第50話「頂点VS頂点」
数日の間投稿できず、すみませんでした!
少しずつ忙しくなってきて、投稿ができなくなってしまうこともこれからあると思いますが、読んでいただければ幸いです。
「学園長……?」
初めてだった。
学園長が俺を背後に下げた。
黒環結社、第一席。
自分よりも強い人間を何人も見てきたからこそ分かる。
……コイツは、人智を超えている。
努力だけでは絶対に越えられない壁。
たぶん、学園長でも――。
その時、第一席が口を開いた。
「久しぶりだな。幼稚園長。」
「フッ。」
学園長が鼻で笑う。
「私は、お前のような未就学児を処理するためにいる。」
「そうか。」
第一席の口元が僅かに歪む。
「その仕事、全うできるといいな。」
そう言い終わるより早く、第一席が左手を空高く掲げた。
右手には、いつの間にか握られていた漆黒の杖。
先端には、黒い魔法陣が浮かんでいる。
「《天穹崩落》」
その瞬間。
掌に浮かんでいた魔法陣が急激に拡大する。
空を覆う。
青かったはずの空が、黒く染まっていく。
次の瞬間――
空そのものが、崩れた。
無数の亀裂が走り、その隙間から数え切れないほどの黒い破片が降り注ぐ。
刃。
いや――。
空の破片だ。
「……ッ!」
アイツ、仲間まで巻き込むつもりか⁉
焦る俺を横目に、学園長は呟いた。
「……騒がしいのう。」
学園長の足元から、白い光が広がっていく。
「《天理万象制御》」
次の瞬間。
凄まじい速度で落下していた破片が――
先端から消滅していく。
一つ。
また一つ。
やがて空を埋め尽くしていた全ての破片が、跡形もなく消えた。
「……す、すごい。」
見たことも、聞いたこともない魔法ばかり。
そして、その全てがもれなく規格外。
学園長の言葉が響く。
「今のお前にできることはない。」
「……。」
悔しい。
けど、その通りだった。
学園長がいなければ、俺はとうに死んでいた。
それだけは間違いない。
第一席が口を開く。
「相変わらず、それか。」
「君も相変わらず、力任せじゃな。」
その言葉で火がついたのか。
第一席の声色が変わった。
「……ならば――」
次の瞬間。
空間を埋め尽くすほどの黒い魔法陣が、無数に展開される。
「これならどうする?」
第一席が笑う。
「《黒天墜星》」
無数の魔法陣が、一斉に黒い球体へと変化した。
そして――落下する。
先ほどの魔法とは違い、その速度は明らかに遅い。
これなら、避けるだけなら簡単だ。
そう思った。
だが。
球体が地面に触れた瞬間――
ドンッ。
空気が歪んだ。
「……え?」
身体が引っ張られる。
強烈な重力。
球体の落下地点を中心に、周囲の全てが吸い寄せられていく。
木々が根ごと引き抜かれ、大地が軋む。
そして――
地面そのものが陥没していく。
「な、なんだこれ……!」
黒環結社の団員たちまで巻き込まれている。
「うわぁぁぁぁ‼」
「た、助けてくれ‼」
「動けないッ!」
マズい。
このままじゃ俺も――。
学園長を見る。
なぜか、学園長は少し笑っていた。
「……少しは本気を出してもよさそうじゃ。」
そう言って、掌を地面へと触れる。
「《零界》」
その瞬間。
世界が静止した。
次の瞬間には――
《黒天墜星》によって生まれた重力も。
陥没した大地も。
引き裂かれた木々も。
まるで、最初から存在しなかったかのように元へ戻っていた。
「……チッ。」
第一席が初めて舌打ちをした。
「守ってるだけじゃ勝てないぜ、幼稚園長?」
「本当にそうかのお?」
「……何?」
その瞬間。
第一席を囲むように、巨大な光の檻が出現した。
「《星界牢獄》じゃ。」
無数の光の線が交差し、第一席の逃げ道を完全に塞ぐ。
だが――。
「この程度で牢獄を名乗るな。」
第一席は笑った。
そして右手の杖を、学園長へ向ける。
杖の先端に、膨大な魔力が集まり始めた。
空気が震える。
大地が軋む。
「これは――」
魔力が一点へ圧縮されていく。
「膨大な魔力を極限まで圧縮し、一本の光線として撃ち出す魔法だ。」
魔力がさらに凝縮される。
「どこまで届くか――」
第一席が笑う。
「楽しみだなぁ⁉」
「《神滅砲》」
杖から、凄まじい光線が放たれた。
周囲の木々が消し飛ぶ。
《星界牢獄》すら一瞬で消滅する。
そして光線は、真っ直ぐ学園長へと迫る。
「……。」
そんな状況にもかかわらず。
学園長は目を閉じていた。
そして――
光線が直撃する、その瞬間。
ゆっくりと手をかざす。
「《天鏡》」
光線が、学園長の手に触れた。
そして――消えた。
「……え?」
違う。
消えたわけじゃない。
学園長の身体へ吸収されている。
魔力が。
《神滅砲》そのものが。
「なるほど。」
学園長が目を開く。
学園長の掌に、先ほどと同じ光が集まっていく。
「面白い構造をしているな。」
そして――
第一席へ掌を向ける。
「ならば、返そう。」
次の瞬間。
二度目の光線が放たれた。
ドォォォォォン‼
爆発音が森全体に響き渡る。
巨大な煙が立ち込める。
これだけの攻撃をまともに受ければ――
少なくとも、立ってはいられない。
「今のうちに逃げるぞ。」
学園長が俺を急かす。
「は、はい!」
俺が足を前へ踏み出そうとした、その時だった。
「……?」
地面に、黒い魔法陣が広がっている。
森全体を覆い尽くすほどの巨大な魔法陣。
「これって、円環術――」
言い終わる前に。
学園長が叫んだ。
「全力で逃げろ‼」
「……ッ!」
その声は、今まで聞いたことのないものだった。
余裕も。
冗談も。
穏やかさもない。
ただ、純粋な警告。
それだけで理解した。
――この魔法は、今までとは次元が違う。
俺は迷わず走り始めた。
学園長なら、何とかしてくれる。
そう信じて。
ただ、森の外へ向かって走る。
一歩。
また一歩。
背後から、巨大な魔力が膨れ上がっていく。
そして最後に聞こえたのは――
第一席の静かな声だった。
「《終焉領域》」




