第48話「利用価値」
昨日は投稿できず、すみませんでした!
――クロードは懐中時計を取り出し、静かに蓋を開いた。
カチリ。
「到着まで、あと十分ほどか。」
その一言に、周囲の団員たちがわずかに気を緩める。
「第一席がお見えになるのか?」
一人の団員が恐る恐る尋ねると、クロードは口元だけで笑った。
「その予定だ。だから無駄な抵抗はさせるな。」
リリアが言う。
「お前には、まだ利用価値がある。」
「……何?」
「正確には、お前のスキルだ。」
俺は眉をひそめる。
「俺のスキルが何なのか知っているのか?」
「いいや、知らない。
…今はな。」
すると後ろから拍手が聞こえる。
パチ、パチ、パチ。
現れたのはクロード。
やはり先ほどまで戦っていたのかところどころに傷がついていた。
「相変わらず説明が下手だな。」
クロードが笑う。
「だから君は脳筋なんだ。」
「黙れ。」
クロードは俺に、より分かりやすいよう説明を始める。
「君は他の同年代の子たちと比べて極めて優秀な存在だ。
その“優秀”を構成するスキルを我々は知りたい。」
「……知って、どうするんだ。」
クロードの笑みが消える。
「ここから先は、子供には早いかな。」
リリアも負けじと説明を続ける。
「これからお前には、【鑑定】を受けてもらう。
これによって、私たちはお前のスキルの正体を理解することができるというわけだ。」
「【鑑定】?」
クロードが割って入る。
「我々、黒環結社のトップであるお方が、【鑑定】のスキルをお持ちでいらっしゃる。」
…なるほど。
ついに第一席、トップとご対面ってか。
俺は、質問を続ける。
「それと、シヴァはどこだ。」
「生きている。
少なくとも今は。
これからどうなるかは彼の態度次第だ。」
っ⁉
俺は体に結ばれた縄を引きちぎろうとした。
だが、縄はびくともしない。
リリアが鼻で笑う。
「無駄だ。
その拘束具には魔力が流れている。
そう簡単には壊れない。」
その時だった。
突然、大きく森が揺れる。
ドォォォン‼
誰かが叫ぶ。
「敵襲!」
だが、クロードは冷静だった。
「……来たか。」
その時だった。
――ゾワッ。
全身の産毛が総立ちになる。
今まで感じたことのないほどの魔力が、森全体を覆い尽くした。
風が止む。
鳥の鳴き声も、虫の羽音も聞こえない。
そこにいた全員が、本能のまま一つの方向へ視線を向けていた。
木々の奥から、一人の老人がゆっくりと歩いてくる。
足音は聞こえない。
それなのに、一歩踏み出すたび、大地だけが鈍く震えた。
黒環結社の団員たちが息を呑む。
「……うそ、だろ。」
「なんで、あの人がここに……。」
リリアは無言で剣を構える。
クロードも懐中時計を閉じ、その笑みを消した。
やがて老人は俺の前で立ち止まる。
俺を一瞥すると、静かに黒環結社へ視線を移した。
「──私の教え子に、随分と好き勝手してくれたようだな。」
その穏やかな一言だけで、森の空気が凍り付いた。




