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第34話「術式構築論」

「魔法・・・作るか。」


迷わず図書館で「術式構築論」を借りた俺は、急いで寮へ戻った。


現在時刻、17時。

机に本を置き、最初のページを開く。


――――――――――

目次

第1章 魔力とは

第2章 魔力回路

第3章 術式学

第4章 演算式

第5章 構造分解

第6章 再構築

第7章 干渉理論

第8章 無詠唱

第9章 術式創造

――――――――――


「・・・長くなりそうだな。」

小さくため息をつき、第1章を読み始めた。



気づけば外は暗くなっていた。

時計は21時を指している。


「ここまでで分かったことは・・・。」

机の上に紙を広げ、要点を書き出す。


魔力には4つの性質がある。

・流れる

・圧縮できる

・共鳴する

・干渉する


そして、人間の体内には魔力回路が存在する。

筋肉と同じように鍛えることで成長し、

・回路容量

・流速

・耐久性

この3つによって扱える魔力量が決まるらしい。


「なるほど・・・。」


ヴァルドが毎日魔力操作ばかりやらせていた理由が、今になって理解できた。

あれは魔法ではなく、魔力回路そのものを鍛える訓練だったのだ。


気づけば深夜1時。


第5章まで読み終えていた。


「ここから一気に面白くなってきたな・・・。」


術式は4つの工程で構成されている。

入力

変換

演算

出力


つまり、魔法とは完成された一つの現象ではなく、複数の工程を組み合わせた"術式"だった。


さらに、第4章にはこんな式が書かれていた。


威力 = 魔力量 × 圧縮率 × 効率 − 損失率


単純だが、理にかなっている。


そして、第5章。


思わず呟く。

「魔法って・・・分解できるのか。」


例えば《火球》。


《火球》は、

①炎生成

②球形成

③射出

④爆発


この4つの術式で構成されている。


つまり──

爆発だけを削除すれば、《炎》になる。

逆に、別の術式を追加すれば全く新しい魔法にもなる。

「なるほど・・・。」


魔法は覚えるものじゃない。

組み替えるものだった。


翌朝7時。


「終わったぁ・・・。」

思わず机へ突っ伏す。


結局、一睡もしなかった。

頭は痛い。

眠い。


それでも収穫は大きい。


制服へ着替え、ふらつきながら教室へ向かった。

今日から通常授業が始まる。


1限。

教科書が配られる。

名前を書く。

そこまでは覚えていた。


「・・・ん。」

目を開ける。

時計を見る。

13時。

「・・・。」

4限が終わっていた。

「寝てた・・・。」


机の上には、2~4限に配られたであろう教科書が山積みになっている。

「おはよう。」

アイリスが苦笑しながら近づいてきた。

「熟睡だったわね。」

「起こしてくれよ・・・。」

「気持ちよさそうだったから。」

「優しさの方向性がおかしい。」


そんなやり取りをしながら、2人で食堂へ向かった。


食堂の扉を開ける。

いつ見ても広いな。


吹き抜けの天井。

ずらりと並ぶ長机。

香ばしい肉の匂いと焼き立てのパンの香りが食欲を刺激する。


周囲を見渡すと、昨日の技能測定の話題で持ちきりだった。


「アイツだよ。」

「この前、上級魔法を撃った・・・。」

「模擬戦で歴代最速を出したって。」

「でも、ランクインしてないんだろ?」

・・・聞こえてるぞ。


俺は聞こえないふりをしてメニューを見る。

今日は魔導師定食(11リル)にした。


ちなみに、この国の通貨はリアとリル。

10リアで1リルになる。

俺の体感では、1リルが100円、1リアが10円くらいだ。


アイリスは白身魚の香草蒸しを注文していた。


席に座ると、トレーを持ったシヴァが歩いてくる。


「座っても?」

アイリスが頷く。


シヴァが腰をおろすと、説明を始めた。


「頼まれてた冷却装置。

試作品だけど完成したよ。

今日、確認しに来られる?」

「私は大丈夫よ。」

アイリスが答える。


シヴァは俺を見る。

「アレンは?」

「悪い。

今日はやることがある。」


やること・・・当然、術式構築のことだ。


俺は真っ先に食べ終わり、席を後にした。


急いで寮に帰る。



昨日まとめきれなかった内容を整理する。


第6章――再構築。

ここでは既存術式へ新しい構造を加える方法が書かれていた。


例えば《風刃》。

そこへ、

・風圧縮

・高速回転

・貫通強化

・雷属性付与


この4つを追加すると、

《雷風刃》という新しい術式になる。


続く第7章では干渉理論。

異なる術式同士が互いに影響し合う法則だ。


例えば炎に風圧縮を加えれば燃焼効率が上昇する。

逆に、水へ冷却術式を重ねれば氷へ変化する。


どれも納得できる内容だった。


第8章

詠唱の説明だった。


詠唱とは、術式を頭の中で組めない者が口に出して補助しているだけ。

術式を完全に理解した者に、詠唱は不要である。


「・・・そういうことか。」

ヴァルドがほとんど詠唱していなかった理由が、ようやく分かった。


そして最後の第9章。


ページを開く。

「・・・白紙?」


何も書かれていない。

ただ、術式設計図だけが何十枚も続いていた。


「そういうことか。」

この本は読むだけでは終わらない。


最後は、自分自身で魔法を生み出せということらしい。


俺は机に紙を広げ、深呼吸を一つする。


そして、ペンを握った。

白紙だった設計図の一枚目へ、迷いなく文字を書き込む。


この時の俺はこの本が借り物だったことを完全に忘れていた。

――――――――――

《オリジンコード001:蒼雷閃アズールレイド

――――――――――


「――ここから始めよう。」

世界で初めての、俺だけの術式創造が始まった。

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