第8話「《万象崩壊》」
アイリスは暗い顔をして、説明を始めた。
なぜこのタイミングなのかはわからないが、少しずつ信用を築いていけているのだろうか。
アイリスの父は生前、冒険者だったそうだ。それも、かなり有名な。
だが、半年前から突如姿を現した謎のローブの組織に関わる依頼を受けて以降、帰ってきていないらしい。アイリスの父が所属していたパーティのメンバーは帰ってきており、彼らを守るために犠牲になったと話を聞いているそうだ。
そして、この前の「スキルの授与」で父を失った自分はつらい感情を隠して生きているのに、俺が【積層】を引いて叫んでいたのが癪だったらしい。
お前、初対面の時見下してきたこと覚えてるじゃん・・・。
教会でローブの人たちに捕らわれていたのは「スキルを得た今の私なら父の仇が打てるわ!」って感じだろうな。
とはいえ、エリートの血をコイツが引き継いでいるのは確かだ。
5歳とは思えない会話や行動を度々していることが何よりの根拠だ。
いつか、ヴァルドをも超える実力者にでもなるのだろうか。
次の日、家を早めに出るとルカがいた。
「スキルの授与」ぶりか。これまでかなりの頻度で会っていた分、久しぶりに感じてしまう。
「アレン、今から遊ぼ!いつもの広場でスキルを見せ合おうよ!」
「ごめん、これから訓練があるから・・・。」
「そっか、じゃあまた今度ね!」
なんだか、まともな5歳を見た気がする。
アイリスの家の庭で3人が合流した。
ここから、今回の訓練場であるセラフィア山脈までは歩きで1週間はかかる。
そのため、ヴァルドの転移魔法を使わせていただく。
3人を、しかも荷物込みでこの距離を転移させるのはさすがに特級魔法だと思うが、本人にはうやむやにされてしまい、本当のところはわからなかった。
セラフィア山脈は魔獣が多く出てくることで有名な山脈の一つだ。
ヴァルドは何度か来ているのか、迷わずに突き進んでいく。
ちょっとした平地にテントを立てた。
そして、早速訓練1日目が幕を開けた。
「あの、早く教えてください。魔力量の上限に関係なく上級魔法が使える理由を。」
アイリスは一刻も早く知りたい様だった。
ヴァルドは落ち着いて一つずつ説明していく。
「そもそも、我々が魔力を使用できている理由は魔核の他にも魔力回路があるからだ。」
魔力回路、それは全身に張り巡らされた血管のようなものだ。
「魔力回路の太さは人によって違うが、太ければ太いほど魔力の限界出力は高くなる。」
「ですが、出力が高くても量がなければ上級魔法は無理じゃないですか。」
アイリスが反論する。
「その通りだ。魔法を出すのには継続的に魔力を使用し続ける必要がある。だが、魔力の限界出力さえ、高ければ理論上は量がなくても一瞬だけ上級魔法を使うことができる。」
「一瞬?」
一瞬だけ出しても効果がある魔法は限られている。
「ああ。それが《万象崩壊》だ。」




