題となる原因が件の島にある。


そこは道内までたったの10kmしか距離が離れていない。


海が隔てているが、ここまでの事を意図して出来るのであれば、

安心できる要素とはならない。


そして、何より行方不明の人達や島民の安全を確保するには、

その海を渡らないといけない。


今回は陸地に近い離れ島が舞台。


今までのような自由は効かないのだ。


アテナさん達の目線を辿ると足平さんの訓示が終わったのか、

陸自の人たちが荷物の点検を始めていた。


そこに大仰な恰好の初老と思われる男性がやって来た。


目を向けると男性一人ではなく、若い女性の姿も見られる。


現れた50を超えるかという男性はこの場にいる皆に

大きな声で自己紹介をしてきた。


「私は紙絵法教の者です。名は 柱葉 矛鶴 と言います。

 着いて来ているのは私の弟子に当たる者です。」


その言葉とは裏腹に何か尊大な感じの男性、

そして、紹介された弟子?の女性が小さく頭を下げる。


「私は柱葉様の弟子で、 沢野 緑です。

 皆様どうかよろしくお願いいたします。」


沢野さんの丁寧な挨拶に、ふんっと鼻を鳴らし、


「私は紙絵法教の法主、この未曾有の事件に対し

 私が全面的に協力いたしましょう!

 不幸に見舞われた皆さまを必ずやお救いいたしますぞ。」


再び大声を上げる柱葉という男性。


紙絵法教?

法主ってなんだ??


これが、現地で合流する援軍か?


大規模な謎の事件に、どうにもきな臭い人物の登場。


あの関場さんが送ってきたのだが、

どうにも場にそぐわない感じがする。


一体この違和感は何なのか?

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