第26話「え、これ満点・・・だよな?」
「空気中の水蒸気を利用するの。」
「……どういうことだ?」
――なるほど。
アイリスの話を要約すると、一度空気を急激に温め、その直後に冷却することで空気の流れを乱せるらしい。
ノクスが空気そのものを操るなら、その流れに干渉できる可能性があるというわけだ。
案としては悪くない。
だが、一つ問題があった。
「作戦には賛成だ。でも、そこまで大きく温度を変化させる魔法を俺たちは習得していないぞ?」
残念ながら、ヴァルドからそのような魔法は教わっていない。
アイリスもそのことは理解していたようで、静かに息を吐く。
「・・・ええ。そこだけが問題なのよ。」
結局、その日は有効な解決策が見つからないまま作戦会議は終了した。
今日は技能測定初日。
魔力制御の日だ。
1年生全員がグラウンドへ集められ、教師が説明を始める。
説明を聞いた限りでは、内容はこうだった。
・Aクラスから順に測定を行う。
・種目は精度測定、距離測定、威力測定の3種目。
・精度測定では、40m先の標的へ任意の魔法を放ち、命中精度を競う。
・距離測定では、支給された球を魔法でどこまで飛ばせるかを競う。
・威力測定では、丸太をどれだけ破壊できるかを競う。
・各種目100点満点。
周囲を見ると、皆どこか自信ありげな表情を浮かべている。
そして、Aクラスの精度測定が始まった。
半数近くは標的にすら当たらない。
そんな中、一人だけ明らかに別格の生徒がいた。
放たれた魔法は一直線に飛ぶ。
その軌道には一切のブレがなかった。
次の瞬間、標的の中心を正確に撃ち抜く。
――ドンッ。
中心だけが綺麗に抉られ、標的はほとんど揺れることなく静止していた。
一瞬の静寂。
「100点。」
教師の声と同時に歓声が上がる。
「キャー! さすがシリウス君!」
なるほど。
あれが、首席シリウス=レインか。
この学年の頂点にふさわしい実力をお持ちのようだ。
そして、Bクラスの精度測定も始まった。
それと同時に、Aクラスの距離測定も行うので、シリウスの見学はできなかった。
俺の番が来た。
使う魔法は、セラフィア山脈で撃ちまくった《水流》。
両手を前へ突き出す。
水を生成し、一点へ圧縮する。
狙いを定め――放つ。
一直線に飛んだ水流は標的へ命中。
中心には届かなかったものの、81点と高得点だった。
ちなみに、アイリスは100点だった。
続いて、距離測定。
使う魔法は未だ実戦では使用したことがない《風刃》だ。
本来、風の刃を飛ばす初級魔法だが今回は用途が違う。
俺は球を投げる姿勢に入り、なるべく動きが少ないようなフォームで投げる。
その直後、投げたばかりの球に狙いを定め、《風刃》を当てる。
直撃だ。
その瞬間、勢いが衰え始めていた球が加速し、かなり遠くまで飛ばすことができた。
得点は94点だった。
アイリスは89点。
最後に“威力測定”だ。
俺はこの“威力測定”の説明を聞いてから、疑問に思うことが一つあった。
・・・この測定、《万象崩壊》を使用すれば満点確定なのでは?
俺の番が来ると、俺は迷わず詠唱を始めた。
「天地を繋ぐ理よ、今ここに終焉を刻め。
万物を結ぶ因果よ、あるべき姿へ還れ。」
周りの生徒の顔色が変わる。
その時の俺は、詠唱に集中しすぎていたのかもしれない。
教師たちが「止めろ!」と叫んでいるのが全く聞こえなかった。
「形あるものは崩れ、名あるものは塵となる。
我が魔力をもって、その結びを解き放つ。」
静寂。
そして最後の一節を告げる。
「《万象崩壊》」
次の瞬間。
丸太の表面に黒い亀裂が走った。
亀裂は瞬く間に全体へ広がり、木材は砂のように崩れ始める。
崩壊は止まらない。
木片となり。
粉となり。
最後には塵すら残さず、風の中へ消えていった。
その直後、慣れたはずの痛みが右腕に走る。
「久々だったからな・・・。」
やけに周りが静かだな、俺は腕を押さえながら周囲を見渡した。
漏れなく全員の視線が俺に集まっていた。
思わず呟く。
「え、これ満点・・・だよな?」
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