第31話「模擬戦、開始」
「僕のスキルは、【次元歩行】。
自分の座標を少しずらすことで、短い距離でのワープができるんだ。」
強すぎやしないか?
同じ転生者でもここまで格差があるなんて・・・。
・・・別に悔しくないし?
「ワープの制限は?」
アイリスが聞く。
「1度のワープで上限魔力量の半分が持っていかれるんだ。
あとは、現在地点から50m以内ってところかな。
一応、上空50m上にもワープできるんだけど、ワープした直後に落下するから危なくてあんまり使ってないね。」
なるほど。
1秒ごとに魔核から魔力が供給されるから、1秒で2回までワープできるってことか。
「ここまで話してもらったんだ。
僕の知識と発明で、君たちを支える。
黒環結社との戦い、僕も参加させてくれ。」
本当にいいのか?
とか本来は聞くんだろうけど、スキルが強すぎる。
簡単には死なないだろ。
俺は、すぐに答える。
「ありがとう。助かるよ。」
続いて、アイリスが言う。
「ノクスの話はさっきした通りだけれど、私たちには作戦があるの。」
「聞かせてくれ。」
「ノクスの【空気操作】は、普通に戦っても通じるようなスキルじゃないわ。
でも、空気を操ることに変わりはない。
なら、熱を利用して空気の流れを乱すの。
具体的には、」
アイリスが説明を始める前にシヴァが語る。
「空気を一瞬で高温にすると、空気は急激に膨張し、密度や気圧が変化する。同時に、温度の上昇によって空気が保持できる飽和水蒸気量が増加する。
その直後に空気を急激に冷却すると、膨張していた空気は急速に収縮する。
飽和水蒸気量は一気に減少するため、保持しきれなくなった水蒸気は凝結し、細かな水滴や霧となって現れる。
また、急激な温度変化によって空気の密度や気圧に大きな差が生じることで、強い乱流が発生し、空気の流れは極めて不安定な状態になる。
この一連の急加熱・急冷による変化によって・・・。」
まぁ、分かったみたいだし、良いか。
いろいろ語り終えたシヴァは、落ち着きを取り戻した。
「あ、ごめん。
僕の悪い癖なんだ。
それで、僕は何をしたらいいの?」
呆気に取られていたアイリスが意識を戻す。
「え、えぇと。
加熱には、私の《イグニス》を利用するわ。
だから、冷却の際に使用する機械を用意してほしいの。」
シヴァの目の色が変わった。
そして、即答する。
「任せてくれ。」
その日は、こうして解散した。
次の日、教室に行くと俺の席に座っている人間がいた。
思わず言葉がこぼれる。
「うわぁぁ・・・。」
すると、その人が俺に視線を向ける。
バレた。
「アレンくーん!」
声の正体はセレナだ。
逃げることを諦めた俺は、セレナが座る俺の席の前まで歩いた。
「今日は何の用だ?」
「今日は技能測定3日目。
“模擬戦”でしょ?
だから、ペアを組みたいなーって。」
ペア?
そんなこと知らないぞ?
「あれ、先生から聞いてない?
昨日、言われたはずなんだけど。」
昨日の測定が終わった後、すぐに工房に向かったから聞き逃していたのかもしれない。
少し考え、結論を出す。
「分かった。ペアを組もう。」
セレナの顔に笑顔が浮かぶ。
「じゃあ、よろしくねー!」
そう言って教室を去っていくセレナと入れ替わりでアイリスが入ってくる。
「アレン、今日の測定でペアを組むらしいのだけれど私と組まない?」
タイミングが悪かったな。
「ごめん、たった今ペアを組んだんだ。」
アイリスが、がっかりする。
「さっき、教室を出ていった子?」
俺が頷くと、アイリスは「そっか。」とだけ言って、残念そうに自分の席に座った。
アイリスが落ち込むのは、めずらしいな。
1学年の生徒全員がグラウンドに集まり、教師たちが説明を始める。
「今日の模擬戦は昨日説明した通り2人1組で行う。
組んだ相手と共に戦うのは、学校側が召喚したゴーレムたちだ。
ゴーレムの難易度は3つ。
初級ゴーレムのみのコース1。
初級ゴーレムと中級ゴーレム3体のコース2。
中級ゴーレムのみのコース3だ。
得点は当然コース3が最も高く、コース1が最も低い。
また、全てを倒しきるまでの時間の短さでも加点が与えられる。
全てを倒しきることができなければ、問答無用で2人とも0点だ。」
俺は再びセレナと合流し、コースの相談をした。
「アレン君強いからコース3で!」
「中級ゴーレムってそんなに弱いのか?」
「確か、危険度はCだったと思う。」
俺が倒したアースリザードたちはBだったから勝てなくはないな。
「・・・コース3でいこう。」
それぞれのコースに専用の敷地があり、自分たちの選択したコースの敷地に並ぶ。
コース1には行列。コース3には誰もいなかった。
俺とセレナはコース3に向かう。
すると、既にコース3で戦うペアがいるのを見つけた。
アイリスとルカだ。
アイリスはあの後ルカとペアを組んだのか。
ゴーレムにはいくつか種類がある。
今回の中級ゴーレムで採用されたゴーレムはクリスタルゴーレムだった。
全身が結晶でできており、魔法耐性が高く、魔力を弾にして撃ってくる。
二人ともかなり強く、無事にコース3をクリアしていた。
タイムは4分32秒。
アイリスは聖剣の強さに驚いたのか、ずっと聖剣を見つめていた。
2人を見ていた俺にセレナが話しかける。
「私のスキルは、操作系で【幻奏】。
残像を見せたり、音を消したり。
指定した人の姿も30秒ぐらいなら消せるよ。」
戦闘向きではないが、相手の妨害を行うタイプか。
俺とセレナの番になった。
目標はアイリスたちのタイム越え。
教師が叫ぶ。
「3、2、1――始め!」
俺は一気に地面を蹴った。
「セレナ!」
「任せて。」
次の瞬間、俺の姿が空気へ溶けるように消えた。
クリスタルゴーレムたちは突然標的を見失い、戸惑うように周囲を見回す。
俺はその隙を逃さず、一体目へ飛び込んだ。
《アストレア》を構える。
「さて――始めるか。」
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