第25話「新たな天才」
教師が技能測定の詳細を説明する。
「この技能測定は、“魔力制御”・“身体能力”・“模擬戦”の3つで構成されている。
“模擬戦”は200点満点。それ以外は100点満点だ。
“魔力制御”は明日。
“身体能力”は明後日。
“模擬戦”は明々後日。
準備をしておくように。」
「以上だ。今日は各自、寮で休め。」
技能測定……か。
もはや一種の試験だな。
そんなことを考えていると、シヴァが近寄ってきた。
「僕の部屋に来ない?」
その日は入学式とホームルームだけで終わった。
「いいよ。行こうか。」
寮は男子と女子で分かれていて、階は学年ごとに分けられている。
「さあ、好きにくつろいでいて。」
部屋の造り自体はどこも同じなのだろう。
大きな窓に、本棚と衣類を収納するクローゼット。
奥には小さな洗面台まで設置されており、生活するには十分すぎる設備だった。
だが――。
「……なんだこれ。」
シヴァの部屋は、もはや研究室だった。
机の上には歯車や金属板、見たこともない魔導回路が散乱し、床にはネジや配線が転がっている。
壁には設計図が何枚も貼られ、部屋の隅には巨大な砲身を持つ兵器が立て掛けられていた。
天井近くでは、小さな球体がプロペラを回しながら静かに浮遊している。
そして、その隣には全身を銀色の装甲で覆われた人型の機械が立っていた。
肩や腕、脚部には魔法陣が刻まれた装甲板。
背中には4枚の魔力放出板が翼のように展開され、胸部には淡い青色に輝く結晶が埋め込まれている。
まるで、人が着るための鎧ではなく、一体の機械兵器がそこに立っているようだった。
「……どこでくつろげばいいんだ?」
結局、一番マシだったベッドに腰を下ろす。
しばらくすると、シヴァが湯気の立つカップを2つ持って戻ってきた。
「はい。」
「ありがとう。」
一口飲む。
「うまっ。」
「それはよかった。」
シヴァはそう言うと、部屋の隅に置かれた巨大な砲身を指差した。
「これは《プラズマキャノン》。前世の知識を応用して作った試作品だよ。」
「え? 自力でここまで?」
シヴァは頷く。
「で、その隣にあるのは《魔導外骨格》。前世でいうパワードスーツだね。」
「……動くのか?」
「動くよ。」
「おお!」
「3歩歩いたところで魔力炉が暴走して爆発したけど。」
「欠陥品じゃねえか!」
「改良中。」
さらっと言うな。
「天井を飛んでるあの球は?」
「索敵用ドローン。」
球体がふわりと俺の前まで飛んでくる。
「かわいいな。」
「昨日は壁にぶつかって壊れた。」
「ポンコツじゃねえか。」
「研究は失敗の積み重ねだからね。」
……こいつ、天才なのか変人なのかわからん。
俺は部屋を見回しながら、ふと疑問を口にした。
「っていうか、この世界で発電ってできるの?」
「魔法を媒介にすれば発電機は作れる。」
「……マジか。」
「理論上はスマホも作れる。」
「えっ!?」
思わず立ち上がる。
「マジで!?」
「ただ、通信網がないから電話やネットは使えないけどね。」
「そこが一番大事なんだよ……。」
「でも、写真を撮ったり、計算機として使ったりはできると思う。」
「十分すげぇよ……。」
すると、シヴァが小さな箱を手に取り、渡してくれた。
「これ、君に。」
開けてみると、スマートウォッチのような電子機器が入っていた。
「時計?」
「試作品の魔導腕輪。」
「何ができるんだ?」
「時刻表示、地図、魔力反応探知、魔法陣の解析補助。」
「便利すぎるだろ。」
「代わりに、一日に一回くらい爆発するかもしれない。」
「返す。」
「冗談だよ。」
そんな会話をして、その日は帰った。
ちなみに、《アークバンド》は常時、装着者の魔力をわずかに吸収して動いているらしい。
翌日、“魔力制御“当日。
8:30には教室についていないといけないので、身支度を済ませ、寮を出る。
そして、時刻は7:00。
教室には俺とアイリスだけ。
俺たち二人は入学試験の時に鉢合わせしたノクスの対策について話し合う約束をしていたのだ。
「ノクス、確か【空気操作】と言っていたな。
俺は対策が思いつかなかったんだが。」
「私に1つ考えがあるわ。」
「なんだ?」
「空気中の水蒸気を利用するの。」
「……どういうことだ?」
アイリスは静かに微笑んだ。
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