第43話「想定外の人物」
「黒環結社第4席、クロード=ヴェルナーだ。」
クロード…ヴェルナー。
ん?
第4席なら…。
「アレン君、今、第4席ならノクスより弱いと思ったんだろう?」
「よくわかったな。」
「顔に書いてあるよ。
…そもそもアイツが俺の手柄を奪いさえしなければ‼」
なるほど。
「アンタが元々第3席だったんだな?」
クロードが頷く。
「そして、君がノクスを消した。
正直、助かったよ。」
組織内での地位の争い…。
もしかすると、黒環結社全体で統率が取れていないのかもしれない。
「一つ聞きたいんだが、お前たち黒環結社の目的は何だ?
俺や、アイリス、学校までを狙う理由がわからない。」
クロードが不気味な笑みを浮かべる。
「その真実は、君の身近な人間が知っているよ。」
身近な人間…?
全く思いつかない。
ハッタリか?
「それと、寮がこのありさまなのはお前が原因ってことでいいんだな?」
「私以外にこれをできる人がいるとでも?」
その瞬間、俺はコイツに最重要危険人物のレッテルを貼った。
「あと、他の生徒が見当たらないんだが。」
「それは知らないな…。
私の仕業じゃない。」
私の…?
「お前ら複数人なのか⁉」
「イグザクトリー。
急いだほうがいいと思うよ。
彼女は私より…」
クロードが言い終わる前に俺は走り始めた。
行き先はない。
学校内にまだいることを信じて、敷地内をしらみつぶしに探し始めた。
連日の前借り返済で疲れ切っていた俺の体力はしばらくして底を尽きた。
「ハァハァ…。」
校舎の壁を思い切り叩く。
バァン‼
「クソ‼
まだ誰一人として見つけられていないのに。
体が…。」
俺の体は徐々に下がっていき、最終的に壁に寄りかかるようにして地面に座った。
空を見上げる。
そこにあると思っていたはずの月がない。
「新月か…。
「月がきれいだ。」とか言ってみたかったのに。」
主人公補正が無さすぎやしないか、この世界は。
いや、違う。
俺はいつから自分が主人公だと勘違いしていたんだ。
転生者は他にもいる。
強いスキルだってたくさんある。
改めて思う。
「…哀れ、だな。」
体に力が入らない。
今頃、黒環結社の人間たちは何をやっているのだろうか。
――手遅れだったり、しないよな?
……ザッ。
微かに足音が聞こえる。
一歩。
また一歩。
誰かが、俺のほうへ歩いてきている。
霞む視界の中、一つの影が目の前で立ち止まった。
「ア、アレン君⁉」
俺を知っているのか?
確かこの声は…。
視界に意識を集中させる。
やがて、一人の顔がはっきりと見えてきた。
目の前の人影はセレナのものだった。




