第40話「削られる日常」
Happy Birthday 俺
ノクスを倒してから、1週間が経った。
ステータス画面を開く。
〈返済進捗〉
返済期限:残り23日
•ランニング:271km / 1,500km
•腕立て伏せ:17,846回 / 100,000回
•スクワット:19,502回 / 100,000回
•魔力操作訓練:48時間 / 300時間
•術式構築:22時間 / 150時間
総合進捗:17.8%
〈警告〉
現在の進捗は予定を下回っています。
このままでは返済期限までに完了しない可能性があります。
「・・・やっぱりか。」
分かっていた。
授業。
食事。
睡眠。
1日は24時間しかない。
どれだけ努力しても、それ以外に削れない時間がある。
画面の赤い警告が、現実を突きつける。
「・・・もっとやるしかない。」
歯を食いしばる。
未来から借りた力は、未来の努力だけでは返せない。
今まで以上の努力を積み重ねなければ、この借金は返済できない。
翌日。
俺は学校を休んだ。
ヴァルドの期待も。
高い学費を払い続けてくれている両親の想いも。
全部分かっている。
それでも――今は返済を終えなければならない。
1日中、走った。
腕立て伏せを繰り返し、スクワットを重ね、魔力を練り、術式を書き続ける。
食事は最低限。
睡眠も必要最低限。
ただひたすら、体を動かし続けた。
ノクスとの戦いから2週間。
今日は、中間テスト当日。
俺は教室ではなく、誰もいないグラウンドに立っていた。
当然、テストは欠席。
そんなことを気にしている余裕はない。
走って。
鍛えて。
魔力を練って。
術式を組んで。
また走る。
この1週間は、ただひたすら、努力を積み重ね続けた。
〈総合進捗:63.6%〉
かなり進んできてはいる。
このペースを維持できれば返済は出来そうだ。
このペースを。
維持。
「――正直、厳しいよな。」
進捗の数字とは裏腹に、肉体的にも精神的にもかなり限界が近いことは、自分が一番よくわかっていた。
右腕の骨折は未だ治っていない。
それでも腕立て伏せをしなければならない。
こうして俺は、とにかく返済を続けた。
返済期限は、残り10日となった。
いつものように4時間睡眠。
12時就寝、4時起きが今の俺の生活リズムとなっていた。
頭が痛い。
腕も治らない。
筋肉痛がずっと続く。
足を動かすたびに膝が軋む。
息を吸うだけで胸が痛い。
目を閉じると、そのまま眠ってしまいそうになる。
「早くこの地獄から解放してくれ。」
何度この言葉を放ったか自分でも、もうわからない。
毎朝、起きる度に呟いている気がする。
そして、まだ誰も起きていない時間帯の静まり返ったグラウンドを今日もいつものように走り始める。
その時だった。
体に力が入らない。
「あと一周だけ。」
足が止まる。
動け。
動け。
動け――!
一歩。
二歩。
・・・三歩。
そこで世界が真っ黒になった。
そのままグラウンドに倒れた俺の意識は、深く闇に沈んでいった。




