第2話「失せろ。」
「どこにいたって、努力をする運命だったのか……。」
布団に潜り込み、誰にも聞こえないように呟く。
当然、現実は何一つ変わらない。
正直、ここまで落ち込んでいる理由はスキルだけじゃない。
「なんなんだよ、あのジジイ……。」
数時間前――。
「嫌だぁぁぁぁ!!」
大勢の前で、何のためらいもなく叫んでしまった。
終わった。
俺の人生も、社会的評価も、たぶん全部終わった。
なーにが転生だ。
最強スキルを授かって無双するのがテンプレじゃないのかよ。
この世界の神様的存在は何をやってる。
ちゃんと仕事しろ。
俺の思い描いていた、元ニートには少しばかり眩しすぎる人生設計図は、こうして跡形もなく砕け散った。
床にうずくまる俺へ、ゆっくりと足音が近づく。
見上げると、そこにはさっき保護者席で見かけた老人が立っていた。
「名は何という。」
低く、それでいて何もかも見透かしているような声だった。
「ア、アレンで――」
「そうか。明日の朝、またこの教会へ来い。」
「……は?」
それだけ言い残し、老人は去っていった。
自己紹介を最後までさせろ。
そう思わなくもなかったが、今はそんなことを気にしている余裕もない。
その時だった。
「失せろ。雑魚スキル。」
振り向くと、白銀のロングヘアに澄んだ蒼い瞳を持つ少女が立っていた。
見た目は天使。
口は悪魔だった。
「……雑魚スキル?」
その一言が引っかかった。
そういえば、この世界ではスキルが人生を大きく左右すると聞いたことがある。
5歳になると全員がスキルを授かる。
同じスキルを持つ者は存在せず、その能力も千差万別。
大きく分ければ、
治療系。
操作系。
物理系。
魔法系。
この四つに分類されるらしい。
強力なスキルを授かれば将来は約束される。
逆に弱いスキルなら、一生その評価は覆らない。
だから――。
「雑魚スキル。」
たったその一言が、ここまで重いのだ。
「初めまして。僕はアレン。君の名前は?」
「……。」
冷たい視線だけが返ってくる。
(なんだその目……。)
精神攻撃系スキルか?
すると、遠くから聞き慣れた声が響いた。
「アレーン! どこー? ……えっ!? あのアレンがナンパしてる!?」
「待て待てルカ! 俺だぞ!? いいか、俺だぞ!?」
「いや、だからアレンだから驚いてるんだけど!」
そんなやり取りをしている間に、少女は興味を失ったように踵を返して歩き去っていった。
「おい、ルカ。」
「ん?」
「【積層】って知ってるか?」
ルカは少し考えてから首を振る。
「聞いたことないな。」
「そうか……。」
やっぱり、知らないか。
そして現在。
俺は布団から勢いよく起き上がる。
「よし。」
「ジジイとの約束は、なかったことにしよう。」




